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442回目 エルフに会いたい

 様々な国を使者として回って来たカーネリアが帰って来たのは、俺が婚約式で着る衣装の最後の仮縫いが終わった日だった。


 その日俺は、仮縫いが終わった後でティアナと一緒にテルゲン王国の王都を散策に出ていた。時間もあったし、ティアナも仮縫いの後でのデートを期待して着いて来ていたのも解っていたからだ。


 一応は二人きり…………のつもりだ。俺達の護衛としてアレスやフラウス騎士団の面々が少し離れてついて来ているのは知っているが、俺もティアナもわきまえているので文句は言わない。


 正直、数々の☆5装備を手に入れた俺のステータスは、もうインフレを起こす勢いで高くなっているので、簡単に殺されたりはしないし、ティアナも☆5『加護の指輪』があるから、街が一瞬で吹き飛んだりしない限りは心配いらない。


 だが、それとこれとは別だ。例え俺達が完全な不老不死だとしても、対外的にも護衛はつけない訳にはいかないのだ。


 と、それはともかくとして賑わう街を散策する。新王となったレクター=カラーズカがまだ侯爵だった時、ティアナは女性である事を隠しティムとして過ごしていたが、街に住む多くの人はそれを知らない。ただ普通にお姫様として接してくれる。


 長く男として生きてたティアナは、それがとても嬉しいらしい。



「ん? なんか騒がしいな」


「あっ! 見てガモン。『ブレイブレイド』が、カーネリアが帰って来たわ」



 街の子供達が指差す方向の空を見て、ティアナが声を上げた。つられて俺も見上げてみると、そこには船首に巨大な刃を付けたような飛空艇が飛んでいるのが見えた。


 あれは確かに『ブレイブレイド』だ。どうやらカーネリアが、回るべき国を全て回って帰って来たようだ。


 本来ならば飛空艇は、☆5『◇天空城『レナスティア』』に帰るのだが、わざわざここまで来たという事は、誰か客を乗せて来たのかも知れない。



「…………しょうがない、戻るか」


「そうね。ちょっと残念だけど…………」



 ティアナも俺と同じ事を考えたようで、俺達はデートの途中ではあったが、テルゲン王国の王城へと戻る事にした。



 ◇



「ガモン! ティアナ! ただいま!」


「おかえり、カーネリア。無事で何よりだ」


「おかえりなさい。チャットでは「明日天空城に帰る」って書いてたからビックリしたわ。何かあったの?」



 どうやらティアナは、カーネリアから帰る日程を詳しく聞いていたようだ。俺も三日くらい前に、あと数日で戻るとは聞いていたが、ティアナは毎日のようにチャットでやり取りしているから、俺より皆の…………いや、女性陣の動向に詳しい。



「うん、そのつもりだったんだけど、ガモンに会わせたい人がいてね。後は帰るだけだったから、少し急いで戻って来たの」


「俺に?」



 俺が首を傾げると、カーネリアは一歩横にずれた。


 …………何のつもりだろうか? とカーネリアを目で追うと、カーネリアは自分が元いた場所の足元を指差した。


 そして俺がそれに合わせて視線を移動させると、そこには身長が1メートルも無い、ドワーフよりも更に小さい人間が立っていた。


 見た目はまんま人間だ。ちょっと鼻と耳が尖っているが、これくらいなら普通にいると言う程度。後は眉毛と髭が長いこと位だな。ただ、すごく小さい。子供と違って等身は大人のものだから、縮小コピーをした感じだな。


 ちなみに服装はかなり凝っている。シルクハットにお洒落にデザインされたスーツにベスト。靴も革靴みたいだし、何と言うか英国紳士のようなイメージだ。ただし、その全てが濃さの違いはあるものの緑色で統一されていた。



「やっと気づいて貰えましたね。私、レプラコーンの『モメット』と申します。以後お見知りおきを」


「あ、ご丁寧にどうも。ガモン=センバです。…………えっと、レプラコーン?」


「はい。レプラコーンです。草原の精霊種族のレプラコーンです」



 …………まずい、そう言われても分からない。いや、レプラコーンって何か聞いた事がある気はするんだ。ただ、エルフやドワーフ程は知らないと言うか…………。



「…………やはり知りませんか。…………そうですよね。我らはドマイナー種族ですから。植物の加護を持つ精霊種族なのに、エルフ様のような森を司るような強い精霊魔法も使えませんし、大地の加護もドワーフのような土や岩ではなく『砂』ですし。魔道具も作れず鍛冶も出来ず。出来るのは精々が衣服を縫うくらいですからね…………」



 ヤバイ、俺の反応が悪かったせいでレプラコーンがしゃがみ込んでイジけ始めてしまった。何とか励まさないと。



「いや、あの…………。ふ、服を縫うのは、大事ですから。ほ、ほら、人に必要なのは衣食住で、衣は一番最初にあるものですから…………」



 我ながら何と下手くそな慰めか。しかし、レプラコーンとは単純な種族らしく、パッと顔を上げたかとおもうと、「ですよね!」と機嫌を良くして立ち上がった。


 これはヘタに話を長引かせると、またやらかしてしまいそうだと感じた俺は、早く話を進める事にした。



「えっと、それでレプラコーンのモメットさんは、俺に何か用があって来たのですか?」


「はい! 実はあの飛空艇の持ち主であるガモン様にお願いがあるのです! 私を、エルフ様の島まで連れて行っては貰えないでしょうか!! 我がレプラコーン族の運命が掛かっているのです!!」



 シルクハットを胸に抱き、深く頭を下げるモメット。何やら、切羽詰まった事情があるらしかった。

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