表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
349/607

349回目 外界との繋がり

「…………む。なにやら盛大に自分語りをしてしまったが、妾に話があったのではなかったか?」


「あ、はい。…………そうなんですが…………」



 何とも言いづらい。俺はこの里に暮らす子供達に娯楽を与えて笑顔にしたかっただけなのだが、今の話を聞いてしまうとな。


 だって、俺の持つ物は外の世界、どころか異世界産の物がほとんどである。こういうのに関わると、どうしたってその文化そのものに触れたくなって外の世界への興味が出て来る。


 この『白狐族の里』を護るハクラテン、…………大ババ様には受け入れ難い事ではないだろうか。俺はそう考えた、人の心が読める大ババ様の前で。



「…………なんじゃそんな事か」



 当然、俺の考えと言い淀んだ理由は大ババ様には筒抜けだった。しかし大ババ様はそれを知っても、なんだと笑い、怒りなど微塵も感じさせなかった。



「便利な物も愉快な物も、くれると言うならば断る理由はない。むしろありがたいので、どんどん置いていくがよい」


「…………え、いいんですか? …………この里を出て街に行きたいと言い出す人が増えると思いますけど」


「そんなの今更じゃし、妾はけっこう送り出しておるぞ? このような小さな里で、生まれて来る全員を護り育てるなど不可能じゃからな。外との繋がりとは、村から出ていく者達も含めての話よな」



 時代とは流れて変化する。長く世界を見てきた亜神『ハクラテン』だ、そんな事は言われずとも当たり前の事として受け止めている。


 だから『白狐族の里』は閉鎖的に見えて、外の文化に対しては寛容だ。この村では冬の間に特別な布や絨毯などを作って、春になれば里の中でも力を持った者が外に売りに行き、それで得た金で様々な物を買って来るのだ。


 その中にはゲンゴウの『タカーゲ商会』で扱っている、ガモンのガチャから出てきた商品も当然含まれている。ここ最近の流行りものとして、駄菓子や石鹸などの一部の商品は、大ババ様も眼にして興味を引かれていた物の一つだ。



「それらの品々は大きな特徴としてゴミが出ぬ。じゃから妾も、何者かのスキルが関係しておるとは思っておったが、ガモンのスキルだったのじゃな。置いていってくれるのならば、ぜひ頼むぞ」


「本当にいいんですか?」


「さっきも言ったが、妾は里を出たいと言う者を引き止めはせぬ。ただ、そのままでは危険が多いので妾の力で毛色を変えはしておるが、その程度よ」


「毛色を?」


「妾達は『白狐族』よの。その一番の特徴となるのはやはり真っ白な髪よな。じゃからそれを、金色に変えてやるのよ。さすれば普通の狐獣人と変わらぬからの」



 亜神である『ハクラテン』と、その眷族の末裔である『白狐族』。その一番の繋がりとなるのは、やはり雪のように真っ白な体毛である。


 白狐族はその体毛を通してハクラテンの神通力と繋がりを持ち、『巫術』や『妖術』と言った力を使う。


 故にハクラテンの力で体毛の色を変えられた者はその繋がりが希薄になり、それらの力を使えなくなるそうだ。


 そしてその代わりとしてか、身体能力が飛躍的に上昇する。故に、外の世界に出たとしても危険は少なくなる。


 見た目が普通の獣人で『巫術』も『妖術』も使えないならば、無理に拐って奴隷にしても割に合わない。更に本人の身体能力が大幅に上昇している為に捕らえるのも簡単にいかないとなれば、狙われる理由は激減するという事だ。



「外で暮らすと言い、そうして出ていった者は多い。この周辺で狐の獣人を見かけたなら、その多くは元・白狐族かも知れんの、あまり知られてはいないがな」



 そんな感じで、怒られるかと思っていた俺の提案はむしろ歓迎された。さらに大ババ様は俺達との間にできた繋がりを大切にしたいと言う事で、大ババ様を含む数人はフレンドとして登録する事にもなった。


 当然、『方舟』との戦いにも全面的に協力してくれるそうだ。


 白狐族はその里の在り方からも解る通り、隠れ潜む事に高い能力を持っており、本気で潜むとAランク冒険者でありギルドマスターでもあるエルドルデを持ってしても見つけられない程の実力がある。


 そして『巫術』や『妖術』といった固有スキルもあるので、味方となると心強い種族だ。



「取り敢えず友好の証としても、お主の持つガチャアイテムとやらを売って貰おうかの。対等の立場でおるためにも、ただ恵んで貰う訳にはいかないからのぅ。しかし、妾達は金を多くは持っておらぬ故に、里の特産品と交換で頼むぞ?」


「もちろん良いですよ。この絨毯とか、凄くフカフカですからね。持って帰ったらゲンゴウが喜びそうだ」



 そして、その後行われる大交換会。白狐族の里に暮らす人々はこぞって自分達が作った絨毯や布や工芸品を持ち込み、俺は仲間達と共に多くのガチャアイテムの説明をしながら交換していった。


 子供達も、自分達で作った木彫りの置物や縫いぐるみを持って来たので、その子達には駄菓子を多めに交換してあげた。


 娯楽にと提供したボードゲームなんかは、子供達よりもむしろ大人が夢中になってやっていたが、そのままの流れで宴会に突入した事もあり、白狐族の人々とはその一日だけでかなり仲良くなれたと思う。


 …………早朝まで浴びる程に酒を呑んで、酷い二日酔いになった上に半裸の男達と村の広場で雑魚寝している所を見つかって、シエラやカーネリアに冷たい視線を向けられた以外は、完璧だったと言えるだろう。

面白い。応援したい。など思われましたら、下の☆☆☆☆☆から評価をお願い致します。


モチベーションが上がれば、続ける力になります! よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ