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345回目 『白狐族の里』

 走って来たニッカとダッカを優しく受け止めた妖艶な女性は、二人の頭を撫でてから、俺達の方を見た。


 大ババ様と呼ばれた女性が白狐族であるのは、その見た目からも、ここが「白狐族の里」である事からも解る。


 そして大ババ様と呼ばれている事から考えると、あの女性は白狐族の代表みたいな位置付けなのだろう。いわば里長か。



「ほらガモンちゃん。見とれてないで行くわよ」


「お、おぅ」



 エルドルデに促されて、ニッカとダッカの頭を撫でながら俺達を待つ女性の所まで近づいた。



「お初にお目に掛かります。アタシは、ジョルダン王国にて王都冒険者ギルドのギルドマスターをしておりますエルドルデと申します」



 いつもの様子とはまるで違う真面目さで、エルドルデがまず挨拶をした。さすがはギルドマスターを務めるだけあって、常識をわきまえて…………わきまえてんのかな? わきまえている奴の格好かなコレ?


 ま、まあ相手も気にしていないようなので、これでいいのだろう。



「おお、里の者が外であった者とはお主のことかえ。里の子達が世話になったのぅ。この子らを拐った者共には惨たらしく死ぬ呪いをかけてやったが、どうやら既に里から離れた所に逃げていたらしくての、子供達を見つけられずに困っておったのじゃ。この子らを保護してくれた事、深く感謝する」



 直立のまま「感謝する」と言った女性の代わりなのが、両隣に控えていた白狐族の男達が深く頭を下げた。喋り方もそうだが、どうやらこの女性はかなりの権力者であるらしい。


 何となくだが、女神ヴァティーを思い出した。気のせいか、どこか近いものを感じる。



「その子達を保護していたのはアタシじゃありません。このガモンと、ガモンが代表を務めるクランです」


「おお、そうであったか。ガモンと言ったな、大したもてなしの出来る里でもないが、ゆっくりしていっておくれ。温泉もあるから、冷えた体を温めるがよい。誰かに案内をさせよう」


「大ババ様。その役目は私が」


「そうかえ。ではお主に任せる。二人は妾についておいで。皆、二人を心配しておったでな、顔を見せておあげ」


「「はい」」



 大ババ様がニッカとダッカを連れて行き、その場に残ったお付きの人が、俺達に向き直った。



「私はカックと言います。ニッカとダッカの二人を保護してくださった皆さんには、改めて深い感謝を。この白狐族の里に生まれた者は等しく大ババ様の子なので、大ババ様も心を痛めてらっしゃったのです」


「いえ、ニッカとダッカは俺達にとっても仲間で家族です。二人を無事に里に返す事ができてホッとしています」


「どうやら、ニッカとダッカは良い方達と出会いがあったようですね。では、皆さんを宿にお連れします。大したもてなしは出来ませんが、せめてゆっくりしていって下さい」


 そう言ったカックと名乗る白狐族の青年の案内で、俺達は『白狐族の里』を案内してもらった。


 白狐族の里は、その人数的な関係もあるがあまり大きくはない。


 猛吹雪のドームの中に、大ババ様の住居を中心として約百程度の住居がある。外から客が来る訳でなく、全てがこの中だけで完結するので店も宿もない。


 ここでは、外で手に入れた物は皆で分け合うのだ。里の全員が家族なのだから、繋がりも当然ながらに強くて堅い。


 だから、俺達が泊まる場所をわざわざ造ってくれたらしいのだ。白狐族の里に来るのに時間が掛かったのは、この準備の為もあったらしい。


 白狐族にとって俺達は、里の子供達を助けてくれた恩人になるので、失礼のないようにという配慮のようだ。俺にはスキル『ガチャ・マイスター』があるので、場所さえあれば宿泊に困ったりはしないが、その心遣いはありがたく受けようと思う。


 さらに、移動しながら暮らす白狐族は里を作る際に必ず温泉を掘るのだが、俺達の為に専用の温泉も掘ってくれたらしい。彼らのもてなしに本気さを感じる心遣いだ。



「本来、我々は男女の隔てなく温泉を利用するのですが、外の世界でそれは一般的では無いですよね? なのであなた方の温泉には仕切りを作り男女で分けておきました。心置きなく利用してください」


「…………ありがとうございます」



 そうか、本来なら白狐族は混浴なのか。べつにそれは白狐族の文化なのだから気を使わなくても良かったのに。…………いや、俺が混浴に入りたい訳ではありませんよ? ただ『郷に入っては郷に従え』とも言うし、それが文化であるならそれに従うのが客としてのうんたらかんたら………。



「ねぇガモン。さっきから黙っているけど、何を考えているかは大体わかるわよ? あり得ないからね、混浴なんて」


「え!? いや別に俺はそんな…………。あ、はい。すいませんでした」



 カーネリアに言われて仲間達を見ると、アレスは苦笑し、シエラとカーネリアは冷たい目で俺を見て、エルドルデは「アタシなら一緒に入っても構わないわよ?」としなをつくってウインクしていた。


 いやいやエルドルデ、お前は元から男湯だからな? 一緒には入らんけど。

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