43回目 ☆4クラッシュレア
俺は基本的にキャンプをしない。アウトドア派かインドア派かと聞かれれば、インドア派だ。もっと正確に言うのであれば、アウトドアに強く憧れるインドア派だ。
もちろん、キャンプ自体はやった事があるし嫌いではない。キャンプに行って皆で食べるバーベキューもカレーも最高である。
俺はやってないが、最近はソロキャンプなるものも流行っているし、動画なんかを見た事もある。一人で焚き火をながめながら飲むコーヒーや、スウェーデントーチとかで作るベーコンエッグの朝食とかにも、めっちゃ憧れはある。
ただ敷居が高い。道具を揃えたりもそうだが、自分でやる姿を想像すると失敗する未来しか見えない。
あと普通に小さいテントで一人で寝るのが怖い。
そんな俺の憧れや不安を全て払拭してくれる夢の乗り物、それがキャンピングカーだ。
ベッドがあり、トイレがあり、シャワーがあり、台所まである。もちろん冷暖房完備、これはもはや家である。
家ごと何処にでも移動できる。基本車中泊なので旅費も抑えられる。さらに地震などの災害がおきた時には避難場所にもなる。
家に居ながらにしてアウトドア生活をおくれる。それのなんと素晴らしいことか。
キャンピングカーには、様々な夢がギッシリとつまっているのだ!!
「……………………うん。まぁ、ガモンがそのキャンピングカー? をずっと欲しがっていたのは伝わってきたよ」
「…………すげぇ設備がついた馬車って事ですかい? ああいや、自走するんでやしたか? ちょいとよく分かりやせんが、そんなに良い物なんですかい?」
気がつけば、俺はキャンピングカーが表示されたリザルト画面を出したまま、ティムとバルタに熱弁を振るっていた。
いや、ウッカリだな。ずっと欲しいと思っていたキャンピングカーが実際に手に入るとなって熱くなりすぎたようだ。失敗失敗。
「…………キャンピングカーが実際にどれほど良い物かは、見れば解る筈だ。…………まあ、俺も実物に触れた事は無いけども」
「あんなに熱く語っておいて、知ってるだけですかい。そんなに縁遠い代物なんでやすか?」
「…………いや、買えもしないのに展示会とかディーラーに行くのは気が引けたと言うか、…………画像はネットでも見れるし、単にメンドクサかったと言うか…………。ま、まぁ取り敢えず、実物を見てみようじゃないか!!」
モゴモゴと言い訳を重ねる俺を見る二人の目が段々と冷たいものになっていったので、俺は会話を打ち切って先に進める事にした。
フフッ、キャンピングカー。しかも☆4クラッシュレアのぶっ壊れ性能か。どんな物が出て来るのか、ワクワクが止まらないぜ!!
「さあ! 出すぞ! 場所を空けろ!!」
「場所ならいっぱい空いてるだろ。興奮しすぎだよガモン」
「まぁまぁ、よほど嬉しいんでしょうから、好きにさせときましょうや」
テンションの高い俺を呆れた目で見る二人を脇に、俺は『◇キャンピングカー』を外に出した。
「うおおおおっ!! 本当にキャンピングカーだーーっ!!」
「うわっ!? なにコレ!?」
「な、何ですかいこりゃあ!?」
光と共に出て来たのは王道のキャンピングカー、それもフルコンバージョンだ。リーゼントのように屋根の部分が全面に出された長方形のキャンピングカーと言えば解ってもらえるだろうか。
これはね、高っっっいんだよ! 少なく見積もっても一千万以上、二千万にも余裕で届くほどにお高い物なのだ。
でも内装は広いし、ベッドやソファーはもちろん、台所にトイレにシャワーも完備されている正に動く家なのだ。俺はこれにずっと憧れがあったのだ!
「…………おぉ……、…………すっげ…………」
「…………これは鉄? でも、こんなに綺麗な流線型の鉄なんて…………。それに、こっちはガラス…………だよね? こんなに透明なのは見た事ないけど」
「車輪が太いですぜ、よく解んねぇもんが色々付いてる。…………なんだこりゃ? これ、本当に動くんですかい? 自走するってからゴーレムみたいな物を想像してやしたぜ」
「ああでも、鉄で出来てはいるみたいだけど結構薄い? あまり耐久力は無さそうだ」
「いやいや若様、コイツは旦那のスキルから出てきた物ですぜ。普通の感覚で考えちゃいけませんぜ。現にこの形を作れる程の人間がいるかどうかってのは怪しいですぜ。ドワーフにしたって、こんな物を作るのは骨でしょうぜ」
「…………確かにそうだね」
キャンピングカーの外側を堪能したあとは、いよいよ中を見る番だ。先ほど言ったように、俺もキャンピングカーの中に実際に入るのは初めてである。
きっと、このキャンピングカーという限られた空間を、これでもかと有効に使った機能的な内装をしているのだろう。もうワクワクが止まらないよね!
「よし、開けるぞ…………!」
「おお、なんだろ。ガモンじゃないけどドキドキしてきた…………」
「ええ、旦那にずいぶんと期待値を上げられやしたからね。それに、あっしらにとってコレは完全に未知のアイテムですからね。あっしも興奮してやすぜ」
全員の期待値がどんどん高まるのを感じながら、俺はキャンピングカーの住居部分の扉に手をかけた。
そして、扉を開けた俺の眼に飛び込んで来たのは!
…………かなり広めの玄関と、広々と奥まで続くリビングだった。…………アレ? これ、キャンピングカーだよな? 家じゃなくて。
『ようこそ、『◇キャンピングカー』へ。登録者を確認いたしますので、少々お待ちください』
「…………なんだコレ?」
☆4クラッシュレアのぶっ壊れ性能っぷりに驚いていると、どこから現れたのか、何やら金属で出来た丸い物体がフヨフヨと浮かんでいた。…………本当に、何だコレ?
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