464回目 大戦力
「何の為にか。そりゃ当然だけど、『方舟』との戦いの為だな」
「ガモンくん。知っていると思うけど、ヴァティーはあの『方舟』に乗って来た神獣の一体だよ? あの『方舟』が存在する限り、ヴァティーは常に魔王や幻獣になる危険性を秘めている。ヴァティーを『方舟』に近づける事なんか、出来る訳がないよね?」
女神ヴァティーを自由にする目的が、『方舟』との戦いの為だと聞いて、アルジャーノンの気配が僅かに揺らいだ。理性で抑えてはいるけど、それでも僅かに殺気が漏れている。
「別にヴァティー本人に戦って貰おうとは思ってないよ。それが出来れば心強いのは確かだけど、出来ない事くらいは俺にも解っているさ」
「…………じゃあ、どういう…………いや、そうか。『大蛇八首』だね?」
「正確には『邪眼族』かな。あの迷宮では条件がガチガチ過ぎて実力がよく解らなかったけど、バルタともまともに戦える戦力があのダンジョンにはあるだろ? 邪眼族はヴァティーの眷族だからあのダンジョンから出ないけど、ヴァティーがダンジョンに縛られていなければ、一緒に戦う事は出来るんじゃないかと思うんだよ」
「…………うん。確かに出来るだろうね。ヴァティーが認めれば。でもそれは、ヴァティーがあの場所に縛られている今でも変わらない。ヴァティーが認めさえすれば、邪眼族は『方舟』との戦いに出られるよ?」
「…………まぁ確かにそうなのかもな。でもさ、ヴァティーがあのダンジョンに残ったままなのに、あの場所を離れて実力が発揮できるか? 俺は無理だと思う」
「それは…………確かに」
それに、あの場所にヴァティーが居ると言う事実は、そのまま邪眼族の弱点となるだろう。だからヴァティーには、別の場所に移動してもらう事になる。最有力候補は『天空城』だな。
「ヴァティーが自由になって邪眼族の力を借りれるなら、戦力は大幅にアップする。それに『大蛇八首』であれば、普通に『幻獣』とも戦えそうだしな」
「…………そうだね、いけると思うよ。『大蛇八首』全員で掛かるなら、『幻獣』を倒す事は可能だろうね」
俺達と『方舟』との戦いは、多くの魔王と、何体いるかも解らない『幻獣』との戦いになる。
だが魔王は何とかなる。前に聞いたヴァティーの予想では、地上で倒された魔王は『方舟』の中で『神獣』として復活する。ただし魔王に落ちた精神はそのままなので、言わば『バグった神獣』という厄介な存在として復活する。
この『バグった神獣』が魔王よりも強いのかは解らない。ただ、地上の魔王とは違って復活はしないから倒せるのだ。これなら☆4クラスの装備に身を包めば、高い確率で勝てると思う。あくまで予想で、希望的観測ではあるが。
でも『幻獣』はそうはいかない。一度戦った幻獣を思い返してみれば、その厄介さは途轍もなく大きい。幻獣を倒すには、大きな戦力が必要となるのだ。
その一端を、『大蛇八首』が請け負ってくれるならば、僅かでもこちらに天秤が傾くかも知れない。
「そういう事なら、喜んでヴァティーを自由にするためのアイテムを考えるよ。僕ひとりだと穴があるかも知れないから、ドゥルクくんにも手伝って貰おうかな」
「それがいいんじゃないか? ああそれと、ヴァティー専用のアイテムで考えてくれて良いからな? 下手に他の用途にも使える様にとかすると、失敗しかねないからな」
「いいの? そもそも、この『神器の設計書』があれば、かなり強力な武器でも防具でも、理想の物が作れるでしょ? 自分達で使おうとは思わなかったの?」
「そりゃもちろん考えたさ。でも俺程度で考え付くアイテムだと、下手をしたら後々に出て来た☆5アイテムと能力が被る可能性もあるんだよな。それに、もし最高のアイテムを想像できたとしても、それが☆5の枠組みから逸脱した場合、劣化した物が作られる訳だ。それも避けたい」
考えれば考える程、これ結構困るアイテムだったんだよな。☆5は本当に何でもアリだからな。頭を捻って作ったアイテムが、ガチャから出て来た☆5アイテムとダブるとか、普通に悪夢だからな。それだけは絶対に避けたい。
その点、ヴァティーを自由にするための専用アイテムなら、流石にダブる心配も無いだろうからな。
「なるほど。では本当に遠慮なくやらせて貰うよ。ヴァティーも最近、寂しそうにしている事が多かったからね、とても喜ぶと思う。邪眼族の協力に関しては期待していて良いよ。僕も説得するから」
「ああ、頼むよ」
これから僅か数日後には、神界から届いたアイテムによって自由の身となったヴァティーの姿が『レナスティア』にあった。
アルジャーノンがドゥルクと共に考えたアイテムは、ヴァティーがホムンクルスを本体とした状態でも女神の力を使える様に考えられた物であった。
女神ヴァティーの本体は『蛇女神の鎧』となり、ヴァティー本人が装着する事で女神の力を使えると言う、ヴァティーの専用装備となった。
そしてヴァティーが邪眼族の助力を約束してくれた事で、俺達の戦力は大幅にアップしたのである。
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