表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
430/607

430回目 ドアルガンとの取引

 ☆5『技巧神の大工房』の一室で、ドアルガンとその護衛二人のドワーフ三人が、アルジャーノンが打ったガチャ装備の剣を真剣な顔で見つめている。



「…………むぅ、確かにガチャ装備のようだな。本当にこれが作れるのか」


「『鑑定』してみると、熟練度の表示も確かにあるぞい。だが、作る為の材料はそれほど変わった物が無いのう」


「何よりも、全く同じスキルが付くと言うのが凄い。スキルの付与は普通の工房でも出来るが、全く同じスキルと言う訳にはいかんからな。それだけでも脅威じゃな」


「…………まぁゴチャゴチャ言っても始まらねぇ! おう兄弟! ちょっと一振り打たしてくれや!」



 ドアルガンがそう言うので、俺はアルジャーノンに頼んで工房の準備をしてもらった。そのついでに工房の拡張も行い、使える場所を三つに増やした。ドアルガンの護衛である筈の二人までが、鍛冶をやりたそうにしていたからだ。



「よし! まずは同じ武器を作ってみるぞ!」


「「オウッ!!」」



 気合いを入れて剣を打ち始める三人。作る剣のレシピと材料をアルジャーノンから受け取り、チラッとレシピを見た後は流れるように作業に入った。



「え? レシピをチラッとしか見てなかったけど、あれでもう始めるのか?」


「彼らはドワーフだからね。作る物の要訣さえ押さえたら、後は見る必要も無いんだよ。ほら、ちゃんと正しい順番で下処理をしているでしょ?」



 俺にはそれが正しいのかどうかが分からないけど、アルジャーノンが正しいと言うならそうなのだろう。


 ちなみに、いま作っているのは☆4『白雷獣の剣』だそうだ。アレス愛用の強力な剣を、お試し感覚で作っている訳だ。



 そして待つ事しばし。三人のドワーフは、その全員が『白雷獣の剣』を完成させた。しかも、護衛二人が打った物は熟練度もそこそこだったのだが、ドアルガンが打った物は既に熟練度がMAXになっていた。さすがは里長と言うべきか、出来上がるのも他の二人より早かったし、格が違うのをまざまざと見せつけられた。



「…………フム。こいつは良い剣だ。これなら、俺達ドワーフも、役に立てそうだな」


「協力してくれるか、ドアルガン?」


「ああ。…………ただし条件がある。報酬を貰いてぇ」


「報酬? そりゃもちろん払うぞ。☆4の武器や防具を大量に作って貰わないといけないんだからな。当然だろ」


「金じゃねぇよ。さしあたって、あの『仙酒』と『エリクサー』を報酬に貰いてぇんだ。理由は、言うまでもねぇだろ?」


「そりゃ解るけど…………」


「あの『仙酒』ってのは凄ぇ。瘴気が大分身に染みちまってるから時間は掛かるだろうが、確かにあれなら瘴気が消せる。だけどな、ウチには『エリクサー』が無い。そいつが無けりゃ瘴気が消えても体を再生出来ないからな。…………時間が経つと、一回で治る保証も無いしな」


「…………そうなのか?」



 霊薬とも呼ばれる『エリクサー』は、体の欠損部位すらも再生させる万能薬である。


 だが、その欠損を治すために必要不可欠なものが、治す本人の記憶とイメージだ。つまり、あまりに長い間欠損していると、自分が失った部位の感覚や形を忘れてしまい、変な形になったり、そもそも再生ができなくなったりするらしい。そして、再生に失敗した場合は、上手くいかなかった部位を切り捨て、もう一度エリクサーを使うのだ。


 …………なるほどな。これでは確かにエリクサーがいくつあっても足りないだろう。ケガレ者と呼ばれるドワーフ達は、もう何十年も前に欠損しているらしいからな。



「…………彼らを『レナスティア』に預けてくれるなら、無償で治療するけど?」


「いや、しっかり報酬で貰う。そして治った奴にも働かせて借りを返させる。こう言うのはしっかりしねぇと人格が腐る。お前さんから先に貰った分は顔繋ぎの挨拶として受け取るが、あれでも貰い過ぎなくらいだ。これ以上甘える訳にはいかねぇ」



 これは『矜持』ってやつかな。短い付き合いだが、ドアルガンには、その実力に裏打ちされた確かなプライドがある。


 一人の職人としての、また一人の男しての矜持が、施しを受けるような真似を許さないのだろう。


 そのドアルガンの決定を護衛の二人も支持している様だし、ドワーフと言うのは職人が多いだけに全体的にプライドが高いのかも知れない。



「…………ああ、わかったよ兄弟。じゃあドワーフへの報酬は、しばらく『仙酒』と『エリクサー』で支払う事にするよ。ただ、エリクサーに関しては俺達もおいそれと手には出来ないから、少し時間を貰うかも知れないぞ」


「うん? なんだ、エリクサーはガチャから出て来ねぇのか。てっきり、エリクサーですらガチャから出て来るもんだと思っていたぜ」


「…………まぁ、スキルで手に入れるってこと自体は変わらないけどな。ちょっと手順が特殊なんだよ。あぁでも、『仙酒』の方はいくらでも出せるからな?」


「おう、まずはそれだけでも助かるぜ」



 そんな訳で、ドワーフ達に働いて貰う報酬が決まった。…………しかしエリクサーか。この『技巧神の大工房』で作れたりしないだろうか?

面白い。応援したい。など思われましたら、下の☆☆☆☆☆から評価をお願い致します。


モチベーションが上がれば、続ける力になります! よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ