457回目 年長者達の困惑
「ガモンくん、もう一度言って貰える? 僕に誰の体を作ってくれって言ったのかな?」
「いやだから、世界樹の…………。あの、突然現れたんだよ世界樹が。エルフっぽい姿で複数人。それで、そいつらを派遣してきた『運命神』ってのが俺なら体を作れるとか言ったらしくて…………」
アルジャーノンに現状を説明する事三回。女神ヴァティーと共に長い時を生きており、エルフとドワーフのハイブリッドでもあるアルジャーノンをして、今回の事は予想を遥かに越えた事態であるらしい。
アルジャーノンが居た☆5『技巧神の大工房』には、他国巡りを終えて帰って来ていたドゥルクもおり、アルジャーノンと共に作業をしていたようだったが、こちらも口を半開きにしたまま驚愕している。
様々な知識を持つドゥルクですらこれとは、『世界樹の化身』が姿を見せたのは、本当に初めての事態らしいな。
「嘘は言ってないみたいですね。…………うーーん、世界樹に意思があるのは知っていましたが、明確な意思の疎通までは出来なかった筈。ましてや人の形をとった化身が現れるなんて、少なくとも僕は知らない。ドゥルクくんは知ってた?」
「いや、儂とて聞いた事がない。世界樹に意思があると言うのは、一部では有名な話じゃ。少なくとも、世界樹を管理しとるエルフと交流があれば、そう遅くなく知る事じゃ。エルフ達の鉄板ネタじゃからな。だが人型? それも複数とはどういう事じゃ? 一体ならまだ理解も出来るが、複数? 人格が幾つかあったと言う事かの?」
「いや、違うみたいだ。皆それぞれ別の世界樹らしいんだけど、一度『材木』にされて『方舟』として組まれた事で一体感が出たとかで、何かその世界樹間の意思の疎通が出来るようになったとかなんとか…………」
「……………………?」
「……………………?」
俺の説明に、アルジャーノンとドゥルクが揃って首を傾げた。うん解るよ。何を言ってるか解らないよね。俺も意味が解らなかったもの。
「いや俺だって意味不明だよ? でもしょうがないじゃん! そんな事を言っていたんだもの…………!」
移動がてら軽く説明を聞いて、俺だって『…………?』ってなったよ! そりゃなるよ! 意味が解らないもの! 何だよ、材木として『方舟』に組まれて一体感が出たって! それで精神世界でよく集まってたとか、本当に意味が解らないんだよ!
「ちなみにそれ、現地のエルフ達はどういう反応だったの? しばらくあの島には行ってないけど、現地のエルフの感覚だと普通の事だったり?」
「いや? 俺達の案内をしてくれたエルフの長老の一人が『イマメルバーン』ってエルフだったんだけど、かなり驚いていたぞ? それに、世界樹達をもてなす事になったから、色々と大変そうだった」
「イマメルバーン? …………もしかしてイマメル坊やかな? …………へぇ、あの子がもう長老になってるなんて、時間を感じますねぇ…………」
……………………イマメル坊や? イマメルバーンって長老だよな? それが坊や扱いされるのかよ。…………いやもう本当に、アルジャーノンはどんだけ長い時を生きてるんだろうな。
「ま、まぁとにかく、世界樹達が待ってるだろうから、一緒に来てくれないか? アルジャーノン」
「そうですね、世界樹のホムンクルスなんて作れるかどうかは解らないけど、僕としてもその世界樹様方には会って色々と聞きたいし…………。うん、一緒に行きます」
「ああ、儂もいいか? 世界樹の化身には興味があるしの。しかし、世界樹と会話が出来る機会など訪れるとは思わんかったの。長生きはするもんじゃ」
いやだから死んでるだろ。と、心の中でツッコミを入れておく。
ドゥルクの奴、最近はずっとホムンクルスの体に入っているから、自分が幽霊だと忘れているかも知れない。
まぁともかく。俺はアルジャーノンとついでにドゥルクも連れて『転移ポータル』を使ってエルフの里へと戻った。
そして、世界樹達がいる議事堂に行ってみたのだが、そこでは俺が来た事にも気づかずに、世界樹を精一杯もてなすエルフ達の姿があった。
「…………なんか大変そうだな」
「あっ、ガモン! 戻って来たのね!」
「ただいまティアナ。アルジャーノンと、ついでにドゥルクも連れて来たぞ」
「ついでとはずいぶんな言い種じゃな。フム、久しいのぅティアナの嬢ちゃん。ガモンの事は、もっとしっかりと尻に敷いておくがよいぞ」
「ずいぶんな言い種はどっちだよ」
ティアナは俺を尻に敷いたりしないよ。…………しないよな? きっと。
「ガモンくん、あそこにいる彼女達がそうですか? 確かに彼女達からは、色濃く世界樹の気配を感じますが」
「あ、うん。確かにあいつらが世界樹の化身だよ。やっぱり、エルフともなると気配で解るのか?」
「ええ、まぁ意思を持つ世界樹には気配があるんだよ。世界樹の気配を掴むのはそう難しくもないので、ガモンくんも先入観を捨てて、気配を探ってみるといいよ。ガモンくんなら、きっとわかる筈」
…………うーーん、難しい気がするけどなぁ。まぁでも、とにかくアルジャーノンは連れて来たのだから、俺の役目は一旦終了である。
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