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410回目 始まりの場所

 マーメイド族が『レナスティア』にやって来て数日がたった。


 マーメイド族が移住した『海湖の浮島』は、マーメイドの天敵となるモンスターもいないし、十分過ぎる広さもあるので、評判は上々である。


 族長であるヒョルスウィーンも、すっかり仲間達の中で人気者となっており、まるでマスコットのような扱いである。


 今日もシエラと『メガリス』の三人が、ヒョルスウィーンの所にケーキやお菓子を持って遊びに行っている。何でもケーキとかを一生懸命食べている姿がとても可愛いとかで、可愛がられている。


 そんな中で、俺はカラーズカ侯爵…………。いや、もうカラーズカ王と呼んだ方がいいか。テルゲン王国のカラーズカ王に呼ばれて、テルゲン王国の王城へと来ていた。



「…………やっぱり良い気分はしないな。まぁ、気が滅入るって程でもないんだけどな」


「ガモン殿は召喚された勇者だとは聞いていましたが、謁見の間で召喚されていたのですか」


「ああ、まだ覚えてるよ。あの玉座から『バウワウ=ヌメヌメ』が偉そうに俺を見下していた」


「『バウワウニー=ヌヌメルメ』ですね」


「…………どうでもいいよ」



 …………テルゲン王国の王城内にある『謁見の間』。ここに来るのは召喚された時以来だ。


 断っておくが、別にここに通された訳ではない。俺がアレスを連れて勝手に来たのだ。


 この王城はヌヌメルメ王家によって贅沢に造られており、奴らや貴族達が逃げ出した時に持って行けなかった高価な物も沢山残っている。


 カラーズカ王は、それらの高価な物は全て売り払い、この城は大きく改修するらしい。ヌヌメルメ王家の政策は民にとっては酷い物だったので、この際にそれらに関わる物はこの国から無くし、貴族や役人からも、不正を当たり前のようにしていた者達は全員捕らえるように厳命している。


 この国の黒い部分を全て取り払うつもりで、カラーズカ王は行動を開始した。財を売り払って得た金は、悪政を耐えてきた民に還元し、名実共に「王家が変わった」事を民に印象づけるそうだ。


 その為、この『謁見の間』も取り壊される事が決定しており、最後だからと俺も一度見に来たのだ。



「ここに居られましたか。ガモン殿、探しましたよ」


「あ、フラウス隊長。どうも」


「……………………!!」


「あまりフラフラ動かないで下さい。今は色々と立て込んでいるので、私も忙しいのですよ」


「…………すいません」



 今日は書類仕事でもしていたのか、少し女性らしさを感じる男装で、フラウス小隊の隊長であるフラウスがやって来た。


 なんか、フラウスを見た瞬間にアレスがビクッとした気がするが、何か気になる事でもあっただろうか? 横目で見るとアレスはフラウスを見ているので、少し警戒でもしているのかも知れない。強い奴は相手の強さも解ると言うヤツかもな。



「そちらの方は、はじめましてですね」


「紹介しますよ、俺のパーティーメンバーの一人で…………」


「アレスと言います。はじめまして」


「アレス殿ですね。私はフラウスと言います。この度、『白華騎士団』の団長を命じられました。お見知りおきを」



 どうやらフラウスは出世したらしい。カラーズカ王が新たに設立した騎士団、その一つの団長として任じられたようだ。


 元のフラウス小隊のメンバーは、その『白華騎士団』の部隊長としてついたらしく、丸々出世した形だ。



「おおーーっ! おめでとう!」


「おめでとうございます」


「ありがとうございます。慣れない立場なのでまだ苦労はしていますが、嬉しいですよ。これもガモン殿のガチャ装備やガチャアイテムのおかげですね」


「それはフラウス隊長の…………いや、フラウス団長の努力の結果ですよ」


「努力を否定などしませんが、ガモン殿の与えてくれた物の力も大きいのですよ。そのおかげで立てられた手柄が幾つかありますからね」



 いやーー、相変わらずイケメンだなフラウスは。女性にイケメンは失礼かも知れないけど。


 それからも少しだけ話し込んでしまったが、どうもカラーズカ王が俺を待っているらしいので、俺達はカラーズカ王が待つ屋敷へと向かう事にした。


 俺が最初にお世話になったカラーズカ侯爵邸…………だったら良かったのだが、そこは内乱をしている間に略奪され、火を掛けられて焼失してしまったらしく、別の屋敷だ。


 今はそこがカラーズカ王家の仮の住居だ。王城の改修が終わるまでは、そのままで過ごすらしい。王様なんだからそれじゃあマズイ気もするが、悪政と内乱で疲弊の極致にある民に、新たな王が贅沢をしている姿は見せられないそうだ。


 不幸中の幸いにも今は冬。近隣の国からも人は中々やって来られないので、外の目を気にしなくていいってのも、理由としてはあるようだ。


 まぁともかくとして、カラーズカ王の待つ屋敷へと着いた俺は、待っていた執事に案内されて、一人でカラーズカ王と会う事になった。カラーズカ王が、一対一での会談を望んだ為に、アレスには一度外して貰う事になった。


 この屋敷にはシエラとカーネリア、そして当然ティアナも居るので、皆と一緒に待っていて貰おう。


 そして、カラーズカ王の待っていた執務室で、俺がカラーズカ王とテーブルを挟んだ向かい側のソファーに座って、軽い挨拶を交わして用意されていた紅茶を口に含んだタイミングで、カラーズカ王はとんでもない爆弾を放り込んで来た。



「ガモン。ティアナと婚約する気はないか?」


「ブブゥーーッ!?」



 …………いや吹き出すよね、それは。

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― 新着の感想 ―
[一言] いやまあ、立国の英雄、スタンピード制圧者、魔王殺し、無尽の食料庫、煌く宝物庫 を娘一人(、しかも恋仲)で繋ぎ止められるなら誰だってそうする
[一言] カラーズカ王「え?」 読者「え?」 見てる神様たち「え?」 さすがに皆こんな顔になってるやろ!w ガモンの鈍感に吹き出すわい
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