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334回目 侯爵の呼び出し

「……………………フム。必要なのは主に食材か。そして賄賂に使う宝飾品の数々と、フレンドにした騎士団に持たせる装備品…………と。これならバルタがガチャを回しても良かったんじゃないか?」



 俺の『トゥルー・フレンド』になっているバルタには、俺のスキルの一部を使う権限を与える事ができる。俺はそれを使って、バルタにガチャを回す権限を与えていた。こんな風に、ガチャアイテムが必要になる事があると見越しての事だ。



「あっしがガチャを回すと☆5が出ねぇでしょう? これから先の事を考えるなら、例え僅かでも☆5が出る可能性がある旦那がガチャを回すべきだ、ってのがカラーズカ侯爵の考えでさぁ」


「いやまぁ、それは有難いけども」


「まぁそれとは別として、旦那をカラーズカ侯爵の所に呼ぶようにって命令も受けてますけどね」


「…………そっちが本命かよ。って言うか、それなら『フレンド・チャット』で呼んでくれて良かったのに。そうすれば、こんな手紙なんて書く必要もなかったろ?」


「形式ですぜ。いくら『フレンド・チャット』が便利でも、何でもかんでもそれじゃ味気ねぇでしょう? 特に貴族がやる事は、そう簡単には変わりやせんぜ」


「あーー…………。何となく解った」



 要はあれだ、メールにSNSと通信手段が便利になっても紙媒体は中々消えない、みたいなもんだ。日本でもそういうの聞いた事があるわ。SNSで出来るのに紙はいらないだろ、みたいなヤツとか、辞表をSNSで送り付けられたとか。


 特に『フレンド・チャット』の場合だとフレンド以外には見えないからな、こういう紙でやらないといけない事は多いのだろう。



「それで、来て貰えますかね?」


「ああ、わかった。…………ティアナは連れて行くのか?」


「いえ、お嬢は『ジュエルドラゴン』が生まれるまではここに残るそうでして。何でも気になる卵があるとか」



 それはきっと、アラムの卵だな。俺も気になる。もっと言えば、アルジャーノンの卵も気になる所だ。



「ああ、うん。心当たりあるわ。じゃあ俺だけ行くよ」


「ええ、お願いしますぜ」



 ◇



 カラーズカ侯爵の領地、その西側にある街がひとつ要塞化されていた。俺はバルタと共にカラーズカ侯爵の領都へと『拠点ポータル』を使って移動した後に、ここまで車を走らせて来た。


 そして街に着いてからはバルタの案内で移動し、今は応接室のような部屋でカラーズカ侯爵を待っている所だ。


 待っている間に、俺はバルタからこの街について教えられていた。


 この街は、実はカラーズカ侯爵領ではなく王国領にあたる位置にあるのだが、この街の領主も住人も、王国よりもカラーズカ侯爵につく方を選んだ。


 カラーズカ侯爵も、いかに国民の心が王族から離れているかという証明の為にこれを受け入れ、この街を要所として使う事にした。もちろん住人は、カラーズカ侯爵領にある街へと移送が終わっている。



「それって大丈夫なのか? スパイとか、裏切りとか」


「大丈夫ですぜ。その辺はしっかりと調べましたんで。一応は見張りもつけてますし、例え紛れ込んでいたとしても、ヘタな事は出来ませんぜ」


「まぁ、カラーズカ侯爵のやる事だから、抜かりはないとは思うけどな」



 と、バルタとそんな話をしているとノックの音が響き、若い兵士が開けた扉から、カラーズカ侯爵が入って来た。



「待たせた。呼び出しておいてすまない。私もやる事が多くてな」


「いえ、大丈夫です」


「…………ん? それはもしや、『ジュエルドラゴンの卵』と言うやつか?」



 カラーズカ侯爵は、俺達と対面のソファーに座る時に、目ざとく俺が両手で包み込むようにして持っている黒い卵に気が付いた。


 知っているって事は、ティアナから『フレンド・チャット』で聞いていたんだろう。ティアナはかなり嬉しそうだったからな。きっと父親に自慢したに違いない。



「ええ、そうです。別に手に持ってる必要も無いんですけど、何となく持ってしまうんですよ」


「いや、良い事だ。それは君の従僕になるのだろう? ならば、愛情をもって接すると良い。私は自らの愛馬にはそうして接している。その辺りは、馬もジュエルドラゴンも変わらぬだろう」


「確かにそうですね。では、このまま」


「うむ。……………………」


「カラーズカ侯爵?」


「ああ、いや…………」



 頷いたきり黙り込んでしまったカラーズカ侯爵に声をかけると、侯爵は少し照れくさそうに自分の顎を触り、俺に意外な頼みごとをしてきた。



「そ、その『ジュエルドラゴン』だが、私も持てないだろうか?」


「…………閣下、そりゃねぇでしょう。旦那は呼びつけられてここにいるんですぜ? 遊んでる場合ですかい?」


「いや、それは解っているが、なんでもその『ジュエルドラゴン』は、普段は装飾品の形を取り、いざとなれば騎乗する事ができるそうじゃないか。有事の時の脱出手段としては、これ以上の物はそうは無いだろう」


「…………まぁ、そう言われればそうでやすが。…………どうしやす? 旦那」


「…………すぐ出来るし、作ろうか」


「おおっ! 感謝する!!」



 子供のように目を輝かせたカラーズカ侯爵。彼が作った卵は、空色の殻の中に朝焼けのように輝く光がある、荘厳な代物となった。

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