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387回目 堕ちる厄災

 幻獣『ブレイドロックドラゴン』。


 ドラゴンと名は付いているが、実際はトカゲである。


 地球で言う恐竜の時代が、そのまま何億年も続いたような世界において、一部の地域で捕食者の王として君臨していたこのトカゲは、突然『方舟』などと言う物に乗せられ別の世界へと運ばれた事に憤り、宇宙を満たす魔力を限界以上に吸収して『幻獣』となった。


 強大な力を持つ『幻獣』とはなったが、『方舟』において幻獣となったのは自分だけではない。その上、他の幻獣達が自分よりも強いのも理解でき、一部の地域とは言え捕食者の王となり恐れられていたブレイドロックドラゴンには、それが我慢ならなかった。


 たとえそれが一部の地域であろうとも、自分は頂点に立つのがふさわしい。その思いは何千何万と言う時間の中でも、決して消える事は無かった。


 …………現在よりも数ヶ月前。


 徐々に地上に近づいていた『方舟』と、自分の眷族となり得る魔王達を見つけたブレイドロックドラゴンの抑えつけていたタガが、ついに外れた。


 他の幻獣に先んじて『方舟』を降りた幻獣は、宇宙に浮かぶ岩の一つに張り付いて地上を睨み付ける。


 自らと地上にいる己に近い種族の魔王とは、『方舟』を媒介に繋がりを付けている。


 コイツらも自分の封印を破る手立てを持った事に気づいたブレイドロックドラゴンは、宇宙から魔力を送る事で密かにそれも支援し、自分が地上に降りる為の目印となる存在にも当たりを付けた。


 奇しくもそれは、ガモン達が女神ヴァティーと出会ったその日。ガモンとの出会いにより高まったヴァティーの魔力が、ダンジョンの外にまで漏れ出した事で発見されるに至ったのだ。


 自分が降りる為の目印を見つけた。眷族となるに相応しい魔王も見つけた。後は自らが力を損なう事なく地上に降りるために、橋をかけるだけだった。地上の眷族は、自らの手足とする為だけでなく、安全に地上に降りるその為にこそ、必要だったのだ。


 …………だったのに。


 地上を這うだけの虫けら共が、それを邪魔した。眷族となるべき魔王は全てが封印されるか討伐され、ただの一体たりとも、目的の場所に着かなかった。


 魔王が復活する為の魔力集め以外にもスタンピードを幾つも誘発までさせたのに、それすら全て防がれた。


 矮小な虫けらが、幻獣たる自分のやることを邪魔したと言う事実は、ブレイドロックドラゴンのプライドを酷く傷つけ、それを為した我聞とその仲間達はブレイドロックドラゴンが踏み潰すべき害虫へと格上げされた。



『シィィィィ……………………!! シャギャアアァァーーーーッ!!!!』



 宇宙空間では普通、音は響かない。大気がないからだ。しかし、ブレイドロックドラゴンの声は強い魔力を含むため、宇宙空間から大気圏を越え、地上の広範囲へとその威嚇の声を届けた。ガシャガシャという、大剣のような鱗がかち合う音までも。


 そしてブレイドロックドラゴンは周囲の魔力をかき集められるだけその喉の奥へと吸い込み、膨大な魔力の奔流を大気圏へとブチ込んで穴を開けた。


 世界において類をみない厄災が、堕ちて来る。



 ◇



 この世の物とは思えない叫び声と、不愉快極まる金属類がぶつかり合う音が世界に鳴り響き、それと同時に俺のスキル『ガチャ・マイスター』の画面に『緊急クエスト』の文字が流れた。



 《緊急クエスト》

『幻獣ブレイドロックドラゴンの討伐! (期限:1日)』

 ・『方舟』を降りた『幻獣・ブレイドロックドラゴン』が地上へと堕ちて来た。可及的速やかに討伐し、世界に広がる被害を最小限に食い止めろ!!

 ・『幻獣・ブレイドロックドラゴン』はその体から常に瘴気を出している。瘴気への対策が無い限り触れる事すら出来ず、瘴気に汚染された地は数百年に渡り酷く汚染される。その場所で生物は生きられないと断言しておく。


 依頼主:?????


 報酬:相応の物を贈る。



 …………は? 期限1日? 瘴気の対策をしないと触れる事も出来ない? しかも、報酬についての記載も無いとか、これを依頼したのは、いわゆる『神』だと思うが、これは『神ですら焦る事態』か?



「……………ヤベェ!! レティア! 天空城で幻獣を受け止められるか!?」


『可能ですが、瘴気の対策に相応の☆5アイテムが必要になります。それが無い場合、汚染の度合いによっては天空城が消滅しますが、よろしいですか?』


「☆5アイテムは何とかする! 受け止めろ!!」


『了解しました』


「ガ、ガモン?」


「すまないティアナ、話は後だ! クランメンバー全員に緊急召集をかけてくれ! 事態は一刻を争う!!」


「わ、わかった!!」



 ティアナがクランメンバー全員に向けて『フレンド・チャット』を送る中で、俺は秒数を数えながら心を落ち着けるように深呼吸を繰り返した。


 そして、たっぷり百秒を数えた後に☆5『時神の懐中時計』を取り出して時間を60秒巻き戻して時間を止めた。これで二分間は俺だけの時間だ。


 完全に全てが止まった時間の中は、考えるには最適だ。俺は頭の中を整理してやるべき事をまとめた。


 ……………………そして、時が動き出す。

面白い。応援したい。など思われましたら、下の☆☆☆☆☆から評価をお願い致します。


モチベーションが上がれば、続ける力になります! よろしくお願いします。

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