344回目 白狐族の里への道
雪深い山に足を踏み入れる。本来ならば太陽光が雪に反射して眩しいのだが、ゴーグルのお陰で遮断できるし、☆3『雪山用ウエア』のおかげで寒さも大分防ぐ事が出来ている。
ただ、俺がこんなに重装備なのに、アレス達はいつもの装備に少し足した程度になっている。正確に言えば、アレス・シエラ・エルドルデが、雪山にいるとは思えない程の軽装だ。俺とカーネリアにニッカとダッカは、こんなにもモコモコになっていると言うのに。
「…………お前ら、寒くないの?」
「いや、寒くない訳ではないですが、ガモン殿から頂いた装備は優秀ですからね。それほどの寒さは感じていませんよ」
マジかよ。金属の重い鎧なんて、雪山には一番ダメな装備だろ。…………アレスのは☆5『聖騎士の神装』だから普通じゃないのはわかるけども。
そう思いながらシエラにも視線を向けてみる。シエラのは☆4装備だから寒いかも知れないし。
「私も平気です。それにガモン様の着ている物は確かに暖かそうですが、それで普段通りに戦えますか? このような場所はモンスターも強力になるので、戦うにしても逃げるにしても、装備は重要ですよ?」
「う…………」
それについては反論できない。何せ、この雪山仕様の重装備にした後にもモンスターには襲われており、アレスがスムーズに撃退はしたものの、アレ? 俺これ戦えなくね? と思っていたからだ。
いや、戦えるは戦えるんだけどもね。慣れない格好に、どうしても動きが鈍るのだ。
ちなみにカーネリアの方はと言うと。
「…………私はいいのよ、さっきの戦いでだって、魔法で援護できてたでしょ? 私後衛だもの、着込んでたって関係ないわ、寒いの嫌いだし」
…………だそうだ。俺も、次はもうちょっと考えてコーディネートしよう。
雪山を進んでいると、次第に降る雪が強まってきた。そしてなだらかな道がおわり、本格的な登山になりそうな所では、なんと目の前に猛吹雪の壁が現れた。
「…………おいおい、何だよこれは。こんなの進めないぞ」
目の前にある猛吹雪の壁は、まるで白い雲のが渦巻いているようにも見えるほどに激しい。まるでこれ以上俺達が山に入るのを拒んでいるようだった。
いや、実際に拒んでいるのだ。何せエルドルデの説明によると、これこそが『白狐族の結界』なのだそうで、俺達が目指す『白狐族の里』は、この中にあるのだそうだ。
「マジかよ、こんなのどうやって進むんだ?」
「そこで二人の出番よ。ニッカちゃん、ダッカちゃん、お願いするわね」
エルドルデがそう言うと、ニッカとダッカの二人が前に出てきた。
そして二人は猛吹雪の壁に近づくと、何やら歌のような呪文を紡いだ。すると、猛吹雪の壁の一部が割れて、まるでトンネルのように穴が開いたのだ。凄い光景だなコレ。
「なるほど、アタシが聞いていた通りだわ。白狐族の里って、冬は絶対に見つからないって言われているのよね。アタシも実際に体験するのは初めてだけど、こんなのの中にあるんじゃ、そりゃ見つけられっこないわよね」
ニッカとダッカを先頭に、俺達は猛吹雪の壁、…………いや、猛吹雪のトンネルの中に入った。一面真っ白で、俺達のいる場所意外は猛吹雪に閉ざされている。
そして俺達が入って来たトンネルの入口すら猛吹雪に閉ざされると、どこから現れたのか青い火の玉が俺達の先頭に現れた。
どうやらその青い火の玉が、俺達を『白狐族の里』まで案内してくれるらしい。
「さあ行きましょ。ここからはモンスターは出て来ない筈だけど、油断はダメよ? あと、はぐれないようにね。こんな猛吹雪の中に取り残されたら、一瞬で遭難するわよ?」
俺達はエルドルデの言葉に頷き、ニッカとダッカのさらに先頭に立ったエルドルデに続いて猛吹雪のトンネルを歩き出した。
青い火の玉に照らされた真っ白な壁。渦巻く猛吹雪も、こうして見るとかなり美しい。
…………と言うか、これなら本当に雪山用の重装備なんていらなかったな。だってこうなると猛吹雪の中でも暖かいし。なんなら若干暑いし。
…………い、いやでも! 準備は大切だよ? 結果がどうあれ、何もせずに雪山登山なんてあり得ないからね!
「…………ん? もしかして、出口か?」
猛吹雪のトンネルをしばらく歩くと、前方にトンネルの出口のような明かりが見えた。それを見たニッカとダッカの足も早くなり、エルドルデが二人の手を取って飛び出さないようにしながら、俺達は先を急いだ。
そして猛吹雪のトンネルを抜けると、そこは猛吹雪をドーム状にした不思議な村だった。猛吹雪のドームだから明かりが必要な様で、いたる所に俺達をここに案内してくれた青い炎が篝火として設置されていた。
その村にある家は、全てがドーム状のテントであり、そこに住むのはもちろん、ニッカとダッカと同じように美しい白髪を持つ狐獣人達だった。
「「大ババ様!!」」
そして、村の方から二人の男を伴って歩いて来る、妖艶な雰囲気の女性を見て、ニッカとダッカは走っていき、その妖艶な女性に優しく抱き止められていた。
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