401回目 木漏れ日の散策
木漏れ日で明るくて美しい森の中を、歩いていく。良い感じに腐葉土や枯れ草が絨毯になっているし、先程は可愛いリスが木を走って登るのも見てホッコリした。
素晴らしきかな森林浴。心が洗われるようだ。
しかし、俺としては「森林浴なんて久し振りだな、ヘタしたら子供の頃以来かも知れない」程度の認識なのだが、この世界の住人にとっては違う。
危険な動物もモンスターもいない、それこそゴブリンやコボルトすら居ない森なんて、存在しないと思っているような世界だ。全く気がねなく歩ける森と言うのはとても貴重な体験であり、俺の前を歩くティアナとリメイアはとてもハシャイでいた。
そして後ろを振り返ると、護衛としてついて来たアルグレゴ小隊や、久し振りの父親との対面で「一緒に行きたい!」と可愛いワガママを言ったアリアやアラムも、母親であるアレマーと手を繋いで楽しそうにしている。その様子はとても微笑ましい。微笑ましくてホッコリする良い光景なのだが。
…………俺としてはティアナとのちょっとしたデートのつもりだったのに、どうしてこうなったのか。
いやまぁ、ラグラフ王国のスタンピード騒動が片付いて、その報告ついでにリメイアが遊びに来た時点で、もう詰まれていた訳だけど。
それに、今回の事ではリメイアやアルグレゴ小隊にはとても助けられたし、アルグレゴ小隊には死者こそ出なかったが重傷者はかなりいた。それを褒賞も無しにエリクサーで治療して終わりは無い。
だが彼らに望みを聞いたら、褒美などはこの装備ですでに貰っているから必要ない。それよりも自分達もクランに所属させてほしい! などと言って来た。ちなみにこれは、彼らの雇い主であるターミナルス辺境伯も承知していた。むしろ「彼らの望みだ、存分に役に立ててくれ」と手紙も貰っている。
わざわざ『フレンド・チャット』ではなく手紙なところに、ターミナルス辺境伯の本気を感じた。
そんな訳で、アルグレゴ小隊は正式にクラン『G・マイスター』の所属となった。彼らの初仕事が、リメイアの提案でこの森林浴の護衛となったのだ。…………息抜きだよね、これ?
◇
「…………で、これが『世界樹』か? あまり凄さを感じないな…………」
森の中心地。遺跡の隣にあった森の中の広場の中心に、それはあった。まだ背が低く、俺の膝上くらいまでしかない若木だ。
俺の呼び掛けで姿を見せたレティアによると、この目の前の若木が、『世界樹の若木』で間違いないようだ。
『まだ若木の状態ですからね。しっかりと成長すれば、とても神々しい存在となり、マスターが求める素材も大量に手に入るようになるでしょう』
「でも、その為に必要なのが一億ガチャポイント、だろ? エリクサーでさえ十万ガチャポイントも出せば買えるんだぞ? 一億ガチャポイントって言ったらエリクサーが千本買えちゃうぞ?」
果たして『世界樹の若木』にそれだけの価値があるのか? いやまぁ、あるんだろうけど。それでも俺は二の足を踏んでいた。
何せ一億だからな。そのポイントを稼ぐのにいったい幾ら必要になるのか。それは割りとマジメに気になっている。金って無限じゃないんだよ。
『金銭的な問題でしたら、大幅に緩和する方法があります』
「聞こうじゃないか」
『『世界樹』の世話をするエルフを雇い入れる事です。エルフの『世界樹』に対する信仰心と、あの膨大な魔力があれば、『世界樹』をある程度まで成長させれば少量ずつですが素材が手に入るでしょう』
レティアの言う事を具体的な数字に直すと、素材を得る為に一億ポイント必要だった所が、三千万ポイントくらいで済む訳だ。七割減、とってもお得である。
と言うか、この森と遺跡の浮島だけでなく、他の浮島にも、こう言う特別な素材が採れる場所があるのだと言う。
それは『火山』と『海溝』である。そこを活用するにはそれぞれ一億ポイント必要であり、それを割引させるには『ドワーフ』と『マーメイド』の協力が必要であるそうだ。
エルフにドワーフときてマーメイドまで加わった。ようは人魚だな。…………魚人と人魚は違うんだっけ? まぁ良くは解らんけど、マーメイドがエルフやドワーフに並ぶ海の精霊族なのだろう。
マーメイドの事は取り敢えず置いといて、エルフとドワーフの仲間は欲しい。『世界樹』や『火山』の素材だけでなく、☆5『技巧神の大工房』に必要と言う意味でも、ストーリークエスト的にも欲しい。
その両方の種族との橋渡しになり得るアルジャーノンから紹介状も貰っている事だし、アルジャーノンに聞いたので、その両種族のいる場所も知っている。
よし、決めた。エルフとドワーフを仲間にしに行こう! まずはエルフからだ!!
…………と、俺はそんな風に決めた筈だったのだが、運命ってのは本当によく解らないものだ。
先に言ってしまうと、俺が最初に仲間にした精霊族はエルフでもドワーフでもなく『マーメイド』だった。
海に住まう精霊族たる『マーメイド』の一団が、俺の所に保護を求めてやって来たのだ。
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