40回目 緊急クエストの完了
俺達の…………、ではなくバルタの活躍により、オークキングとシャドウウルフが率いていた群れは完膚なきまでに壊滅した。
いや、一応は俺達も戦いはしたのだが、虐殺の暴風となって暴れまわるバルタに恐れをなして逃げ出したオークが相手だったので、ほとんど作業だったのだ。泡吹いて逃げ惑うオークを盾で転ばして矢を撃ち込むという作業。あれは戦いじゃないと思う。
そして俺達は、戦いの後始末として剥ぎ取れる素材を剥ぎ取りと、まともな素材が取れない死体の始末をしていた。
もちろんこれは俺とティムで行う。呪われた武器を使った反動で疲労困憊のバルタには、周囲の警戒をしつつ休んで貰っている。
ちなみにシャドウウルフとフォレストウルフの素材は魔石と毛皮。オークキングとオークは、皮や肉に脂に魔石などと使える部分が多いのだが、今回は数が数なので基本的にはティムの持つマジックバッグに入れていくだけの作業だ。
ティムの持っている高性能のマジックバッグなら、内部の時間が止まっているため、素材が痛む事なく運べるのだ。実に便利な代物だが、当然と言うかお高いそうだ。ダンジョンで見つけたならば、内容量にもよるが、それ一つ売るだけで一生遊んで暮らせるくらいの金が手に入るらしい。
ちなみに、オークの肉は食えるそうだが好んで食べる物ではないらしい。オークは雑食なので、時期や年齢によって肉に臭みがある事が理由らしい。…………人型ってのが理由じゃない辺りに、世界の隔たりを感じるよね。普通にジビエ扱いなのか、オーク。
「ところでガモン、クエストの確認はしたか?」
「ああ、さっきな。ちゃんと緊急クエストはクリアしていたから大丈夫だ。報酬も手に入ったしな」
報酬は『☆4クラッシュレア確定! ガチャチケット』。どんな物なのかはさっぱりだが、俺の『ガチャ・マイスター』の性能を考えるに、良い物が手に入るのは間違いないと思う。だって、緊急クエストの報酬だもの。…………まぁ、俺自身が活躍していないのが心苦しいけども。
「クラッシュレアだっけ? どういう物か分からないけど、なんか凄そうだ」
「おう。何が出るか楽しみにしておこうぜ!」
クラッシュレアについては確かに気になるが、その前にやる事をとっとと終わらせる事にした。まだ余裕があるとは言え、グズグズしていては日が落ちるからな。まずはこの森を抜けてしまいたいのだ。
俺達はその場の後始末を終えると、村への土産に草食モンスターを何匹か狩ってから森を出た。
そして村へと着いてすぐにモンスター狩りが無事に終わった事を村長に報告し、手土産の草食モンスターを渡した。これには口止めの意味あいもある。
「なんと…………。オークがそんなに潜んでおったのですか。それにフォレストウルフまで狩って来てくれたとは、村を代表してお礼を申し上げます」
「いや、構わない。領地は違うが、民の生活を護るのは貴族の務めだ。しかし、礼をと言うならば、今回の事はここの領主殿には内密で頼む。何せ勝手にモンスター狩りを行ったからな、揉め事にはしたくない」
「かしこまりました。ではせめて、村で作っている作物をお贈りさせて下され。貴族様方が来られなければ、村に大きな被害が出ていたかも知れぬのです。それくらいはさせて下され」
「申し出、ありがたく受け取ろう。必要であれば、オークやフォレストウルフを数体置いていこうか? オークのほうは解体もしていないから、手は必要だがな」
「それはありがたい、ぜひお願い致します。オーク肉は燻製や干し肉に出来るのでありがたいです」
その後、村長の号令によって集められた村人の手によって、ティムが村に譲ったオークが解体され、そのお礼に俺達が拠点とした教会前の広場で、ちょっとした宴が開かれた。
村人が野菜やキノコと、村で飼育している家畜の肉を持ち寄りバーベキューを始め、ティムは馬車のアイテムボックスから酒を出してふるまった。
酒の量はあまり多くなかったのだが、村人は貴族が飲む酒を飲めるとあって大盛り上がりだった。
そして俺は俺で、ガチャから出ていたアイテムの『花火セット』を余興に取り出す。手持ちの花火だけでなく、噴射花火に打ち上げ花火まで取り揃えたセットが生活ガチャから幾つか出ていたのだ。
目的の街についたらティムに見せてやろうと思っていたんだが、これはこれで良い機会だ。村の子供達にやらせてやろう。
「ガモン兄ちゃん、なにそれ?」
「あたらしいお菓子?」
「おいしいやつ?」
俺が花火セットと取り出すと群がって来る村の子供達。さっきまた駄菓子を食わせてやったから、これもその一種だと思ったらしい。
「いや、これは食えないぞ。でもすごく良い物だ」
「えーー、食えないの?」
「食えないのに良いものなの?」
「おいしくないのに?」
…………こいつらの基準は食えるか食えないかしかないのか。フッ、まぁいい。ド肝抜いてやる。
日も落ちて来て、空も良い感じに暗くなってきた。魔法で明かりを出せる者が少ないこの村では、夜は早めに寝るのが基本で、宴もそろそろお開きの雰囲気になってきた。…………花火をやるには、良い頃合いだ。
俺は手始めにティムと子供達に手持ちの花火を持たせ、ガチャから出てきた『チャッカマン』でそれらの先端に火をつけていった。…………ああ、万が一の水の準備なら、村人に頼んで水桶を持って来て貰ってるから万全だぞ?
そして、ティムや子供達の持つ花火が、勢いよく光を撒き散らし始めた。
「うわぁーー! キレーーイ! なにこれーー!!」
「すごいすごい!」
「なんかこれパチパチいってる!!」
初めての花火に興奮する子供達の声に、村人達も集まってきた。
「ガモン、これってもしかして花火?」
「お? 知ってるのか」
「いや、こんなのは初めて見たけど、打ち上げるやつなら王都で何度か見た事があるんだ」
「ええ、打ち上げ花火ならあっしも見た事がありやすが、ありゃ大掛かりなもんですぜ? こんな小さなもんは、初めて見やしたぜ」
「なら、小さいけど打ち上げと噴射もやっとくか。バルタ、これをセットして火をつけてくれ。勢いよく噴射するから、すぐに離れろよ?」
「この導火線に火をつけるんでやすね? 任せてくだせぇ!」
この日の花火は、ソエナ村の人々を大いに楽しませた。村人達は様々な手持ち花火や、大きく噴射する花火に目を奪われ、空に花を咲かせる打ち上げ花火に驚き拍手をしていた。
全てが終わった後で、あんなに騒いではモンスターを呼び寄せる可能性がある事を村長にチクリと言われたが、緊急クエストの終わりを祝う花火大会は概ね大成功で終わったのだった。
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