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355回目 滅びかける二国

 我聞が自身のジュエルドラゴンであるグラックと共に雪原を疾走している頃。ドゥルクは☆5『ワールドニュース・クラシック』を使い、多方面から情報を集めていた。


 我聞が居なくなり、幽霊の姿になっても『フレンド』が外れる心配が無くなったので、ホムンクルスは既に脱ぎ捨てている。女神ヴァティーも、本体の姿で自身のスキルを使い、ドゥルクと共に『ワールドニュース・クラシック』を読んでいた。


 二人とも、ホムンクルスの姿が嫌でも不便でもないが、やはり本来の姿の方が落ち着くのである。



『…………うぅむ。ちとマズイのぅ』



 そう言って顎髭を撫でるドゥルクが見ているのは、フリント王国、そしてバゴス王国の記事である。


 フリント王国はテルゲン王国の北に位置する雪の王国で、一年を通して雪が溶ける事がない極寒の中にある国だ。


 フリント王国の王都は『蒼の都』とも呼ばれ、その建築物の全てが氷で出来ている世界でも唯一無二の都だ。その幻想的な都を見ようと、極寒の地にも関わらず観光客に人気のある国だ。中でも氷で出来た王城は、世界有数の美しさを持つ城として有名である。


 そしてバゴス王国はその東南、テルゲン王国から見れば北東に位置する国だ。


 位置的にバゴス王国も雪の国かと思えば、さにあらず。バゴス王国は火山の地熱を利用した工業王国で、背の高いドワーフの国と揶揄される人間の国だ。


 ここに住む人々は男女問わず浅黒い肌と筋骨隆々とした逞しい体を持ち。ほとんど裸のような姿で日々過ごしている。余談だが、年に一度行われる肉体美を競う筋肉の祭典『ヘラクレス杯』と『アマゾネス杯』は、『一度観たら一生夢に見る』と言われる程に強いインパクトを誇る祭典である。



『これを見る限り、フリント王国もバゴス王国も同じ状況だの』


『そうさのぅ。どちらも似たような位置関係でスタンピードの兆候がある。完全に罠よな。むしろダンジョン・コアを作り出すだけでこれを仕掛けた魔王に称賛を送りたいのぅ。封印されとる状態でよく仕掛けるものよ』


『同感じゃな。だが、そうも言ってられん。このスタンピードが罠だとすれば、それが発動するのは魔王を食い止めている最中となる。タイミングを見るならば発動まで四日かの、ガモンの緊急クエストとの関連があるとすれば、全体の取り返しがつかなくなるまで十日。この二国はその前に滅びる事になるから、それが妥当な線じゃろ』



 ドゥルクとヴァティーの見立てでは、フリント王国とバゴス王国が魔王を食い止める前線としている場所から少し離れた所に、スタンピードの兆候が見られるダンジョンがあった。


 二つの王国で復活した魔王は、自分が封印されていた場所を、間近に作ったダンジョンを暴走させる事で完全に破壊して復活した。


 二国からすれば、魔王封印の地に程近いところで運悪くスタンピード起こり、封印が壊されたと考えただろう。それが作為的に行われたなど、そう簡単に行き着いたりはしない。


 なので二国は、魔王の眷族を倒して魔王の動きを止めて、軍で囲い込むように押し込んでから封印、という策を取っている。これは国が復活してしまった魔王を封印する時によく使う手で、成功率がかなり高い王道をいく方法である。


 だが、その囲い込みの最中は陣形が広がり、厚みは必要最低限に薄くなる。もしここを外から突かれたならば、軍は分断され、外からの勢力と魔王によって挟撃される事になる。そうなれば、間を置かずに壊滅するだろう。


 つまり早急に、この外からの勢力となるスタンピードを止める援軍が必要なのだ。



『この二国に書状を送ったとして、相手にはされまい。ジョルダンからの援軍は到底間に合わん。ガモンの車でもこの雪では無理じゃ、それ以前に軍を送るとなれば何十台と必要になるしの』


『そもそも、この二国とて援軍を素直に受け入れる事はすまい。自国とは別の勢力が不法に入国してくる訳じゃからの。仮に救われたとしても、スタンピードを止める程の武力を持って入国してきた者達は歓迎されまいな』



 圧倒的に不利な状況に考えこむドゥルクとヴァティー。


 スタンピードを防ぐだけならば簡単だ。ガモンのガチャ装備で完全に身を固めていれば、ドゥルクが見る限り今回の規模のスタンピードならば数人でも何とか防げる。ぶっちゃけドゥルクが行けば、一人でも十分な規模だ。


 だがそれが結果として、ガモンと二国の間に軋轢を生むかも知れない。いっそ二国が、ガモンと戦うのは避けるべきと畏怖を抱く位であれば軋轢も最低限になるかも知れないが、例えどれだけ強くても、たかだか数人の戦力ではナメられる。数で押しきれると思われるようではダメなのだ。見せるならば、もっと圧倒的な戦力差が必要だ。そもそも戦えない、そう思わせる程の戦力差が。



『…………演出が必要じゃな。援軍を送りつつ、二国にガモンと手を組む以外の選択肢を残さない、そんな演出が必要じゃ』


『難しい話よの。普通ではとても間に合わぬ援軍を間に合わせ、スタンピードを数人で防ぎ、二国の軍とその王家に圧倒的な戦力差を見せつける。そんな策があるのかえ?』


『うむ、ある。…………ただガモンには、もはや引き返せない程に目立って貰う必要があるがの。うまくいけば、テルゲンでの内乱も終わるかも知れんのぅ』



 顎髭を撫で付ける動作をしながら、ドゥルクは策を練りに入った。

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