467回目 各種族の代表者達
天空城の会議室に、『レナスティア』に居住する全ての種族から代表者が集まった。
集まった面々の顔を見ると、俺の知る者が一人もいない。どうやらどの種族も、普段表に出るような者をトップを据えるのではなく、実務的に優れた人選をしてくれたようだ。
「『レナスティア』の施設について事はレティアがやる。でもレティアに出来るのは『レナスティア』の施設や環境に関する部分だから、種族間での掛け合いは自分達でやるしかない。あとは地上との事かな? 『レナスティア』に移住したいとか、別荘が欲しいとかいう要望が多いんだよな。移住については本島に街を作る事が出来るから考えてもいいけど、別荘は無いかな。色んな国から貴族が入り込むとか、厄介事の匂いしかしないし」
別荘を売れば儲かるんだろうけどな。貴族の相手はなぁ、あまりやりたくは無いよね。
「なら、ガモンが今言った事を基本方針として考えよう」
「大所帯になって来たからのぅ。それに種族間の軋轢と言う物は大なり小なりあるもんじゃ。多少の迷惑はお互いさまとして処理出来るように目指すか」
「ではまず、種族として譲れない部分を話し合いますか」
そんか風に切り出したのはエルフの『ボールウィン』とドワーフの『メットルドン』、マーメイドの『ヘミリュモン』だ。
エルフのボールウィンは見た目は初老の男だが、その年齢は一万歳。万年を生きたハイエルフである。普通ならそこまで長く生きたハイエルフは、精神がもはや植物の域に達しているので、論理的な行動や思考は出来ないのだが、ボールウィンはその生涯の八割を寝て過ごしていた夢想家である。
その生涯の殆どを夢の中に委ね、たまに起きては休まずに本を読み漁ってまた眠る。ハイエルフの中でも珍しい人生を歩んだ彼は、今だ経験が足りずに活動的な、珍しいハイエルフだ。
次にドワーフのメットルドン。ドワーフの里では行商を担当していた男で、他国の情勢への見識が深い事から代表者に選出されたドワーフだ。
ドワーフとしては珍しく、酒で前後不覚になった事は一度もない。酒に溺れないタイプの珍しいドワーフである。
そしてマーメイドのヘミリュモン。マーメイド族の若き騎士で、槍と剣ではマーメイドに並ぶ者は無く、水中での戦いに絶対の自信を持っている。
彼はマーメイド族の中で人気が高く、多くの推薦を受けて代表者入りした青年だ。
「外部に向けては、やはり我々が作れる衣服や装備品、あとは余った素材を売るのが良いでしょうね」
「『軍事の浮島』で兵の訓練を請け負う事も出来るぞ。『訓練所ダンジョン』では自身が負うダメージを人形に肩代わりさせる事も出来るからな。より実践的な訓練が出来る」
次に発言したのはレプラコーンの『モモット』と邪眼族の『メン』だ。
レプラコーンのモモットは、服飾に強いレプラコーンの人形師の女性だ。彼女の作るカワイイ動物デザインのモフモフぬいぐるみは、『エムズット』と言うブランド人形として有名であるらしく、ティアナも彼女が手掛けたウサギのぬいぐるみを持っていた。
政治には大して興味がないが、ぬいぐるみの地位向上(?)の為に代表者になったとか言っていた。
邪眼族のメンに関しては、『大蛇八首』以外で人の姿になれる秀才である。武力はからっきしのようだが、頭は切れるそうだ。
邪眼族は戦闘種族であるため、そのほとんどの者が頭を使う事に向いていない。種族の特性なのか、考えるよりも直感で動いてしまうからだ。なので代表者を決めるにあたって選択の余地は無かったらしい。
そしてこれらのメンバーに、人間の代表者としてアレスが加わる。まぁアレスについては、説明の必要も無いだろう。強いて言うなら、できるイケメンである。
「……………………ん?」
「どうかしましたか? ガモン殿」
「…………いや。…………なんか今、首の後がチリッと痛んだ。なんだろ、…………胸騒ぎがする。…………いや、きっと気のせいだ。話を続けよう」
様々な種族が暮らし、数多くの施設があるのが『レナスティア』だ。売れる物、提供できる施設は山とある。
何とかこれらを上手く使い、各国との協力関係を結びたいものだ。そうすれば戦力も集め易くなる。問題は、どの程度の協力関係でどの程度の戦力を寄越すかだが、こればっかりはその時になってみないと解らないだろうな。
「…………んん?」
まただ。また首の後ろがチリチリと痛んだ。何だろうな、やはり胸騒ぎもする。何かヤバイ事が起こりかけているような、そんな気配だ。
…………でも、それなら俺のスキルは黙っていない気がするんだよな。それなのに緊急クエストが発動しないのなら、あまり気にしない方がいいかもな。
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