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424回目 ドワーフの暮らし

「あの船が飛空艇『アベルカイン』ですか。噂には聞いていましたが、本当に空を飛ぶ船があるとは、長生きはするもんですな」


「噂を聞いているんですか? 失礼ながら、ドワーフの里は閉鎖的と聞いていましたが…………」


「否定はしません。エルフ程ではないですが、我々ドワーフもその昔は人間に煮え湯を飲まされた歴史があります。その都度、各時代の勇者殿に救われてきましたが、ここ二百年近くは勇者殿の噂も聞いていませんでしたからね、慎重になっていたのですよ」



 ああなるほど。エルフは魔法が得意で見た目が美しいし、ドワーフは見た目を補って余りあるパワーと技術がある。


 どのファンタジーでも、人間に奴隷にされた過去はつきものだし、この世界でもそういった事があったのは想像に難くないな。



「しかしそれでも、街に商売には行きます。そこで聞く旬の話と言えば、勇者殿の話題でしたからね。空飛ぶ船に空飛ぶ大陸。眉唾と思っておりましたが、百聞は一見にしかずですな」


「…………俺の国の言葉にも随分とお詳しいようで」


「我が家計(家系)には、勇者の血も混ざっておりますので。その母国の事も多く伝わっているのですよ。…………空を飛ぶ物の形は、大きく違うようですがね」


「…………飛行機と飛空艇は大分開きがありますから、俺のはスキルの力が大きいと捉えてください」


「なるほど。…………ときに、勇者殿はこの里に入られる際に『アルジャーノンの手順』を使ったと聞いていますが、アルジャーノン様とどの様な繋がりがあるのか教えていただけますか?」



 アルジャーノンの名前を出した瞬間、ドッキーノとその後ろに控える二人のドワーフが少し緊張したのが解った。


 緊張と言うか、警戒? 俺がどう答えるのかを注意深く探っているような感じがする。それに呼応してなのかアレスもまた、俺の近くに場所を移した。



「…………えっと、取り敢えずこれアルジャーノンからの紹介状です」


「アルジャーノン様の紹介状!?」



 俺から受け取った紹介状をマジマジと見るドッキーノ。後ろの二人も驚愕の表情でドッキーノの肩越しに覗き込んでいる。



「……………………」


「…………あの、開けて見ないんですか?」


「…………私には、この封蝋を開ける権限がありません」



 アルジャーノンの手紙は封筒に入れられ、しっかりと封蝋がしてあった。封蝋ってのは、封筒の口に溶けた蝋を垂らして家紋とかスタンプした物だ。まあ俺も、アルジャーノンがそれをやっているのを見て初めて知ったんだけど。



「これを開けられるのは里長だけです。里長の所に案内しますので、手紙は里長に直接渡して下さい」



 そんの訳で、俺達は里長の所に案内される事になった。


 だが、警戒のためか里長の所に行けるのは三人だけと絞られた。なのでここは、俺とアレスにドール騎士の三人で行く事になった。他の皆は、呼ばれるまでここで…………と言うか、この近くにある建物で待機である。



「では、しっかりとついて来て下さい。多少、入り組んでいますので」



 そう言って先に進むドッキーノ達に続いて、俺達もドワーフの洞窟の中に入って行く。


 洞窟の中はまず薄暗い階段になっており、そこをひたすら降りる。そして下へ下へと降りていくと、ある時から金属を叩く音が聞こえ始め、それからザワザワと言う喧騒が聞こえて来た。


 そして、階段の先に明かりが見えて来ると、その先は広大なドーム状のホールとなっており、その中には丸々一つの街が存在していた。



「うおおぉぉ…………。地下世界…………」



 洞窟の中なのにそのホールは明るい。その光源はと言うと、天井で渦巻く球体になっている溶岩だ。


 どういう原理なのかサッパリだが、天井の一部から流れた数本の溶岩が渦巻く球体へと注がれて、更に反対側から数本の流れとなって出ると、また天井の中へと流れていた。


 と言うか、街の中にも溶岩の流れる水路のような物がある。なんだここ? 至る所に溶岩が流れているのに暑さは感じないし、街に住んでいる人々もその溶岩の水路を平然と受け入れている。



「ここがドワーフの里です。外の人にはあの溶岩が気になるらしいですが、あれは結界によってしっかりと封をしてあるので心配ありません」



 心配ありません。って、いやいや心配ですよ? だって頭の上に溶岩があるんだよ? あんなの頭から被ったら死んじゃうぞ?


 とは言え、ドワーフ達はこの環境で普通に暮らしていた。地面に流れる溶岩の水路にも結界の蓋がしてあるらしく、その上で跳び跳ねてなんとか結界を割ろうとチャレンジしている子供までいた。危ないからやめなさい。



「ドッキーノ殿。街の向こうに見えるのは、もしかして畑ですか?」


「ええそうです。と言っても、ドワーフはその食料のほとんどを他国で買って来た物で賄っていますから、あれは食べる為のものでは無いのですよ。あの畑で取れる物は酒の原料です。ドワーフとは、酒に目がありませんので」



 そこはイメージ通りだな。などと考えながら歩いていると、ついに階段が終わり地面へと降り立った。


 ドワーフの里。いや、ドワーフの街は、とても活気に満ちていた。

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