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33回目 フレンドガチャ

 ソエナ村へとやって来た俺達は、村長の協力もあって村の中心部にある教会前の広場を、拠点として使わせてもらう事になった。


 拠点となる広場の一角にカラーズカ侯爵家の箱馬車を止めて、教会に付属している厩舎に馬を入れると、バルタが馬車の各所を操作し、箱馬車は元の二倍程の大きさへと広がった。


 …………何と言うか、素直に驚いた。なんかテレビで、こういう風に広がるキャンピングカーを見た事があるが、それだって横が出っ張るていどの広がり方だった筈だ。でもこの箱馬車は、縦も横も二倍程に広がった。


 魔法的な仕掛けだろうか? よく解らないけど、凄いな。


 ちなみに箱馬車の上部からはオーニング、要は日除けの屋根が引っ張り出され、俺とバルタのテントはその側に立てた。なんか本当にキャンプ染みてきたので、ちょっと楽しい。


 そして俺達のキャンプ地となった箱馬車を、村の子供達が遠巻きに見ていた。俺達が敷地を借りた教会は、子供達が最低限の読み書きを教えられる学校でもあるため、広場には俺達が来る前から数人の子供達が遊んでいたのだ。



「何か子供達が見てるな。まあ、こんな箱馬車なんか見たこと無いだろうからな。興味あるんだろ」


「ガモン、あのガチャから出て来たお菓子とかまだあるかな? あるんなら、あの子供達に食べさせてあげたいんだけど」


「ああ、そりゃ良い考えですぜ。村の子供達に懐いて貰えりゃあ、大人達も多少は緊張が解れやすぜ」


「ああ、お菓子か。何が残ってたかな…………」



 ガチャから出たお菓子は、ガチャのハズレ枠なだけあって大量にあったのだが、何気に俺達もけっこう食ってるのだ。


 だって、おいしいんだもん『うめえ棒』。そういやあ子供向けの知育菓子も幾つか出ていたのだが、ティムとバルタが全部を遊びながら食べてしまっていた。


 練って色が変わるやつはもちろん、ミニチュアのハンバーガーを作れるやつとか寿司を作れるやつとか。こいつら意外にも☆3のアイテムなのだ。


 知育菓子は見た目が面白いだけで味はイマイチってのが俺のイメージだったのだが、最近のは意外とおいしい事を知った。そして作っている間、普通の少女のようにはしゃぐティムが可愛いかった。え? バルタ? はしゃぐオッサンなんか見るわけないだろ。そんなやつは居なかった。


 そんな訳で、子供達に配ろうにもお菓子のストックが少々心許ない。



「うーん。…………あ、そうだ」



 ガチャ・マイスターの画面を開いて悩む俺だったが、画面の上部に『フレンドポイント』が貯まっているのが見えた。『フレンドポイント』は、本来はフレンドの数によって毎日少しずつ貯まっていく物なのだが、実は幾つかのクエストでも貯まっていたのだ。


 まあ、そのクエストは『一日一回スキル画面を開く』とか『フレンドと会話する』とかの至極簡単で毎日あるデイリークエストだ。その分、そのポイントで回せる『フレンドガチャ』の内容もお察しなのだが、今回はそれがちょうど良いかも知れない。



「どれどれ…………」



 俺は早速『フレンドガチャ』の画面を開いた。いつものガチャマシーンがある倉庫なのだが、今回はガチャマシーンが中央に一つだけであり、その外見も金や銀ではなく、店先にあるような普通のガチャマシーンだった。


 これはもしかして、レアとか出ないヤツか? と、確率を見てみると、☆1が60%、☆2が35%、☆3が5%となっていた。そして、☆3からは食品系しか出て来ないとの明記もあり、どうやら駄菓子に片寄った物が、このフレンドガチャであるようだ。


 …………まあ、今日みたいな事もあると考えれば悪くない。俺だって、たまには駄菓子が食いたくなるし、かといって駄菓子目的でノーマルガチャは回せない。だって、一回につき金貨一枚(十万円)だぞ? うめえ棒一本に十万は出したくない。あれって十円の駄菓子だし。


 その点フレンドガチャなら無料である。そりゃフレンドポイントを貯めるのには時間が掛かるが、逆に言えば少し待つだけでいいのだ。


 と言う訳で、ガチャ・マイスターの画面の上に並ぶフレンドポイントの表示をみると、フレンドガチャを三十回程いけるくらいに貯まっていた。


 レッツ! フレンドガチャ!!


 ガチャを回し、次々と出てくるお菓子が山になった頃、ティムが自ら子供達を呼びにいった。


 そして、子供達を連れて戻ってくるティムと入れ違いに、バルタは「あっしはあっしで、情報収集してきまさぁ」と言って、どこかへと歩いていった。


 俺はバルタに軽く手を上げて見送ると、地面に大きな布を敷いて、その中心にお菓子を山と盛った。


 今回のフレンドガチャは運が良かったのか、☆2の割合が☆1よりも多かった。そのおかげで、大袋のお菓子が多く出たのは丁度良かった。



「なにこれ! なんか変なのがいっぱいある!」


「貴族様のお菓子ってかわってるな!」


「どうやって食べるのこれ?」


「うわ! これうめぇ!」


「何でもう食ってるんだよ!」



 流石に子供達が集まると大騒ぎだ。子供達は初めて食べるのであろうポテトチップスやらパイのお菓子やらに大興奮である。


 中でも子供達の心を掴んだのは、大袋入りの『カレーせんべい』だった。


 これは三袋もあったのだが大人気で、真っ先に無くなった。まあ、うまいよねカレーせんべい。俺も大好きだよ。


 でも、世界の壁を越えても子供はカレーが大好きなんだな。


 …………あーー、カレーかぁ。なんか食いたくなってきちゃったな、カレーライス。

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