362回目 ほとんど脅し
ゲンゴウやサリアナイトとの話し合いが終わり、ゲンゴウ達は帰っていった。彼らはこれから貴族女性を相手に交渉に動くからな、戦いの舞台が違うのだ。
そして、ドゥルクに集められたのはクランメンバーだ。ドゥルクから、復活する魔王と幻獣に戦いを挑むこれからの作戦について話があると、集められている。
「ウム、みんな集まったな。ではまずは確認じゃが、今回の『緊急クエスト』では、八体の復活した魔王を十日以内、いや今はもう八日以内じゃな。それまでに封印、もしくは討伐する必要がある」
その辺りは皆にすでに通達している。だがやはり、その規模の大きさと期限の短さに部屋の中は少し騒がしくなった。あと八日しかないからな、無理もない。
「実は既に討伐が済んでおるのが一体おり、復活し国が軍を出して抑え込んでおるのが二体おる。戦っておるのはフリント王国とバゴス王国じゃ、そして知っている者もいると思うが、この二国が魔王と戦う側で、スタンピードの兆候がある。状況から考えて魔王が罠として用意したスタンピードだと考えられる」
一応、他の五体の魔王についても、復活するのはコイツらだろうと言う目星はついている。確実ではないけどな。
だがそれより今は、フリント王国とバゴス王国のスタンピードが問題だ。これを発見してから、ドゥルクはキャンパーとも話し合い『遠距離偵察用ドローン』も派遣して情報を集めたそうだ。
その結果として、このスタンピードは規模の小さいものになる事は解っている。だが、いくら規模が小さくても突撃力はある。魔王を取り囲んで薄くなっている軍の横腹を食い破るには、十分なのだ。
俺達はどうにかこのスタンピードを止めなくてはいけない。二体の魔王の方は、フリント王国とバゴス王国が自身の力で対処可能だ。邪魔さえ入らなければ、問題なく対処できる。
問題となるのは、他国の問題に首を突っ込むのが難しいと言う一点だ。ジョルダン王国から援軍を出すのは間に合わないが、俺達がクランとして動いても、勝手に他国で戦闘行為を行う事になり問題が起きる。例え冒険者ギルドを通したとしても、通達している間にスタンピードが起きるので間に合わないのだ。
ならば、フリント王国とバゴス王国が文句を言えない状態で助け船を出し、後日協力関係を結ぶのが手っ取り早い。
つまり、フリント王国とバゴス王国から見て戦争をする気にならない程の武力を見せて、先に助けてから友好的に手を差し伸べると言う、一種の脅しをかけるのである。
…………勇者のやることか? 俺、本当に最近この世界における自分の立ち位置が解らなくなってるんだけど? 俺がやって来た事を考えると、どっちかと言えば魔王寄りな気がしているのだ。
まぁそれはもう諦めるとして、フリント王国とバゴス王国に見せる『圧倒的な武力』としてドゥルクが選んだのが、☆5『◇天空城『レナスティア』』である。
…………とうとうアレを出す時が来たか。北海道よりデカイ空とぶ島を。
ドゥルクが立てた作戦としては、『◇天空城『レナスティア』』でフリント王国、及びバゴス王国の上空へ行き、そこから一人は王城へと挨拶に向かい、スタンピードへは何とたった数人を送り出す、と言うのだ。
たった数人でスタンピードを止める事が出来るのか? と疑問に思うが、今回のスタンピードは小規模であり、ガチャ書籍でステータスを上げ☆4のガチャ装備で身を固め、ガチャ食材でバフをかけた者達ならば、ひとつのパーティーで十分だと言うのだ。
「具体的にはのぅ、フリント王国には『ノーバスナイト』の四人とシエラ、バゴス王国には『メガリス』の三人とトレマとイオスの姉妹に行って貰う。挨拶に出向くのはフリント王国をアレスに、バゴス王国をカーネリアに頼むとする。皆のジュエルドラゴンはすでに騎乗も出来るようじゃしの。天空の城からジュエルドラゴンで降りて、相手の度肝を抜いてくるが良い」
「「「「はい!!」」」」
ドゥルクのほとんど相手国に対する脅しみたいな作戦を聞いて、気合いを入れる仲間達を尻目に、俺は密かに焦っていた。
え? 皆のジュエルドラゴンってもう騎乗出来るの? 俺のグラックはまだ乗れる程には大きくなれないのに?
「アタシ達のパーティーだけでスタンピードを止めるのかい! いいじゃないか、腕が鳴るね!!」
「メリア、アタシ達も一緒に行くんだからね!」
「そうそう! メリア達のパーティーだけじゃないよ!」
「フッ、わかってるさ! よろしくな! トレマ! イオス! 頼りにしてるよ!!」
「「任せとけ!!」」
「おっと。それはそうとユミルにネリス、ジュエルドラゴンに与える魔力は抑えて温存しときなよ? あまり与えすぎると、こっちが戦闘中に魔力枯渇しちまうよ!」
「大丈夫、わかってますよ」
「ジュエルドラゴンに魔力を与えすぎてブッ倒れたのはメリアだろ? アタイ達は大丈夫さ」
…………なるほど。
メリア達『メガリス』と、トレマとイオスの双子が繰り広げる会話を聞いて、俺は自分の失策に気がついた。
そうか、皆は使わない魔力をジュエルドラゴンに回していたのか。俺はそんなのやってなかった。どうやらそれが、ジュエルドラゴンの成長率の差になっていたらしい。
「ごめんなグラック、これからは多めに魔力を渡すからな?」
『グワァ』
具現化させたグラックを撫でながら俺が謝ると、グラックはまるで「気にするな」とでも言いたげに一声鳴いた。
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