377回目 スタンピードの行く先
「……………………うおぉ、ヤベェ…………」
☆5『◇天空城『レナスティア』』の誇る主砲『レナスティア・カノン』がエグい。
スタンピードを起こしたダンジョンを三つ纏めて葬れると言うから使ってみたが、レティアの言葉には嘘も誇張もなく、『レナスティア・カノン』が放たれた場所は、確かに『消滅』した。
とんでもない光の奔流に見えたが、これは確かに『次元魔法』だ。次元魔法が何かはよく解ってないが、これがレーザービームでは無い事は確かだ。
だってこれ、縦横の範囲をある程度設定出来るのだ。
つまり、とんでもない威力の光の奔流が森ごとモンスターを消滅させたにも関わらず、ある一定の距離でピタリと止まり、その向こう側にあった街までは届かせなかったのだ。
ものすごいスピードで撃ち出された光がピタリと止まる光景は、天空城の中で画面を見ていた俺達をも唖然とさせるもので、抉られるようにこの世から姿を消したモンスターと森は、俺達をゾッとさせるのに十分な光景だった。
『今回は周囲に被害を与えないように威力を絞りましたが、最大で三倍までの範囲を消滅させる事ができます。主砲を強化するならばもっとですね。ただし、今のでエネルギーを使いきりましたので、エネルギーを溜めなければ次を撃てません。もし主砲が使いづらい様でしたら、他にも武装はいっぱいありますので、ある程度付けておく事を推奨します』
「なるほど。ところで、残ったスタンピードの動向を教えてくれ」
『かしこまりました』
レナスティアの指令室、その壁一面に南の小国群を衛星から捉えたような映像が浮かび、そこに三方向の矢印が現れた。
言わずもがな、その矢印はスタンピードを表している訳だが、このスタンピードの動きが少しおかしかった。
まず、北に向かっている矢印。魔王が指向性を示したスタンピードなのか、目指す先に女神ヴァティーのダンジョンがある様に見える。これは解る。
不思議なのはその他の二つ、と言うか、一つの矢印に対して斜め後方から突き刺さっている矢印だ。
「レティア、この刺さってるのは?」
『唯一、魔王が絡んでいないダンジョンから発生したスタンピードですね。弱い群れを喰い破り、自らの力を底上げしようとしているようです。このまま進むならば、山賊の国『ラグラフ王国』を襲う事になりますね』
「ラグラフの所かよ!?」
うっわ、本当だ。この二つのスタンピードが行く先にラグラフ王国がある。ラグラフの所は城塞だが兵が少ない。ラグラフの義妹であるメリアも、そのパーティーである『メガリス』ごとバゴス王国に派遣してしまっている。
「…………フム。どうするんじゃガモン、何なら儂がラグラフ王国に出向こうかの?」
「本当か!? …………あ、いやダメだ。そうなると天空城の戦力に不安が出る」
「何故じゃ? 儂がいなくともアルジャーノンがおるじゃろ」
「アルジャーノンを頼るのは間違いだ。アルジャーノンの最優先は女神ヴァティーであって俺達じゃない」
「そうですね。ガモンくん達とヴァティーが天秤に乗ったら、僕は迷わずヴァティーを取ります。ガモンくんが僕を理解してくれているのは、嬉しいですね」
「…………そりゃどうも」
もちろん、いざとなればアレス達を呼び戻す。だが、アレス達がいるのはまだ俺が足を踏み入れていない国だ。この二国との繋がりを作っておく為にも、戦力が足りなくて仲間を呼び戻すような、戦力不足を示すような弱味は見せたくない。
「…………別の所から応援を呼ぶ」
「別の? 誰を呼ぶ気じゃ」
「ターミナルス辺境伯から、『アルグレゴ小隊』を丸ごと借りる」
俺はすぐにターミナルス辺境伯に『フレンドチャット』を送り『アルグレゴ小隊』の力を借りたいと頼み、了承の返事を貰ってすぐに『拠点ポータル』を使ってアルグレゴ達を迎えに行った。
まさかいきなり武装状態のアルグレゴ達を、ラグラフ王国に向かわせる訳にもいかないからな。武装した小隊が『拠点ポータル』から何の説明も無しに現れたら、騒ぎになる未来しか見えないだろ?
◇
「待ってましたわ! さぁ行きますわよ!!」
「…………いや、何でリメイアがいるんだ?」
タミナルの街へと『拠点ポータル』で移動し、ターミナルス辺境伯の屋敷へと行くと、そこでは装備を整えたアルグレゴ小隊と共に、ターミナルス辺境伯『ノルド』の娘でありティアナの親友でもあるリメイアが、こちらも準備万端で待ち構えていた。
「おいおい、まさかついて来る気か? これから行く場所にティアナは居ないし、俺達はスタンピードを止めに行くんだぞ?」
「ええ、理解していますとも! 私だって『G・マイスター』のクランメンバーですもの! 仲間のピンチには立ち上がるのが当然ですわ!!」
『キュルルンッ!!』
意気込むリメイアの隣では、リメイアのジュエルドラゴンである『ユーレカ』が宙に浮いた状態で頷いている。
え、連れてくの? マジで?
「いやいやいや、ダメだろ。ノルド殿が許すとも思えないし、お前勝手に来たんだろ!?」
「お父様の許可は得ています」
「そんな訳…………」
「いえ、リメイア様の言っている事は本当ですよ、ガモン殿」
そんな訳無いだろ。と、俺が否定する前に、アルグレゴがリメイアの言葉を肯定した。
なんとリメイアは、本当にノルドの許可を得てここに居るらしい。ノルドとしても苦渋の決断であり、近くにいると反対してしまいそうだから引っ込んでいるらしいが、ノルドは妻と娘の二人がかりで説得をされ、最終的には渋々許可を出したらしい。
…………本当だ、二階の窓に顔をしかめたノルドが張り付いている。…………これは本当に連れていくヤツだな。
「…………わかった。ただし、危険だと思ったらすぐに『拠点ポータル』で逃げろよ?」
「ガモンは私の実力を知らないのでしょうけど、私も結構戦えましてよ? でも、心配してくれるのは嬉しいから、その申し出は受けてあげますわ。これで安心でしょう?」
「…………そうだな。…………よし、じゃあ時間もないし拠点に向かうぞ!」
俺はリメイアとアルグレゴ小隊を連れて、『拠点ポータル』を通じてラグラフ王国へと移動した。
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