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473回目 婚約式

「「ワアアァァーーーーーーーーッ!!!!」」


「「おめでとうーーーーっ!!」」



 俺とティアナの婚約式当日。この日は晴天にも恵まれ、多くの人々に祝福をされながら婚約式は執り行われた。


 青空の向こうには天空の城が見え、近くの空には『アベルカイン』を始めとした八隻の飛空艇が浮かんでいる。そして街には普段の何倍もの人がいるように見えるお祭り騒ぎだ。


 豪奢な貴族服を着た俺は、輝いて見える程に美しいドレスを着たティアナと腕を絡めて、俺達二人の為の道を神殿に向かって進む。


 花壇によって遮られた一段高い道を進みながら、時折街の人達に笑顔を向けて手を振るのだが、正直顔から火が出そうだ。顔が真っ赤になるのを抑える魔法を使っていなかったら、ずっと俺の顔は赤いままだろう。


 このフザケた魔法は、その昔にJK勇者がドゥルクに作らせた物らしいが、グッジョブと言わせて貰おう。初めて聞いた時はアホかと思ったが、メチャクチャ便利だね、この魔法。


 ちなみにティアナはこの魔法を使っていない。小さい頃は使った事もあるそうだが、やはり慣れだよな。


 婚約式が行われる神殿は新たに立てられた物であり、その近くには各国から飛空艇によって連れてこられた者達と共に、エルフ・ドワーフ・マーメイド・レプラコーンの精霊種族もおり、邪眼族からも人化できる数名が護衛を兼ねて参加していた。


 精霊種族がこれだけ並んでいるだけでも各国からの参加者や、街の人々の度肝を抜いたのだが、その他にも女神『ヴァティー』や亜神『ハクラテン』と、滅多に人前に姿を見せない白狐族も数名参加しており、神まで呼ばれるこの婚約式に、さして重要でもない貴族が代表者として参加していた国は、顔を青くしていた。


 コチラとしては、色んな国と繋がりを作りたいだけなので、その国から人が来てくれただけで十分なんだけどな。そうはいかないのが貴族社会なのだろう。



「緊張してる? ガモン」


「当然だろ。ティアナだってそうだろ?」


「ボ、ボクは別に…………」


「ティムになってるぞ?」



 小声でそんな事を話しながら神殿の中を進んで行く。


 そして神殿の奥にある、ステンドグラスから差し込む光によって七色に輝く台座に登り、そこに安置された婚約指輪を取ってティアナの指に嵌める。


 ティアナはその指輪を見て嬉しそうに笑顔を見せると、俺の顔に両手を添えたので、俺は少し身を屈めてティアナからのキスを受け入れた。



「「ワアアァァーーーーッ!!」」



 その瞬間、神殿全体に拍手が鳴り響き、俺とティアナの婚約が成立した。


 婚約するだけでこの騒ぎだ。結婚するとなったらどれ程の事になるのかと頭を抱えたくもなるが、今はそんな事を考えなくていい。俺は、ただただ幸せだ。


 婚約を成立させた俺達は、道を戻りながら列席している仲間達と挨拶を交わしていく。ティアナの父であるレクターは、いずれティアナと結婚する事を考えれば俺の義父になる訳だ。



「二人とも、おめでとう」


「ありがとうございます」


「ありがとう、お父様」


「ウム。…………ティアナ、ガモンを支えるのは大変だとは思うがしっかりやりなさい。ガモン、私の娘をよろしく頼む」


「「はい!!」」



 レクターの後も数人と挨拶を交わして祝福を受けていたのだが、ふと、俺達が戻る道の上に、やけに黒い影がユラユラと揺らめいているのに気が付いた。



「ティアナ!」



 俺はとっさにティアナを後ろに庇いつつ、スキル倉庫から☆5『四神獣の盾』を出して構えた。


 更に俺の側には鎧の翼を広げて飛んで来たアレスや、いつ来たかも見えないような速度でここまで来たバルタも、その影に向かって武器を抜いた。



『…………素早いな。そして仲間にも慕われているようで羨ましいな。勇者…………』



 その影は、まるで底がない深い穴の様に見えるほどに黒かった。漆黒とは、こんな色なのかと初めて思うほどだった。そしてその影から浮き上がるように出て来たのは人型の影であり、その声は、老若男女全ての声を合わせたかのようで、聞き取りずらかった。



「誰だお前は…………。何のつもりだ」


『何のつもり…………。そうだな、私の目的は貴様の命だ。貴様の存在が邪魔で、貴様のスキルが邪魔だ』



 吐き捨てる様な声に、苛立ちが混じっている。そして、言葉を紡ぐ度にその影から吹き出す気配は邪悪になっていき、その気配だけで息がつまりそうになった。



「イカン!! 『光よ』!!」



 突如叫んだドゥルクが、掲げた杖を輝かせる! すると静まり反っていた神殿中から息を吐き出す音が盛大に溢れた。どうやらこの場にいるほとんどの者が、敵の邪悪な威圧に負けて金縛りの様な状態になり、呼吸が出来なくなっていたらしい。


 ドゥルクのお陰で金縛りが解けた者達を、俺の仲間達が先導して外に逃がす。『フレンド・チャット』での連絡が回ったのか、神殿の別の扉からは武装した騎士達もなだれ込んで来た。



『…………ドゥルク=マインドか。わかってはいたが、厄介な者を味方につけているな…………!』



 ドゥルクの魔法の影響か、影の一部が消えて、その顔が左目から頬にかけて覗いた。



「ムッ!? その眼! 貴様『マッカシー=レレブスター』枢機卿か!!」



 ほんの一部、眼が見えただけでレクターに正体を看破され、その影は少しずつ剥がれるように姿を現した。

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