390回目 ☆5『◇創造神の短剣』
作戦を聞き、食事を取ってバフを掛けて、残された時間は約三十分。移動はレティアに頼めば一瞬で済むので、丸々三十分残っている。
仲間達の空気が張りつめる中で、俺は一枚のチケットを取り出した。『☆5クラッシュレア確定! ガチャチケット』だ。
「ガモン、それ使うの?」
俺がチケットを取り出した事に最初に気づいたのはティアナだ。そして他の仲間達も、俺が取り出したチケットに注目する。
「ああ。何が出るか解らないし、これで作戦が変わる可能性もあるけど、もしかしたら『幻獣』との戦いが楽になるかも知れないからな。後で使っておけば良かった、なんて後悔したくないから使っておく」
このチケットで手に入るのは☆5の、しかもクラッシュレアだ。
作戦に組み込めるかどうかは解らないが、少なくとも悪くはならない。なら使っておくさ。
俺は『☆5クラッシュレア確定! ガチャチケット』を使用した。
すると俺の目の前にガチャの画面が出現し、画面の奥には虹色のガチャマシーンと、手前には虹色に輝くコインが浮かんでいた。
「☆5確定演出か。虹色のガチャマシーンと虹色のコインか。これは派手だな」
俺が虹色のコインを弾くと、コインはキラキラとした虹色のエフェクトを出しながら放物線を描き、ガチャマシーンに吸い込まれていった。そしてガチャマシーンのハンドルが回り、出て来るのはこれまた虹色のカプセルだった。ここまで完全に虹色なのは初めて見るな、こんな状況なのに、ついつい顔が緩んでしまう。
そして、出てきたカプセルをタップすると、カプセルはブルブルと震えてバチバチと放電を始めた。見るのは三度目になるクラッシュレアの演出だ。
そして出てきたのは…………!!
☆5『◇創造神の短剣』
・《永続スキル・全ステータス+30%、合成魔法》
・《(始まりの為の終わり)》
・《?????》
・《?????》
「☆5クラッシュレアの武器装備!? 全ステータスに三割乗せ!? しかも永続スキルで!? 『合成魔法』って何!?」
ぶっ壊れているのは良く解ったが、解らない事も多い。それにこれ、短剣だけどかなり短いのだ。ペーパーナイフって言われた方がしっくり来るくらいだ。
二つ目の見えているスキルも意味が解らないな。《始まりの為の終わり》ってどういう意味なのか、まったくスキルの中身が想像できない。この感じだと、残る二つのスキルもパッと見では理解できない物かも知れない。
と言うかだ。そもそもコレ、名前からしてヤバイのだ。だって『創造神』だぞ? 創造神って言ったら、俺の認識では神様の頂点だ。全てを創りし神、みたいな存在を思い浮かべる。
これ☆5のクラッシュレアの中でも、かなりヤバイ部類のヤツじゃないのか?
取り敢えず、俺は☆5『◇創造神の短剣』を実際に出してみた。それはとても美しい短剣だった。基本は金色で、持ち手のグリップは黒い宝石で出来ており、ゴツゴツしているのだが握ってみると不思議と手に馴染んだ。持ち手の尻にあるのは紋章? 創造神の紋章だろうか?
そして刃の方はと言うと、白銀の胴体部分を金の刃が縁取りしており、刃の中心部は細長い赤色の宝石が嵌め込まれている。白銀の胴体部分には向かい合う二頭の龍の姿が緑色の宝石で嵌め込まれているし、何とも豪華絢爛で威厳のある短剣になっている。
「凄いなコレ。流石は創造神の持ち物か…………」
考えてみれば、いま俺の手にあるのは創造神の武器なのだ。ついに神様の私物まで出て来たぞ、本当にどうなっているんだ俺のスキルは。
「すごく綺麗な短剣ね、それ」
「綺麗なのはもちろんですが、威圧感もありやすぜ。『創造神』とか聞こえやしたが、マジですかい?」
「ガモン殿、それは今回の戦いに使えそうなのですか?」
俺の周囲には、いつの間にか仲間達が集まっていた。皆、☆5『◇創造神の短剣』への興味が尽きないようだ。
俺は取り敢えず解っている事だけを皆に説明し、残念だけどこれは今回は使えないと言って『◇創造神の短剣』をスキル倉庫に仕舞った。
戦いの中で熟練度は上がるかも知れないが、不確定要素が多すぎる。クラッシュレアの装備品は、基本として俺しか装備出来ないし、俺は『機動鎧『トライフォース』』に乗るからサブウエポンとしても装備出来ないからな。今回は見送りだ。だが、後で熟練度上げは必須だな。
『マスター、幻獣『ブレイドロックドラゴン』が落ちて来るまでの時間が五分を切りました』
「…………そうか、いよいよだな。皆、準備はいいか?」
俺の言葉に頷く仲間達。それを確認してレティアが『転送します』と言って俺達を戦いの場へと運んだ。
戦いの場となるのは、天空城が遠くに見える草原。短く生え揃う草も、邪魔にはならない程度なので良い場所だ。ただ一つ気になるのは、その草原の真ん中にポツンとあるオブジェだ。
1メートル程の高さがある白い台座の上に、薄桃色に光る玉が浮かんでおり、その玉からは止めどなく水が溢れ出して草原を濡らしている。
「…………ん? 桃と…………酒の匂い? まさかコレは!?」
『はい。☆5『桃源の酒泉』です。瘴気対策としてこの場に置いておきました』
「おい、大丈夫なのかそれ?」
『ご安心を。用が済めば、天空城の中へ戻しておきます。あくまでも一時的な移動です。…………では皆さん、コレを』
レティアがブロックをバラけさせて全員に配ったのは、陶器で出来た白い盃だ。おそらくガチャ産だろう。それ以外に、レティアがこんな物を持っているとは思えない。
『幻獣の瘴気対策に、それでこの『仙酒』を一口飲んで下さい』
レティアに言われるままに俺達はそれぞれ自分の盃に『仙酒』をつぎ、何となく全員で輪になって盃を掲げ、一気に飲み干した。
これで幻獣との戦いの準備は整った。さぁ、戦いの時だ。
……………………それにしても、旨かったな『仙酒』。勝利の暁には、皆で勝利の美酒として飲み明かすとしようか。
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