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343回目 白狐族の里に向けて

 この世で最も美しい種族は何かと問われれば、君は何と答えるだろうか。


 やはりエルフだろうか? だが、『ハイエルフ』や『エルダーエルフ』は永遠とも言われる美しさを持つが、その代わり表情を失っている。すでに長い時のなかで精神が植物の域に達してしまっているからだ。彼らには、『感情』という概念が限りなく薄くなってしまっている。


 私としては、『感情』もまた美しさを際立たせるものだと思う。美しい人の笑顔は、周囲を温かく明るく照らすものだから。


 なので私は、最も美しい種族として『白銀の妖狐・白狐族』を推す。その雪を思わせる髪も美しいが、白狐族の女性は、妖艶に儚げに微笑むのだ。その姿は一度見たら生涯忘れられない程に美しい。


 だが、彼らは独自の生活習慣を持っているので、人前にも街にも姿を見せる事は稀だ。無い訳ではないが、とても珍しい。


 そして彼らは、その美しさ故に別の種族、主に人間に理不尽に拐われた歴史があるために警戒心が強い。街で見かけたとしても、声を掛けたならその瞬間に『妖術』で姿を眩ましてしまうだろう。


 それでも君が、どんな困難にも負けずに彼らに会いたいのなら、彼らのいそうな森に、秋の終わり頃に訪ねると良い。一番出会える確率が高いだろう。春でも夏でもダメだ。冬だけは何が何でも避けると良い。冬にだけは、絶対に見つかりっこ無いのだから。


 元・探検家『ヨウイズミ翁の手記』より抜粋。



 ◇



 ガチャから出て来た雪山装備をフルに着込んで、俺率いるパーティー『G・マイスター』はニッカとダッカを連れて、雪深い雪山に来ていた。案内役はもちろん、王都冒険者ギルドのギルドマスター、エルドルデである。


 白狐族がいま隠れ里にしているのは、ジョルダン王国の北西部にある山の多いド田舎の、人が寄り付かないような山だ。


 その一帯を納める辺境伯に王からの書状を渡し、その辺境伯の依子となる領主に王と辺境伯からの書状を渡し、山のある田舎に来るまでに四日も掛かった。


 特に辺境伯は、白狐族とある種の取引をしているらしく、俺達が白狐族の里に行くのに難色を示した。


 辺境伯家は、長年にわたり白狐族を陰ながら支援してきた家であり、その為に今回の誘拐事件を知って疑心暗鬼に陥っていたのだ。白狐族との繋がりを求める者を、これまで以上に敵視していた。


 だがまぁそれも、白狐族の子供であるニッカとダッカを見て軟化した。辺境伯と言えど白狐族の子供を見る機会は少なく、里に招待された事も二度あるらしいが、子供達と触れ合う機会は無かったらしい。


 終いには騎士団を連れて自分も一緒に行くと言い出したが、雪山に大勢を連れてはいけないし、辺境伯を護る必要まで加わったら危険が増すだけだとエルドルデに却下された。


 まあその次に会った領主は、王と辺境伯からの『俺達を自由にさせるように』という書状を見て、ただ震えていたが。


 田舎の領主にとっては王はもちろん、辺境伯ですら雲の上の人であるらしく、王からの手紙などは額に入れて飾る勢いだった。…………俺の名前も入ってるんで、止めて貰えませんかね?


 そして領主のいる村からさらに北西に向かい、俺の想像を越える雪山に行き着き、この山だとエルドルデに言われたので、俺は準備に時間を貰った。


 いや、ここまで車で走っている間にも雪は降ってたし、それなりに積もってはいたのだが、こんなに本格的な雪山登山になるとは聞いていない。


 エルドルデは、「魔力を纏えばある程度は大丈夫よ?」とか抜かしたが、そんな異世界の常識を持ち出されても困る。


 だいたい『ある程度』って何だ。そんなフワフワした物言いに子供達の命をアッサリ賭けるんじゃない。こちとら登山の経験すら無いんだナメるなよ?


 そんな訳で、俺は山の麓にコテージを出して『生活ガチャ』を回し捲った。欲しいのは☆3『雪山用ウエア』☆3『雪山用ゴーグル』☆3『雪山用シューズ』の三点セットだ。☆3『防水グローブ』や☆3『登山用ピッケル』もあっていいかも知れない。


 最初は「心配し過ぎよ?」とか言っていたエルドルデも、『雪山用ウエア』と『雪山用ゴーグル』には興味を示し、「これいいわね。アタシにもちょうだい?」と言って身に付けていた。ちなみに、流石はガチャアイテムだ。『雪山用ウエア』は、エルドルデの翼にも即座に対応し、わざわざ穴を開ける必要が無くなったエルドルデは、とても喜んでいた。


 …………それもあって、追加でエルドルデに似合うドレスも注文されたのだが、筋肉モリモリのオッサンに似合うドレスって何だ? そんなもの存在するの? と、適当にガチャから出て来たドレスを並べてみたのだが、エルドルデは要するに派手でセクシーな物が好きなだけだった。


 スパンコールのセクシーなドレスを身にまとったオッサンに、「どう、アレスちゃん? 似合うかしら?」と問われたアレスは苦笑いで「…………お似合いですよ」と絞り出して、お礼のキスを頬に貰って石になった。もはやそういう魔物である。


 まあともかく準備は整った。あとは白狐族の里へ向かうだけだ。

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