423回目 ドワーフの里に降り立つ
ドワーフの里は建造物が少なくて飛空艇も停めやすい。とは言え、このドワーフの里は線路らしき物もあるし、地下にも空洞があるらしいので、『アベルカイン』は少し浮いた状態で待機させる事になった。
俺や俺の仲間達は、それぞれ自分の『ジュエルドラゴン』や、『アベルカイン』の小型飛空艇で地上へと降りる。ちなみに俺は、自分のジュエルドラゴンである『グラック』に乗って降りた。
『クアアァッ!』
「よしよしグラック! このまま下に降りてくれ」
グラックの乗り心地はちょっとゴツゴツしているが悪くはない。俺が乗れるようにか、背中の一部が鞍のようにへこんでいるからだ。これなら、新たに鞍を付けなくても乗っていられそうだ。
しかし、隣を飛ぶアレスみたいに乗りこなせているかと言うと、それはまだだ。アレスは人馬一体ならぬ人竜一体となって乗りこなしている。
その後ろにいるシエラや『メガリス』の三人は雲に手足が生えたような見た目の『モックン』にまとめて乗っているのでドラゴンナイトって感じではないが、謎の威圧感はあるな。結構コミカルな見た目なのに不思議だ。
そして、俺達について来たコウハキン王子とその護衛達は、ボートのような小型飛空艇に乗って地上へと降りた。
ただ、コウハキン達はボートタイプの飛空艇が怖いのか、ボートにしがみつく形で降りていた。まあ慣れないと怖いだろうな。こんなんで飛ぶの? 落ちない? って不安になるのは解る気がする。
「ふぅぅ…………。大丈夫ですか、王子?」
「あ、ああ。大丈夫だ。ダイキョ達も問題ないか?」
「ハッ、筋肉は無事です!」
誰が筋肉の話をしているのか。コウハキンの護衛として付いて来た者達は、皆ムキムキしているのだが、その隊長である『ダイキョ=ウーキン』とか言う名前の将軍がヤバイ。
もう名は体を表すとか、脳筋とかではなく、これはただの筋肉だ。だって何を聞いても筋肉で返って来るんだもの。話が通じているのかも疑わしい時がある。
「そ、そうか? 筋肉が無事なら、大丈夫かな…………」
「ハイ! 鍛えていますから!」
その原因は、それを受け入れてしまっているコウハキンにもあると思う。まあ、悪い奴ではないんだけども。
「しかし凄い熱気と臭いだな。これで抑えられているってんだから凄いよな」
火山地帯の真ん中、それも溶岩の大河に囲まれた場所にあるドワーフの里は、熱気も火山特有の硫黄臭もとんでもない。それこそ、一呼吸で死んでしまう程の毒になっている場所もあるくらいで危険極まりない。
ここに住むドワーフは耐性をもっているらしいが、それでも住み難い事は確かなので、この一帯には火山の熱と臭気を防ぐ為の結界が張ってある。
ちょうど飛空艇『アベルカイン』が浮いている辺りが、その結界のギリギリ内側である。
まあ臭いはその内慣れるだろう。…………それはともかく、ここがドワーフの里か。
一見すれば何もない、あるとしても道路と線路くらいの場所だが、その道路の先は岩に空いた洞窟などに繋がっている。
赤く隆起した幾つもの岩は全てが何かの入口であり、この里の本来の姿は恐らく地下に広がっているのだろう。
今の所、一番目立っているのは溶岩の大河だな。ドロドロの溶岩が結構なスピードで流れる様子は圧巻だ。
この光景は中々見られる物じゃない。ティアナにも見せてやりたいな。今回ティアナはレクターの手伝いをする為に付いて来られなかったからな。
「ガモン殿。もしかして、この光景をティアナ殿にも見せたいと考えていますか?」
「ん? よく解ったなアレス。顔にでも出てたか?」
「いえ、俺もちょうどフラウスに見せてやりたいと考えていましたので、ひょっとしてと思いまして」
婚約者を持つ者同士、受け答えにちょっと惚気が入ってしまった。昔の俺なら砂糖吐いてる所だ。そうじゃなくても、こんなのを人に知られたら爆発させられてしまいそうだ。
『マスター、ドワーフの里から出迎えが来ました』
幸い、俺達の近くにいたのは小型飛空艇を操縦して来て、そのまま俺達のサポートとして残ったドール騎士だけだったので爆発させられる心配はないが、お遊びはここまでのようだ。
ドール騎士に促された方を見る。すると確かに洞窟の一つから、ずんぐりとした男が数人歩いて来るのが見えた。
身長は俺達の半分くらいだが、腕と足の太さは俺達の倍はありそうだ。三人の内二人は、モジャモジャの髭もしており、いかにも『ドワーフ』といった姿をしていた。
だが、その二人の前に立つドワーフは少し違った。体の大きさはドワーフなのだが、髪はオールバックに固めて前にひと房だけ垂らし、髭はカイゼル髭をピョンと整えて、片目にモノクルを嵌めて服装はカッチリとした商人のような、スーツに近い物を着ていた。
「噂の勇者殿とお見受け致します。私はこの里の長の一族が末弟、『ドッキーノ』と申します。以後お見知りおきを」
「あ、はい。勇者のガモン=センバです。はじめまして」
ドワーフの里は、初っぱなからやたらと濃いドワーフを出して来ました。
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