371回目 海の魔王
「二体目…………!? 何処にだ!?」
「ここより更に東の海のだね。近くにその封印の地を護っていた魚人族がいるけど、ちょっと対処が間に合わないかも知れない」
「なんで!?」
「『天空城』が現れたから、だね。西の空に現れた蜃気楼の大陸に、魚人達も右往左往しているからね」
俺はアルジャーノンの言葉に頭を抱えた。俺達のせいかよ。
「まあ、『ワールドニュース・クラシック』を読む限り、その封印の地は半ば放棄されていたみたいだから、知ってても動かなかったかも知れないけど」
「どういう事だよ?」
「うん。なんか三年前にサメ型モンスターの大群が魚人の国を襲ったみたいで、国王が将軍と共に軍を率いて戦ったみたいだね」
アルジャーノンの話によると、サメ型モンスターの大群はかなりの規模で、魚人の軍は王様が前線に立って指揮をとった事もあり、何とかサメの大群を退けはしたものの、壊滅的な被害を受けた。
だが、当時の魚人の王様や将軍も、その戦いで致命傷を負い、間も無く崩御。その為、まだ幼い王子がその後を継いだ。
新王となった王子は当時九才のまだまだ稚魚。当然ながら政治など解る筈もなく、長く王家に支える宰相がそれを支えたが、その宰相も去年亡くなり、側近が大幅に変わったらしい。
最悪なのは、そのせいもあって連携が取れず、魔王の封印と言う最重要案件にすら、簡単には動けないと言う事だ。
「若き王は、魔王の恐ろしさも厄介さも知らない。それを知る者は新しい側近に阻まれて王に進言出来ない。そう言う状況だね」
「最悪じゃねーか! じゃあ、あの二体は俺達で対処する必要があるのか!!」
「そう言う事だね。でもガモンくん。いいニュースもあるよ? ついさっき封印が解けた場所が解ったから、あの二体の魔王の正体がわかった。近くにいるのが『ウズシオトカゲ』で、向こうのが『ウミガメ』だよ。対処するなら、もう眷族を出しているウズシオトカゲからの方がいいよ」
よしじゃあ早速! と、☆5『強欲なる宝箱』でウズシオトカゲの『郷愁の禍津像』を出そうとしたのだが、ここで問題がひとつ起きた。
…………俺は、ウズシオトカゲの姿を知らないのだ。『強欲なる宝箱』は、ある程度欲しいものを想像出来なければいけない。つまりウズシオトカゲを知らない俺では、うまくイメージできない。
「いや違う! 別に使うのは俺じゃなくていいんだ! アルジャーノン! ウズシオトカゲを知っているか?」
「うん、もちろん。ウズシオトカゲの分泌液が欲しくて捕まえに行った事もあるし」
「任せた!!」
☆5『強欲なる宝箱』を取り出し、アルジャーノンに託す。そして『強欲なる宝箱』は、アルジャーノンの求めに応じて『郷愁の禍津像・ウズシオトカゲ』を呼び寄せた。…………白金板十二枚と引き換えに。
なんで二枚値上げ? 白金板二枚って二億なんだけど?
そして、『強欲なる宝箱』のクールタイムは一日だった。…………切り札としては有りだけど、金が掛かり過ぎるな。クールタイムが一日だからってそう簡単に使えないぞこれ。強力なのは確かなんだけど。
そして、呼び寄せたアルジャーノンの手によって『郷愁の禍津像・ウズシオトカゲ』は砕かれた!
『……………………!!??』
魔王がいる海を、天空城のカメラを使い上空から覗き見る。すると、海に広がっていた影がビクリと震え、端の方から徐々に崩れていくのを確認出来た。
「これで二体目。フリント王国とバゴス王国の再封印がうまくいけば四体。折り返しだな」
「残り四体じゃが、その内の一体が野放しじゃぞ?」
「それなんだよなぁ。…………ドゥルク、魔王の封印って、俺達じゃ出来ないのか?」
「海は無理じゃ。儂ひとりでは封印を組み上げられん。少なくとも、あと四人は封印魔法に長けた協力者が必要じゃ」
「ダメか…………」
俺達は、天空城の移動と魔王の捜索をレティアに任せ、作戦会議を開いた。
プラン1。
魚人族の海底王国へと出向き、魔王の封印に手を貸してもらう
「うーーん。難しいでしょうね。まずは『海の中に沈む城』まで行くのが簡単ではないですからね。それに、現在の魚人の国では、いったい封印にどれだけ掛かるのか解りません」
「駄目か」
プラン2。
魔王の足止めをしつつ、『郷愁の禍津像』を探しに行く。
「それは禍津像がそもそも何処にあるのかって話になってくるのぅ。無闇矢鱈にダンジョンに潜ったとしても、見つかる物では無いし、あの☆4『禍津像探知機』を使ったとしても、何の禍津像かまでは解らんのだろう?」
「駄目か」
「目当ての『郷愁の禍津像』を引き当てるのは難しかろう。それにダンジョンにあるとも限らんぞ。どこぞの貴族か商人が持っとる可能性もある」
「貴族や商人が持つ物なら、今サリアナイトの三人が交渉をしているな」
「無闇に急かすでないぞガモンよ。交渉事は難しいからの。交渉において無茶な手を使えば、後に自分に帰ってくるでな」
「わかってるよ。…………クソッ! せめて何処にウミガメの禍津像があるのかだけでも解れば…………」
……………………あれ? それ、もしかして解るんじゃないか?
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