359回目 クランのお仕事
金が無い。いや白金板にして十一枚、日本円にして11億持っているが、足りない。
何せ俺のスキルは金を喰うし、欲しい物が出て来るとも限らない。一応、食品だ装備だとアイテムを限定することは出来るけど、その中でもハズレは多いしダブりも多い。多すぎる。
結果として更にガチャを回す事になる。まあ、それでも大体の場合、欲しい物は出ないのだが。
さらに俺の場合、『マイスター・バー』のマスターから情報を買うのに大金を払ったり、『ガチャ・ポイント』を稼ぐ為にガチャを回してアイテムを処分したりもしている。
金が掛かるのよ、マジで! いやホント、マジで!!
「…………と言う訳で、恥ずかしい話ですがもう金が無いんです。金稼ぎもあまりやってなかったしな。ガチャアイテムを売った金だけじゃ足りなくて…………」
「…………そんな訳ないでしょ? ガモン」
「え? いや本当だって。白金板で十枚なんてとても…………」
「クランのお金があるでしょ?」
「はい?」
「だから、クランのお金。ガモンのクランの目的は世界を救う事なんだから、その為に使うお金ならクランのお金を使えるでしょ?」
「……………………? クランにそんな大金はありませんが?」
「…………もしかして知らないの?」
「…………何を?」
……………………正座させられました。苦笑するカラーズカ侯爵の前で、ティアナの説教を受けています。
「…………と言う訳です。絶対にシエラから説明があった筈だよ?」
「……………………あの、えっと。…………あった気がします」
「シエラが説明を忘れる訳ないよね?」
「ありました! 私が聞いてなかっただけです!」
クラン『G・マイスター』が発足してから、シエラはタミナルの街のギルドマスターであるモンテナの力も借りて『G・マイスター』と言うクランの骨組みをしっかりと組み上げていた。
俺のクランの最終目標は世界を救う事だ。その為に必要となる事は色々あるが、俺のスキル『ガチャ・マイスター』のガチャアイテムやガチャ装備は必須である。
だからこそ、そのガチャを回す為に必要な金集めを、クランの取り決めとして組み込んでいた。
それによると、俺のクランのメンバーはクランの仕事としてダンジョンに入った際は、そのダンジョンで得た全ての収得物を現金化した八割をクランに納める事になっているらしい。
八割って、かなり酷いのでは? と俺なんかは思うが、そうではない。何故ならクランメンバーは俺のスキルの恩恵をダイレクトに得られるからだ。
装備はスキルの付いた強力なガチャ装備。
その他にも、俺の持つ多種多様なスキルを後付けできる。
さらにガチャ食材を使った料理で強力なバフが付く。
そしてダンジョンの中だろうと快適に過ごせるガチャアイテムの数々。
拠点に帰れば、この世界では王族をも越える快適な生活があり、娯楽も充実。
その上『拠点ポータル』を使えば別の街へも一瞬で移動が出来る。
まあ確かに、これだけの恩恵があるならば、八割は決して取り過ぎではない。
そもそも、ガチャアイテムやガチャ装備に慣れている彼らには、ダンジョンアイテムが魅力的に見えないのだ。
例えばダンジョン産のアイテムとして白金貨で取引される魔剣に『ヒートブレード』と言う物がある。
これはその名から解るように熱を放つ魔剣だ。魔力量に応じて熱量は上がり、最大までいくと鋼鉄を溶かし斬ると言われる魔剣だ。まあ、最大までいくとヒートブレード自体が壊れちゃうけど。
ともかく、これは比較的ダンジョンから出てくる魔剣として大人気だ。何せ、ダンジョン内のキャンプにも役に立つ。魔力を少し込めて水を張った鍋に触れさせていると、すぐに水が煮立つからだ。
物資が限られるダンジョン内では、お湯は贅沢だ。お湯に浸した布で体を拭くだけで、まるでひとっ風呂浴びたかのような顔をする冒険者もいる位だ。水をただ浴びるよりも、水草の匂いがする泉に浸かるよりも、真水を沸かしたお湯は贅沢品だ。…………この世界での、普通の感覚ならば。
物資も魔力も限りがあるからね。しょうがない事だ。
さあ、これでお分かり頂けただろうか? ヒートブレードでお湯を沸かしてドヤ顔を見せるパーティーの奥で、『電気ケトル』を使ってお湯を沸かすノーバスナイトの気持ちが。
ヒートブレード。欲しいかそれ? 運がよければ、ゲンゴウの店で『電気ケトル』が買えるよ? 金貨二枚程で。
ちなみにこの時、お湯を沸かすノーバスナイトの剣士にしてリーダーのザッパが持つ剣は、ガチャ装備の☆4『クリムゾンブレード(+4)』だったりする。
性能としてはヒートブレードの遥か上をいく上位互換。お湯を沸かすのには向かないが、金属製のゴーレムを普通に両断する熱量を僅かな魔力で出せる扱いの難しい魔剣だ。
ヒートブレード? 即決で売っ払いますよそんな物。
…………てな訳で、クランメンバーが真面目にダンジョン攻略をしてくれていて、しっかりと金を納めてくれている『G・マイスター』は潤っていた。
ギルドに預けたりして保管場所を分けてはいるが、もうすぐ資産額が白金板で百枚を越える程に潤っていた。
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