341回目 皆のジュエルドラゴン
『キュルルルッ!』
「うおっ!? なんだ!?」
メリア達のジュエルドラゴンに俺のグラックを紹介していると、不意に俺達の間をキラキラとした何かが猛スピードで通過していった。
目で追うのが難しい程のスピードで部屋の中を飛び回るそれは、間違いなくジュエルドラゴンだった。いったい誰のかと思いながら見ていると、異変が起きる。
『キュベッ!? …………キュゥゥ…………』
そのジュエルドラゴンは何かにぶつかったかのように動きを止めて、情けない声を出して床にポテリと落ちたのだ。…………大丈夫か?
「ああっ! 『ユーレカ』ちゃん!!」
落ちたジュエルドラゴンに駆け寄るのは、ターミナルス辺境伯の娘であるリメイアだ。どうやらあのジュエルドラゴンはリメイアのドラゴンで、『ユーレカ』と言う名前らしい。
ユーレカは首が長くて頭は小さく、四肢があって背中に翼のあるタイプのデザインだ。その体はまるでダイヤモンドのように光り輝いていて美しい。まぁ、それが舌を出して伸びている今の様は、とてもシュールだが。
「コラッ! 今のあなたでしょ、『フリージア』! あんな止め方したら危ないじゃない!」
『キュ? クルル…………』
「知らないフリしないの!」
そこにやって来たティアナの側には、まるで氷を削って造られた氷像のようなドラゴンが飛んでいた。形はリメイアのユーレカとほとんど一緒だが、こちらもユーレカに負けず劣らず美しい。
周囲に氷が浮かんでいる事から、氷を操れるドラゴンのようだ。
『キュル! キュルルルッ!!』
『キュ? クルルン』
リメイアの腕の中で目覚めたユーレカが、フリージアの所に飛んでいって何やら言い合いが始まった。
どうやらさっきのアレは、ユーレカの飛ぶ先にフリージアが氷の壁を仕掛けて起きた事らしい。
『キューーキューーッ!!(なんて事するのよ! 今のあなたでしょ!!)』
『クルル?(さぁ、知らないわ。うっかり壁にでもぶつかったんじゃない?)』
そんな感じの言い合いをしているのかは知らないが、何となくそんな感じに見える。
ティアナとリメイアも、そのドラゴン達を宥めるのに忙しそうだ。あの二人は仲が良いのに、二人のジュエルドラゴンはそうじゃないのか。
…………見た目的に似てるし、どっちも綺麗だからお互いをライバル視してるとか? なんか有りそうだな、それ。
その二体の対立はしばらく終わりそうもないので、俺は奥にいる子供達のドラゴンを見せて貰う事にした。
…………なんか既にアラムのジュエルドラゴンが威厳を放っているが、取り敢えずは他の子から見せて貰うか。アラムのアレの後じゃ出しづらいだろうし。
「よお皆。楽しそうだな」
「ガモン兄ちゃん、おかえりなさい! みて! これボクの『キリク』!」
「おお、ダッカのジュエルドラゴンか。おお? なんか初めて見る形だな、これ」
まず最初にドラゴンを連れて来たのはダッカだ。ダッカのは、一言で言うなら葉っぱで出来た円盤みたいなヤツだった。
これのどこがドラゴンなのかと思っていたら、円盤の真ん中が持ち上がってドラゴンの頭が出て来たかと思うと、円盤が渦巻くように剥がれていって、細長い緑色の龍になった。からだの背中側には鬣のように葉っぱが並ぶ、独特のフォルムをしていた。
「ガモンさん、私のはこの子です」
次に見せに来たのはニッカだ。ニッカのジュエルドラゴンは真っ白で、流線型。白くて長い毛も生えていて、ドラゴンと言うよりは別の動物みたいだった。
しかもこの白い毛も宝石だったから驚きである。フワフワしてそうだと思って触ったら意外と固かったので、ちょっと残念に思ってしまった。
ちなみにニッカのジュエルドラゴンの名前は『スノー』。確かに雪みたいに真っ白だし、ピッタリの名前だと思う。
「アリアのジュエルドラゴンはその子か? 見せてくれ」
「いいですよ。この子の名前は『ハルル』です」
アリアのジュエルドラゴンは、恐竜に近い形をしていた。薄い桃色の翼竜みたいな感じだ。特徴的なのは胸にあるハートマークか。皆の中で一番ファンシーなのがアリアのジュエルドラゴンだった。
ただ、その能力はエグい。何せコイツ、魅了系の力をもっているらしいのだ。周囲にいる敵の目を自分に釘付けにしたり、敵の一体を完全に魅了して味方にしたりと、ファンシーな見た目に反してかなりアレな力を持っている。
「ガモン兄ちゃん! ボクのも見て!」
『まぁ落ち着けアラム。我はメインだからな、あのガモンとやらも勿体ぶっておるのだ。ここは大物らしくどっしりと構える所だぞ?』
「……………………」
ソファーに座るアラムの横でどっしりと寝ているヤツが、そう言ってアラムを窘めていた。
…………やっぱ喋るのか。アルジャーノンのドラっちを見ていたから、そうじゃないかと思ってはいたが。
アラムのジュエルドラゴン。その名もカイザー・ジュエルドラゴンの『カイザー』は、自信と威厳をもった顔で俺を見ていた。
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