428回目 神獣のイラつき
☆5『◇天空城『レナスティア』』の浮き島の一つである『鉱山の浮島』。
そこにドワーフを迎え入れるためにドワーフの里へとやって来たのだが、紹介状を書いてくれたアルジャーノンが、ドワーフの里で『ケガレ者』と呼ばれている者達を引き取りたいと手紙に書いていた為に、中々に厄介な事になっている。
瘴気に蝕まれ手足を失う程の状態に追い込まれたケガレ者達。体の深い所まで瘴気に侵されているためにエリクサーすら受け付けない彼らだが、アルジャーノンは俺のガチャアイテムがあれば、それすらも解決できると考えた訳だ。
ちなみに、当然の事ながらケガレ者についてはドワーフの里の秘密であり、外に出る者達にも『酒の神に誓わせる』と言うドワーフ最大の誓いによって、強く戒厳令を敷いている。
ドワーフは何よりも酒との繋がりが絶える事を恐れる。なのでこの戒厳令ひとつで、ドワーフが外に情報を漏らした、と言う可能性は消えたと言っていい。
ならば、アルジャーノンはどうやってこの情報を得たのか。そこに疑問を持った俺は『フレンド・チャット』を通じてアルジャーノンに聞いてみた。すると、どうやらアルジャーノンは、☆5『ワールドニュース・クラシック』を使って情報を集めていたようだ。
あの新聞紙、本当にヤバイよね。隠してある情報とか丸わかりだもの。これは確かに、敵が持ってるとなったら殺しに掛かるアイテムだ、秘匿しとこう。
◇
「…………て事になってな、今ドアルガン殿が『仙酒』を持ってその効果を確認しに行っている所だ」
「そのような事になっていたのですね。…………瘴気にそこまで侵される症状と言うのは教会にいても滅多に聞かない症例ですね。ドワーフがそんな事になっていると知る者は、外には居ないでしょうね」
「…………あの、これって俺が聞いてて良いやつですか?」
ドアルガン達の許しを得られて、シエラや『メガリス』の三人、それにコウハキン王子達を呼び寄せて、俺は現在の状況を説明した。
その話を聞いてシエラはドワーフの現状に心を痛め、コウハキンは聞いていい話だったのかと縮こまった。
「まあ大丈夫だろう、この地に関わる事だしお前達も立派な当事者だから。…………で、瘴気については『仙酒』があるからおそらく治る。多少時間が掛かるかも知れないけど、少しずつでも抜けていくだろう。瘴気さえ無くなれば、後は失った手足は『エリクサー』で治せるんだろ?」
「そうですね。その部分が長いあいだ無かったのなら完全に治らなかったり、リハビリが必要になるケースもありますが、治らないと言う事は無いと思います。その彼らを、『レナスティア』に受け入れるのですか?」
「それなんだけど。この現状、そのままにしといて良いと思うか?」
「…………神獣『ラーヴァゼタートル』の事ですね?」
「…………ヤバイよな、どう考えても」
今回の件で一番の大問題は、この地下に…………と言うか、この火山地帯そのものである神獣がイラついている事にある。それも瘴気を出す程に。
神獣『ラーヴァゼタートル』自体は巨大過ぎる程に超巨大なので、ドワーフの体を侵した瘴気も、神獣からしてみれば大した量では無いのかも知れない。
だが、事実として瘴気は出ているのだ。俺達が危惧するのは、このイライラの果てに神獣『ラーヴァゼタートル』が『幻獣』になりやしないかと、その一点である。
これ程の規模の神獣は、さぞかし力も強いだろう。何せ火山地帯が甲羅の表面なのだ。大自然と一体化している神獣が『幻獣』になったらなど、考えたくもない。
だが、単にここを離れろと言っても、ドワーフ達は頷かない。ドワーフ達を頷かせるには、ここと同等か、それ以上の場所が必要になるのだ。
「『鉱山の浮島』には、鉱石が取れるダンジョンがある。それに☆5『技巧神の大工房』も、ドワーフの技術を押し上げてくれるだろうとも思う。ただ、鉱石の取れるダンジョンってのが、どれ程の物が採取出来るのかも調べないといけない」
あの『鉱山の浮島』で鉱石が取れるのは知っているが、それはレティアからの情報で知っているだけだ。あの浮島の特殊オブジェクトである『火山』からも素材は取れるらしいが、それがどういう物なのかも俺達は知らない。
まあレティアに聞けば解るだろうし、そうでなかったとしても俺のスキル『ガチャ・マイスター』の中にある『マイスター・バー』のマスターから情報を買う手もある。だが…………。
「ガモン殿、それはやはりドワーフの誰かに直接調べてもらうのが良いのではないでしょうか」
アレスの言う通りだ。百聞は一見にしかず。どんなに真実っぽい情報を与えられても、やはり自分達の眼で確めるのには及ばない。やはりここは、自分達の眼で確めて貰うのが一番確実だろう。
俺は『仙酒』の効果を確認して、その効果の高さに興奮状態で戻って来たドアルガンを宥めると、『鉱山の浮島』の事を話して確認する者を出して貰う事にした。
ドアルガンも、このままではこの地のドワーフに先が無い事は承知しており、俺の提案に乗ってくれた。
そしてまず始めにドアルガンとその側近である兄弟の内二人が俺のフレンドとなり、『鉱山の浮島』を視察に来る事となったのである。
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