409回目 マーメイド族の移住
マーメイド族が用意していた席に座り、テーブルを挟んでマーメイド族の族長であるヒョルスウィーンと向かい合った。
テーブルの向こう側では、顔を真っ赤にして縮こまったヒョルスウィーンが、もじもじしていた。
「…………大変、お見苦しい所をお見せしました」
「いや、大丈夫ですよ。むしろ人となりが良く解ったので。仲良いですね」
「ぅぅぅ…………」
フォローしたつもりだったがヒョルスウィーンは更に赤くなって縮こまってしまった。別にからかったつもりは無かったんだけど。
族長がこんな調子なので、会談は終始微笑ましく進んだ。
いやぁ可愛いなこの子。ティアナなんか頭でも撫でたいのか抱きつきたいのか、手をワキワキさせていた。ヒョルスウィーンは護りたくなるよね、なんか。
会談の結果、北のマーメイド族は☆5『◇天空城『レナスティア』』で保護する、と言うか『レナスティア』に住んで貰う事になった。『海湖の浮島』で生活しながら、ダンジョンの素材や特殊地形である『海溝』の素材を入手して貰うのだ。
「取り敢えず、ヒョルスウィーン殿には俺と『フレンド』になって貰います。信用できる従者や騎士がいるなら推薦してください。その人とも『フレンド』になりますので」
「フレンド…………?」
首を傾げるヒョルスウィーンにフレンドの説明をすると、目を丸くして驚いていた。特に護衛の二人は、何時でもヒョルスウィーンや仲間達と連絡を取れると言う所に食いついた。
「そ、それが本当なら物凄いスキルです! 勇者殿! それは何人でも良いのですか!?」
「…………取り敢えず十人くらいにしておいて下さい。それとフレンドは、俺の一存で即解除できるので、そのつもりで選んで下さい」
「十人ですね。族長、この十人は慎重に選びましょう!」
「わかっています。が、今はガモン殿の説明を聞きましょう。ガモン殿、我々が保護して貰う『浮島』について聞いても良いですか? 我々の集落には三百名ほどのマーメイドがいるのですが、全員が移住出来るのでしょうか?」
「その辺りは俺よりも『レナスティア』本人に聞いた方が良いでしょう。レティア、説明を頼む」
『かしこまりました』
俺の服の内側から出て来た『喋るキューブ』に、ヒョルスウィーン達が僅かに身構えた。彼女達からしたら見慣れぬ存在だから、身構えるのも仕方ないだろう。
『はじめまして、マーメイドの若き族長殿。私は☆5『◇天空城『レナスティア』』の管理AI『レティア』です。質問にお答えしましょう』
「…………はっ、はじめまして…………!」
突然の謎物体にヒョルスウィーンが少々怯えているが、すぐに慣れるだろう。
☆5『◇天空城『レナスティア』』の浮島の一つ『海湖の浮島』。それはマーメイドや魚人達が暮らす事に特化した浮島である。
多くの海人族が暮らせるように、かなりの広さと深さをもっており、三百名どころか万単位でも暮らしていける浮島だ。
代表者としてヒョルスウィーンがフレンドになっており、更に俺とレティアの許可があれば、その一族たる北のマーメイド族全員がフレンドになる事なく『海湖の浮島』に移住できる。
ただしこの場合、フレンドになっていない物は『海湖の浮島』以外の島に渡る事は出来ず、当然ほかの場所に繋がる転移装置も使う事はできない。
そして『海湖の浮島』にある設備だが、これはガチャ・ポイントを使う事で様々な施設を用意できる。
水中の街すらも、簡単に作成できるのだ。…………ガチャ・ポイントはかなり掛かるけども。
その他にも水上に新たな島を作る事も出来るし、水上都市だって造ろうと思えば造れる。今はガチャ・ポイントが少なくて無理だが、そこは金さえあればクリア出来る問題だ。…………金さえあれば!
「……………………凄いですね、まさに想像以上の場所です。そこならマーメイド族の全員が暮らしていけます!」
レティアが空中に投影する映像も交えながら説明をしたので、『海湖の浮島』はマーメイド族に移住先として受け入れられた。
あの『海湖の浮島』にあるダンジョンや『海溝』でどんなアイテムが手に入るのかは解らないが、ヒョルスウィーン達の活躍に期待したい所だ。
そして、ヒョルスウィーン達の移住時期については、直ぐにでも、との事だったので、ここは☆5『龍神の星籠』にマーメイド族をまとめて収納して、『海湖の浮島』まで行く事にした。
さすがに得体の知れない☆5『龍神の星籠』に入るのはマーメイド族も不安がったが、ヒョルスウィーンが見事に全員を説得してまとめ上げてくれたので、移動は比較的スムーズに行われた。
幼く見えてもヒョルスウィーンは族長だ。若いからといって同族に侮られたりはしていない様だ。俺も少し見直した。
かくして、☆5『◇天空城『レナスティア』』に、最初の移住者がやって来た。
これによって、彼らが住んでいる間は『レナスティア』をスキル倉庫に収納する事は出来なくなった。
まぁ、いざとなれば亜空間に逃げ込めるから、大した痛手でもないだろう。
とにかく、これで浮島の一つは動き始めた。次はエルフかドワーフか。どちらを先に迎えにいくか、考えるとしよう。
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