393回目 幻獣戦・変化する戦い
魔力を吸収する器官を全て失ったブレイドロックドラゴンに、異変が起きた。その身体をブルブルを震わせながら、身を小さく屈めていったのだ。
その姿を捉えた『トライフォース』の眼には、ブレイドロックドラゴンの体内にある魔力が圧縮され、周囲の大気までもが引き寄せられている様子が映された。
…………どう考えてもこれは、爆発するヤツだろ。
『離れろ! 全員下がって防御態勢を取れ!! 爆発するぞ!!』
☆5『機動鎧『トライフォース』』の機動武装を『ホーク』に変えて空に飛び上がり、全員に退避を伝える。唯一動けないシエラの元には、既にバルタを送っている。バルタの手には☆5『七星の盾』があるので、どんな攻撃が来たとしても防げる筈だ。
そして、自身の限界まで身体を縮めたブレイドロックドラゴンの身体に亀裂が走り、その亀裂から瘴気が吹き出すと、ブレイドロックドラゴンは一気に爆散した!!
『うおおおおっ!!??』
空にいた俺は爆風に翻弄されながらも、何とか飛んで来た物を弾き落とす。
大剣の様な鱗や、まるで礫の様な身体の欠片が撒き散らかされ、さらに大量の瘴気が爆風と爆炎を共なって広範囲に飛んでいく。
瘴気の濃度が高いのか、瘴気にあてられた草木は一瞬で茶色くなり、カサカサになって枯れ果てていくのも見えた。
そして同時に、俺達全員に向けて亜空間から水がぶっかけられる。…………いや違う。かけられたのは甘い匂いの酒だ。かけられたのは☆5『桃源の酒泉』の『仙酒』だろう。
わざわざ何でこんな事をと思ったが、仲間を見れば数人がその場で膝をついていた。俺は仲間達が濃度の高い瘴気にやられたのだと理解し、レティアのファインプレーに心の中で称賛を送った。
膝をついた仲間達も『仙酒』を浴びた事で動ける様になり、治癒が使える者や、『回復の弾丸(+4)』が使えるバルタやティアナは、仲間に向けてスリングショットや弓矢を撃っていた。
…………端から見ると酷い光景だな。ティアナの『回復の弾丸(+4)』なんて矢の形状で突き刺さるから、それを受けたザッパやベベントが混乱している。…………あ、倒れてケツに刺さった。痛みとかは無い筈だけど、精神的にキツイな。
「…………はっ!? ガモン様!! ブレイドロックドラゴンに逃げられました!!」
『なに!? 神罰の鎖を抜け出したのか!? どうやって!?』
シエラの言葉に爆炎を見ると、黒い流線形の物が爆炎から飛び出すのが見えた。それは真っ黒なツルリとした姿のトカゲで、地面に降り立つとソイツはトカゲながら二本足で立って見せた。
「逃がすかぁーー!!」
そのトカゲの一番近くにいたネリスが、ハーフフットの小柄な身体には似つかわしくない巨大な戦斧を、そのトカゲに向けて振り下ろすが、トカゲの背中に当たった送って戦斧は、ギャリギャリと火花を散らして滑るように外された。
『ブレイドロックドラゴンなのか!?』
それは、二回り程度小さい姿になったブレイドロックドラゴンだった、大剣の様な鱗に包まれ、鋭くもゴツゴツしていた見た目はツルリとした物に変わり、しかしその身体の表面は剣のような硬さと鋭さを持つ鱗にビッシリと覆われている。
言わば『第二形態』か? そんなゲームのボス敵みたいな機能を持っているのか? 幻獣ってやつは。それとも単純に『脱皮』か? それにしてはえらい物騒だったがな。
ブレイドロックドラゴンが攻撃してきたネリスに眼をやり、その細くなった尻尾に変化が起きる。尻尾の先の鱗だけが、大剣の様にデカく鋭くなったのだ。
その狙いは、もちろんネリスだ!
『ネリス! 尻尾だ!!』
「…………ぅあっ!?」
戦斧を思いきり振りきった後だからか、ネリスにはブレイドロックドラゴンの尻尾を躱す余裕が無かった。
このままではネリスがあの鋭い尻尾に貫かれてしまう! そう解っていても、俺とネリスの間には距離があり、さらに周囲の仲間達も助けるには遠かった。
ネリスが殺られる! そう思った瞬間、ブレイドロックドラゴンの尻尾に氷の矢が当たり、その方向を僅かに逸らした!!
そして空を飛んで駆けつけたアレスが、ブレイドロックドラゴンを攻撃して弾き飛ばす!
『間に合った!! さっきの矢は…………ティアナか!!』
俺が視線を向けると、ティアナはブレイドロックドラゴン目掛けて氷の矢を乱射していた。そしてアレスも、『白雷獣の剣』から巨大な稲妻を出して、ブレイドロックドラゴンを地面に深くめり込ませた。
「シエラ! もう一度拘束を!!」
「はい!!」
アレスの呼び掛けにシエラが動き出すと同時に、ブレイドロックドラゴンが沈んだ地面が爆散し、そこからまた形が少し変わったブレイドロックドラゴンが飛び出した!
細くなった身体はそのままに、両手と足先に大剣の様に大きくなった剣を纏い、さらに見ている中でも、頭の一部や身体の一部の鱗が大きく成長した。
その姿は、まるで鎧と双剣を身に付けた様だ。そしてその鎧や剣が重いのか、少し前側に傾いて両手をユラユラとさせているブレイドロックドラゴンを見て、俺は一つ解った事がある。
ブレイドロックドラゴンとは、元は二足歩行の生物なのだ。それが大きくて重い、大剣の様に成長した鱗に身を包む事によって、重くて四足歩行になっていたのだ。
つまり何が言いたいかと言うと、ここからが戦いの本番である訳だ。
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