44回目 キャンパー
『登録者名『ガモン=センバ』様。確認致しました。ワタクシは『◇キャンピングカー』の管理AI『キャンパー』と申します。以後、よろしくお願い致します』
「……………………『キャンパー』…………」
自らを管理AIだと名乗ったのは、宙に浮かぶ球体だった。
銀色に赤い線がいくつか入った機械の球体で、その中心には緑色の丸い画面がついている。そして、そこには顔らしきものが表示されているが、それは白いドット絵で、まるでと言うかまんま『顔文字』だった。
「…………えっと、どこからツッコンでいいものやら…………」
『『◇キャンピングカー』について何か不明な点があるのであれば、可能な限りお答えします。何を聞きたいですか?』
「…………うん。まず、キャンピングカーって何だっけ?」
『キャンピングカーの定義ですか? キャンピングカーとは、車内で寝泊まりできるように設備を備えた車であり、短期的にはもちろん、長期的にも住宅と同じように…………』
「ああ、いや、いい。大丈夫だ。そういう説明が欲しかった訳じゃないんだ」
俺は玄関で靴を脱ぎ、キャンパーと名乗る球体が体の中から伸ばしたアームで用意してくれたスリッパを履いて中に入った。
…………うん。すんげぇ広い。天井も高いし、明るいし、広くて清潔感のあるダイニングキッチンも見える。奥にはまだまだ部屋がありそうだ。
……………………キャンピングカー? いやこれ絶対ちがうよね? 少なくともキャンピングカーではないよね?
「うわぁ!? 何これ! 外見と中身の差が凄い!!」
「空間がおかしいですぜ!? あの外面でこれは詐欺ですぜ!!」
俺に続いて中へと入ったティムとバルタが騒いでいる。二人は靴のまま中に入ろうとしてキャンパーに止められ、その存在にギョッとしながらも、素直に靴を脱いでスリッパに履き替えていた。
「…………はぁ~~。僕、ガモンの世界を少しナメてたよ。これ程の空間魔法は初めて見た。しかもこれ、移動するんだろ? 座標を固定しない空間魔法で、中に人が入れる物なんて聞いた事がない。普通ならマジックバッグみたいに生物は中に入れない仕様になるはずなのに…………」
「いや、確か旦那の世界には魔法そのものが存在しないって話でしたぜ? つまりこれは、魔法の力を使っていない現象って事ですぜ。…………まったく、恐ろしい世界があったもんだ…………」
キャンピングカーの中を見渡して、二人がそんな感想を述べているが、違うからね。こんなの現代科学じゃあり得ないからね。なにこれ? 何がどうなったらこうなるの? 俺のキャンピングカーは?
『…………『◇キャンピングカー』の説明をする前に、少々落ち着かれた方が良さそうですね。お茶を用意致しますので、ソファーに座ってお待ち下さい』
「お、おう…………」
興奮したり驚愕したり困惑したりで、確かに俺は疲れていたから、この申し出は正直ありがたかった。
もうソファーに座るとかよりも、一旦寝たいもの。毛布にくるまって全てを忘れて寝たいもの。
そんな事を考えながら座ったソファーは、異様に座り心地が良かったので、ここでも寝られそうではあった。しかし、ティムとバルタも隣に座ってきたので、俺は大人しく座っている事にした。
一応、今俺がすわっているリビングの一角には、ガラスのテーブルを囲むように丸くて大きなクッションのような一人用ソファーもあるのだが、ティムもバルタもそこには座らなかったのだ。座り方が分からなかったのかも知れない。
『どうぞ』
「…………麦茶だ…………」
キャンパーがその細いアームで運んで来たお盆の上から麦茶の入ったコップを取り、俺達の前に並べた。その動きは滑らかで、まったく淀みがない。完全に未来のロボットである。
頭がキャパオーバーで変になりそうだったので、取り敢えず麦茶を飲んで落ち着く。
そして麦茶をお代わりして二杯目を飲み干した所で、俺は意を決してキャンパーと話す事にした。
「えっと、取り敢えず、これは俺が知っているキャンピングカーとは全く別物なんだけど、そのへんの説明をしてもらえるか?」
「え? そうなの、ガモン?」
「うん。俺の世界ではこんな…………、外見と中身の空間に差があるとか無いから、無理だから」
「おぉ、そんなんですかい。…………ちょっと安心しやしたぜ。あっしはてっきり、旦那のいた世界ではこれが普通なのかと思いやしたよ」
「いやいや、ないない」
だってもうこれ、魔法の分野じゃん。…………いや、さっきティムが魔法でも難しいみたいな事を言ってたか? じゃあ本格的になんだよコレ。
『その説明は簡単です。ワタクシを含めたこのアイテムは、☆4クラッシュレア『◇キャンピングカー』です。ただの☆4『キャンピングカー』ならば、マスターの考える物と同じ物が出ていました。これは、クラッシュレア特有の変化なのです』
「…………変化しすぎだろ。四次元ポケットから出てくるタイプのアイテムだぞコレ」
『☆5クラッシュレア『四次元ポケット』は、あくまでも入れているアイテムや生物を保存し、出し入れするアイテムです。その説明は当て嵌まりません』
「…………待って、ついていけないから、一つずつ整理させて?」
四次元ポケットあんのかい! …………ってツッコミは横に置いておく。とんでもない事実をぶっ込んで来るんじゃないよホントに。
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