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330回目 大事な話は酒抜きで

 

 宴もたけなわ。…………これって宴が一番盛り上がっている時だっけ? だと、少し過ぎてしまったかも知れないな。みんな程よく腹も膨れて、何人かは既にドリンク片手にデザートを楽しんでいる。


 広間の一ヶ所には、アリアとアラムに、ニッカとダッカという子供達が集まったテーブルがあり、そこには子供達の面倒を見る為かアレマーとカーネリアが一緒にいた。


 アレマーは自分の子供であるアリアとアラムを、カーネリアは自分に一番懐いているニッカとダッカの面倒を見ているようだ。


 デザートのケーキにがっついて口の回りをベタベタにしている子供達を見て、苦笑しながらも口の周りを拭いてあげている。中々に微笑ましい空間がそこには広がっていた。


 …………みんな楽しそうだな。あれなら、迫る別れの話も受け入れてくれるだろうか?


 そんな事を考えながら子供達の所に向かおうとする俺の肩を、誰かの手が掴んで引き止めた。



「どこに行くの? ガモン。私の所を素通りだなんて、呼んでおいてそんな事をするのはマナー違反ですよ?」


「よ、よう、ティアナ。いや、君は女子会で忙しそうだったから、邪魔するのもどうかと思ってな」


「それでも挨拶くらいは出来るでしょう? 私の所には辺境伯令嬢のリメイアも、辺境伯夫人のマチルダさんもいるのよ? 流石に挨拶なしというのは、大きな失礼に値するわよ?」


「い、一応、辺境伯であるノルドには挨拶したぞ? 何せ一緒に飲んでいたからな、確実だ」


「そうよね。…………でも、隣でそれを見ていたからこそ、私達を置いて他に行くのが許せないのよ?」


「いてっ!? ちょ、耳を引っ張らないでくれ、痛いから!?」



 ついには肩に置かれた手は俺の耳に移り、俺はリメイア達の待つテーブルへと連行される事になった。



「それにね、ガモン。貴方が子供達にしようとした話、白狐族の里が見つかった話でしょ?」


「え、ああ。そうだけど、何で知ってるんだ?」


「カーネリアから『フレンド・チャット』で聞いたからよ。貴方そんな大事な話を、今の幸せそうな子供達に、そんなお酒の匂いをさせて言いに行くつもり? そんなの可哀想よ。今は楽しい時間なの。そう言うのは後で、お酒がしっかり抜けた状態で話しなさい」


「……………………はい」



 ティアナに怒られてしまった。


 でも、確かに酒の匂いをプンプンさせてこんな話をしに行ったら嫌われるかも。具体的には親戚の集まりで、いつも会った瞬間からもう酒くさいおじさんと同じくらいには嫌われるかも。


 …………ティアナの言う通り、子供達に話をするのは、しっかりと酒が抜けてからにしよう。


 そんな訳で、俺はその後はティアナに捕まりっぱなしになった。


 盛り上がった宴会は、それからしばらくして終わりを迎えた。クランメンバーの顔合わせとしては大成功だったと思う。


 そして次の日、しっかりアルコールを抜いた俺は子供達を呼び出して、ニッカとダッカに白狐族の里が見つかった事を伝えた。


 ニッカとダッカは、落ち着いた様子で俺の話を聞き、アリアは驚いた様子で、アラムは少し不安げに、二人の事を見ていた。



「わかりました。白狐族の里に帰れるようになったら教えて下さい。私はダッカと一緒に、一度は帰ろうと思います」


「…………!」



 落ち着いた様子のニッカの言葉に、アラムが何か言いたげに口を開いたが、結局は言葉を飲み込んだ。アラムとしては、やはりニッカとダッカに帰って欲しくは無いのだろう。



「うん。なら白狐族の里に連絡をとるけど、一度は帰るってのは、また戻って来るつもりがあるのかな?」


「はい。またここで暮らすのは難しいかも知れませんが、ガモンさん達に恩は返したいと思っています。それに、アリアとアラムは友達ですから、また戻って来たいです」



 いつも子供達だけで遊んでいる時とは違い、ニッカはしっかりと自分の考えを述べた。その様子に俺は少し面食らいはしたが、ニッカとダッカも、いつかこういう日が来ると覚悟をしていたのかも知れない。



「そうか、わかった。なら、準備だけはしておいてくれ」


「「はい」」



 しっかりと頷いたニッカとダッカと、少し不安気に二人を見つめるアリアとアラムを残して、俺は部屋を出た。


 すると部屋の外にはアレマーとカーネリアがおり、俺は四人の事はこの二人に任せる事にした。俺には子供達を慰めたり元気づけたりするのは荷が重い。だって駄菓子とかケーキを出すくらいしか思い付かないもの。完全に子供騙しだもの。


 しかし、ニッカはまた戻って来たいと言っていたが、そう簡単ではないだろう。何せ一度は拐われて、しかも奴隷にされているのだ。里としては、そんな事が起きたのだから、子供達を護りたいと考えるだろうからな。



「……………………うーーん、ニッカとダッカが帰る前に、何か思い出づくりでも考えるかな。二人が帰るとなると、アリアとアラムも寂しいだろうからな」



 そんな事を考えながら、俺はアレマーとカーネリアが入っていった部屋の前を後にした。

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