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454回目 世界樹たち

 世界に初めて『方舟』が訪れた大昔。最初の『方舟』は世界を再生する『神獣』を解き放った後でバラバラに分解され、世界とひとつになった。


 荒廃した世界は神獣を放っただけでは何にもならず、緩やかに滅びるだけだった。だから、『方舟』を造る材料でもあった『世界樹』が、世界再生の土台となるべく荒廃した世界に散ったのだ。


 世界再生の中心部となるこの星には、分解した『方舟』が一番多く融合した。その欠片から芽吹き、世界に命を多くもたらしたのが、『世界樹』の始まりである。



『命が増えて、世界が安定してきましたね』


『それに伴って争いも増えたようですわ』


『人族は争いが好きですからね。あの争いは人族特有のじゃれ合いでしょう。放って置いてよいと思いますよ?』


『そこで多少減ってもすぐに増えるからね』


『むしろ人族はもっと減った方が安定させやすいでしょう』


『文明を持つとすぐに調子に乗りますからね。ある程度で取り上げた方が良いのでは?』


『それをやると人族はすぐに滅びるのですよ』


『外からの圧力に弱いですからね、人族は』


『基本的には脆弱なのですよ。それを補う為の文明ですから』



 あらゆる場所に散って根を張り大きくなった世界樹達は、一度は材木にされて『方舟』として組まれた経験から、他の世界樹と精神的に繋がる事が出来るようになっていた。


 せっかく繋がれた彼女(?)達は、共通の精神世界を作り、そこに定期的に集まっては話し合いをしている。


 精神世界で話をしやすくするために、世界樹達は人の形を取っていた。その世界樹達の話し合いは、最初こそ世界の在り方を議論し、自然界や動物、それに人間達を見守りつつも揶揄するような物だったのだが、何千年何万年と繰り返す内に、ただ集まってダベる『女子会』のようになっていった。


 本当ならばオヤツなども欲しいのだが、精神世界では食事に意味はない上に彼女らはそれを口にした事も無いので、目下の興味は『服』である。


 それには人の形でいる上に、見た事のある物はその場に作り出せる精神世界は、とても都合が良く、娯楽としても最適だったのだ。


 まあ、彼女らに一番近いのはエルフである為、エルフの間で流行った物だけになるのだが、それがこの数日で一変した。


 とある島に暮らすエルフ達が、突然様々な種類の服や装飾品に、化粧品を使い始めたからだ。


 これはエルフの基準で選ばれる服しか知らずに過ごしてきた彼女達にとっては革命であり、お陰で世界樹の精神世界は一気に服や装飾品で溢れた。



『これ! このデザイン凄くいい!』


『なにこれ! こんなにフリルのついた服は初めてね!』


『このスーツって言うのカッコイイ』


『向こう側が透けて見える服なんてあるのね。こんなにスケスケの服なんて、なんのために着るのかしら?』


『靴も凄く種類があるのね。ハイヒール? なんでこんな歩き難いのを履くの?』


『指輪とかネックレスとかピアスとか、こんなに種類があるのね』


『見た事の無いデザインね。これなんか石がハート型にカッティングしてあるわ』


『これ何かしら? え? 爪につけるの? へぇー、今って爪までオシャレにするのね』



 本体が木なので、眠る必要もない世界樹達は精神世界に投影した服を自分達に重ねて着せ替えを楽しんでいた。


 そして世界樹が騒ぎまくるカオスな空間に、二人の新たな世界樹がやって来た。


 他の世界樹がどこか落ち着きが無いのに対し、やって来た世界樹はとても凛としていて落ち着いていた。そしてその世界樹の背後には、まだ幼い子供に見える世界樹が引っ付いていた。



『今日はまた、ずいぶんと騒がしいですね。少し落ち着きなさい』


『『お姉様!!』』



 その精神世界にいた世界樹達にお姉様と呼ばれた世界樹は、一世代前の世界樹であり、彼女らはその世界樹の実から取れた種から生まれた、言わば母体だ。


 ならばお母様なのではないかと思うのだが、凛とした世界樹は、お母様と呼ばれると不機嫌になるため、お姉様で通している。



『どうしたのですか? お姉様がここに来るなんて珍しいですね?』


『そうですね。私と貴女方では、既に存在する次元が違いますからね。私も『運命神』様に頼まれなければ、ここには来ませんでした』



 運命を司る神である『運命神』。その名前を聞いて数名は嫌そうな顔を見せた。何故なら、その『運命神』の使徒達こそが、一度は彼女達を『材木』へと加工した者達だからだ。



『よく聞きなさい。いまこの世界にはガモンと言う名の勇者がいます。貴女達が遊んでいる、それらの物を作り出した者です。『運命神』様によれば、そのガモンが紡ぎ出した未来に僅かに光が見えてきたそうです。滅びしか無かった世界の未来において、存続の可能性が大きくなってきたのです。貴女達には、その助力が命じられました』


『『…………助力…………?』』


『方法は任せますが、早急に勇者ガモンと繋がりを持ちなさい。それと、この子の教育も任せます』


『その子はどこの世界樹ですか?』



 いまだに凛とした世界樹の後ろに隠れている小さな世界樹を持ち上げ、他の世界樹達の前へと押しやりながら、凛とした世界樹はその正体を明かした。


 その小さな世界樹こそが、ガモンの持つ『レナスティア』の浮き島にある世界樹の化身であった。

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