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386回目 好転する戦い、暗転する世界

 サザンモルト辺境伯が、カラーズカ侯爵に事実上の降伏を打診してきた。


 もちろん、カラーズカ侯爵もそれを簡単に信じる訳ではないが、その使者が密かにサザンモルト辺境伯の次男を連れて来ていた事で、カラーズカ侯爵もサザンモルト辺境伯との和睦を前向きに検討し始めた。


 それにより、カラーズカ侯爵は動かせる兵に余裕が出来たので、騎士団の幾つかを領地に戻して魔王の封印に備えてくれる事になった。


 魔王『スカイカメレオン』と『ストーンイグアナ』については、これで封印の目処が立ったと考えていいだろう。


 そして遠海に流した魔王『ウミガメ』についても、『サリアナイト』の三人から明日には手に入ると報告を受けている。


 全てが片付くまでにはまだ時間が掛かるだろうが、緊急クエストの達成は近いだろう。…………いやいや、まだ終わった訳じゃないんだから油断はダメだろ。少し気を引き締めるとしよう。


 …………と、そんな中で。



「これが天空城なのね! とうとう来られた!!」


「ティアナ様、あまりハシャイでいると転びますよ?」


「フラウスだって嬉しそうじゃない。来てみたかったんでしょ? 天空城に」


「ま、まぁ興味はありますが、我々の任務はティアナ様の護衛です。任務を放棄するつもりはありません」



 カラーズカ侯爵が天空城にティアナを送って寄越した。フラウス小隊の護衛付きで。


 まあ護衛とは言われているが、カラーズカ侯爵もここが凄く安全なのは解っているだろう。だからこそ寄越したのだ。



「ねぇガモン。ここを案内して?」


「俺もあまり詳しくはないぞ? ここ広すぎるし、まだ何も手をつけてないしな」


「それでいいから、ね?」



 俺と腕を組んで小首を傾げるティアナが可愛い。お目付け役でもあるであろうフラウスも何も言わないので、俺はそのままティアナを案内する事にした。


 …………はい、結局すぐに終わりましたよ。まだ使ってる部屋が少ないし、案内ならレティアに見取り図を出して貰って『亜空間ゲート』で移動した方が早いしな。


 結局その後は、レティアに空中庭園に案内して貰ってのお茶会になった。ちなみに、ここは俺も初めて来ましたよ。



「綺麗な場所ね…………。天空城は、季節に関係なく花が咲いているのね」


「そうなの?」


「うん。あれは春の花で『ツジバナ』あっちが『ダリアナ』。向こうにあるのは秋の花で『ガルベア』に『ラミリタ』」


「へぇ…………、じゃあ向こうの、火みたいな赤いやつは?」


「あれは…………。何かしら? 見た事がない花だわ」


「あれは『ケートゥ』と言いまして冬の花です、ティアナ様」


「あんな火みたいな花なのに冬の花なのか!? って言うか、フラウスも花に詳しいのか?」


「私もこれでも女の端くれ…………と言いたい所だが、たまたま知っていただけだ。私の故郷に咲いていた花だからね」


「故郷の花か…………」



 日本に咲いていた花なんて、桜くらいしか思い浮かばないな。もう少しくらい、花に興味を持てば良かったかもな。


 花を愛でながら、俺はティアナとお茶を楽しんだ。フラウスも同席すればいいのに、護衛という立場からか、少し離れた所でフラウス小隊のメンバーと一緒にこちらを見守っていた。



 ◇



 実はティアナがここに来たのには、ここが安全と言う以外に、もう一つ理由がある。サザンモルト辺境伯が人質まがいに送って来た次男だ。


 その次男はティアナと歳が近く、正妻として迎えていたヌヌメルメ王家の親戚にあたる家の女性を離縁して来ていた。


 つまり、ティムがティアナだと言う事がすでにバレており、あからさまな結婚外交を仕掛けて来たのだ。


 このままいけばテルゲン王国の王位はカラーズカ侯爵の物になるからな、口ではそれに異を唱えるサザンモルト辺境伯だが、戦争での勝ち目が消えた時点で目標をカラーズカ侯爵の次に定めたのだろう。


 要は、ティアナと結婚した自分の息子を王に付けようと画策している訳だ。


 ちなみにティアナにそのつもりは無い。もちろんカラーズカ侯爵にもだ。



「だから私は、しばらくガモンと一緒にいるからね? ガモンのパーティーに入れてくれる?」


「ああ、もちろんだ。歓迎するよ。…………ただアレだな、ウチのパーティーは斥候役がいないんだよな」


「バルタも連れていけばいいじゃない」


「バルタはまだカラーズカ侯爵の所でやる事があるだろ? それにバルタはソロでもダンジョン攻略ができちゃうからな、俺達が余計だろ」



 正直、実力に差がありすぎて足を引っ張るまである。ステータスで追い付いたアレスやシエラですら、バルタから一本取った事は無いからな。技術的な差が大きいのだ。



「いっその事、ガモンが斥候になる?」


「俺? え、自信ないなぁ。罠とか見落としそうだ」


「そこは練習あるのみでしょ? バルタだって最初から上手かった訳じゃないわよ、きっと」


「それはそうなんだろうけどな。…………ちょっと考えてみる」



 ティアナのフレンドクエストは無事に終了する見込みができ、魔王の緊急クエストの方も終わりが見えた。


 緊急クエストの内容を見た時にはどうなるかと思ったが、事態は好転している。


 実際に、これから三日後には緊急クエストの復活した魔王の討伐、及び封印は無事に完了し、俺は報酬の『☆5クラッシュレア確定! ガチャチケット』を手に入れた。


 そして、その喜びを噛み締める間も無く、けたたましい音が世界に鳴り響き、俺のスキルには『緊急クエスト』の文字が再び現れたのだった。

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モチベーションが上がれば、続ける力になります! よろしくお願いします。

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