436回目 久し振りのゲンゴウ
「インマッスル王としては、第三王子のコウハキンを王太子にしたい。その為に邪魔をしてくるであろう第一・第二派閥の貴族達が動けないように釘を刺したかった、と。…………コウハキン王子を俺に連れて行かせたのも、この為だったんですね」
「何も言わず引っ掛ける形になった事はお詫びするが、もしコウハキンがガモン殿と繋がりを作れなければ、私は二人を陥れる事も辞さない覚悟だった。しかしな、やはり跡を継がせられないと解ってはいても、やはり息子は可愛いのだよ。正直苦悩していた。ガモン殿がコウハキンを評価してくれた事は、この上なく嬉しく思う。どうかこれからも気にかけてやってくれ」
「コウハキンの事は俺もいい友人になれそうだと思っているので、ないがしろにするつもりはありません。ですが、バゴス王国のお家騒動に進んで首を突っ込んだりはしませんよ?」
「それは当然だ。こちらもそこまで勇者殿に首を突っ込ませる気は無い。我が国の事は我が国の者達だけで解決するのが理想だからな」
「…………まあでも、フレンドの国の事ですからね、これくらいの手助けはしますよ」
そう言って俺はインマッスル王をフレンドに登録した。こうしておけば、コウハキンは二人の兄達に知られる事なく、いつでもインマッスル王と連絡が取れる訳だ。このアドバンテージはデカイだろう。
フレンドと言う繋がりも出来た事で、インマッスル王は俺達に全面的に協力してくれる事を約束してくれた。
この国に拠点を置く事も了承してくれたし、火山地帯の管理も引き受けてくれた。
もっとも、火山地帯に関しては『神獣・ラーヴァゼタートル』の事があるから、国として管理せざるをえないけどな。自国に神獣がいて、しかも瘴気まで出したとなれば悪夢でしかない。
さらにその火山地帯には、つい先日復活した魔王である『ヒダルマトカゲ』を再封印してある。神獣の甲羅の上に魔王を封印とか嫌な予感しかしないので、『ヒダルマトカゲ』の『郷愁の禍津像』を見つけたら即座に破壊しなければいけないだろうな。
インマッスル王とコウハキンにも『郷愁の禍津像』と魔王の関係、そして『禍津勾玉』の事を伝えると、『禍津像・ヒダルマトカゲ』の破壊を最優先にしつつ、バゴス王国でも『禍津像』の探索をしてくれると約束してくれた。
そして俺の拠点としては、インマッスル王が持つ別荘の一つを譲渡してくれる事になり、俺はその屋敷に『拠点ポータル』を設置して、見送りに来てくれたコウハキンに一時の別れを告げた。
「じゃあなコウハキン。俺に用がある時はいつでもチャットしてくれ」
「わ、わかった。…………ありがとう、ガモン。俺をフレンドにしてくれた事、凄く心強く感じるよ。また会おう」
「ああ、またな」
新たな友情の手応えを感じつつ、俺は『拠点ポータル』を起動し、仲間達と共に『レナスティア』へと飛んだ。
◇
「来たわね。待ってたわ、ガモン」
レナスティアの天空城まで飛んだ俺は、すぐに城下町まで降りる。その理由は、そこで待ち合わせしようと、ティアナとチャットで約束したからだ。
これがただのデート…………なら良かったのだが、違う。もしそうなら、シエラと『メガリス』の三人は天空城に置いて来ている。
そして、俺の方がそうであるように、ティアナも一人では無かった。その近くにはタミナルの街で商会を開いているゲンゴウと、その部下が数人付いて来ていた。ゲンゴウの部下達は、みんな俺とフレンド登録をしている者達だ。
「ティアナ、元気そうだな。ゲンゴウ殿達も久し振りですね。ティアナが婚約式で使うアクセサリーを見てくれていると聞いていますよ」
「ガモン殿、この度はティアナ様とのご婚約おめでとうございます。いやはや、無礼かとは思いましたが、ティアナ様のアクセサリーを選んでおる時にここのお話を聞きましてな、居ても立ってもいられず、こうして押し掛けてしまいましたわい」
商売人であるゲンゴウの目当ては、この街に並ぶガチャから出てきた☆4のお店の数々だ。
どうも最近、俺の仲間達の中では『コンビニスイーツ』が流行っているらしく、仲間の中でも甘い物が好きな女性陣が集まって女子会みたいな物を開いているらしい。
まあ確かにコンビニに並んでいるスイーツの類いは、俺も大好きだった。…………そう考えると、久し振りに食べたくなって来たな。
もちろん、ここに並ぶ店には洋菓子店のような物もある。しかし、それとこれとは話が違う。
しっかりと計算され尽くして作られた極上のスイーツは確かにうまいのだが、コンビニで気軽に買えるお菓子やスイーツの類いは、その手軽さと楽しさが良い所なのだ。
…………そんな訳で。俺はゲンゴウ達と共にコンビニへと向かった。専門的な店をゲンゴウ達に紹介するのももちろんやるが、その前にちょっとオヤツタイムを挟むのだ。
ガチャから出て来たコンビニは、日本の一般的なコンビニよりも内装も広く、イートインスペースも広く取られているので、まずはここでオヤツタイムだ。
ゲンゴウやその部下達は、初めて見るであろうコンビニでキョロキョロと忙し無かったが、もう何度も来ていると言っていたティアナと『メガリス』の三人は、手慣れた感じでスイーツを選んで買い物していた。
外が冬だからか、雪をテーマにしたスイーツが多いのは流石にコンビニらしい。俺は雪に見立てた粉砂糖を振り掛けられたシュークリームなどを選んで、ゲンゴウ達を促して買い物とオヤツタイムを楽しんだ。
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