328回目 クラン・パーティー
連絡手段である『フレンド・チャット』をフル活用し、クランメンバーをジョルダン王国の王都『ジョネイブ』に新しく出来た拠点に集めた。
まず転移して来て、「へぇーー、ここが新しい拠点かぁーー」から始まり、「ちょっとだけ見て回ってくる」となって屋敷の中を歩いて行き、しばらくしてから、「…………なんでここ、こんなに広いの?」などと聞かれるまでがワンセットである。
ついでにこの屋敷がありえない程に広くなった経緯を聞いて、ドン引きするのも全員に共通する光景だった。
そして俺は、クランメンバーの全員を広間の一つに集めた。そして全員の視線が集まる壇上に立ち、クランのリーダーとして全員を見渡して声を上げた。
「えーーっと。新たにジョルダン王国の王都『ジョネイブ』に拠点が出来ました。これでタミナル・ジョネイブ・ラグラフ王国・ヴァティーのダンジョン・カラーズカ侯爵の領都バウル・あと最後に『◇キャンピングカー』と、六ヶ所は自由に行き来出来るようになりました」
「「おおーーーーっ!」」
☆4『拠点ポータル』で行き来できる場所が増えた事に、仲間達から歓声が上がる。でも、今のところ行けるのはジョルダン王国とテルゲン王国、そして要塞一つ分でしかないラグラフ王国の三ヶ国に留まっているんだよな。
少し前に、大まかな世界地図(と言うより大陸地図)を見たんだけど、ジョルダン王国もテルゲン王国も、位置付けてきには中堅国家なんだよな。南に広がる小国郡に位置するラグラフ王国も、モンスターが多いから戦争を仕掛けられてないだけで、自身の力だけで国家を運営するのは厳しい感じだ。
おっといけない。思考が逸れてしまった。
俺はザワザワしている仲間達を手を軽く挙げて宥めて、続きを話す。
「みんな解っているとは思うけど、行き来できるからと調子に乗ってはいけない。気軽に移動できるからこそ、『フレンド・チャット』も併用して有効利用してくれ。特に女神ヴァティーの所だ。ヴァティー様は遊びに行けば喜ぶかも知れないが、相手は女神様だという事を忘れないように」
「いや、…………女神様って、会いに行っていい存在なのか?」
そう呟いたのはトルテで、その周囲にいたやつらも賛同するようにウンウンと頷いているが、ヴァティーの場合、遊びに行かないと拗ねるまであるので、程々に遊びに行って貰いたいものである。
「節度を持って遊びに行く分には大丈夫だ。もし心配なら、アルジャーノンに聞くといい。ヴァティーとアルジャーノンは盟友だからな。…………と、挨拶はこのぐらいにして。見て解る通り、ここには大量の酒と料理を用意した。今日はクランメンバーを集めた初のパーティーでもある。中には初めて顔を合わせるメンバーもいるだろうから、よく親睦を深めて欲しい!」
俺が全員を集めた広間には、幾つもの長テーブルや丸テーブルが用意され、長テーブルには肉や魚に野菜と、和洋中の様々な料理が並び、丸テーブルにはガチャから出てきた酒やジュースと山盛りのカットフルーツが置かれている。
飲み物とフルーツに関してはガチャから出した物を並べたりした程度だが、料理は違う。まぁもちろんガチャアイテムなのだが、ちょっと形式が違う。
☆4『プレシャス・ケータリングサービス』
・使いたい場所(広間もしくは広場)でチケットを破る事で、最大で半日間のケータリングサービスを受ける事が出来る。
・規定の料金を払えば人数に制限はなく、どの国の料理でもパーティー料理として提供してくれる。
・食材の持ち込みも可能で、食器類は状況に合わせた物を用意してくれる。後片付けの必要もない。
と、言う訳で、これを使いました。
料理を作っているのは異空間、広間の壁に設置された出入り口から専門のスタッフが料理を次々に運んで来てくれる。
どうせなら、ちょっと良い物を食べたいと、料金も提示された金額に上乗せして払ったし、和洋中と全部のパーティー料理が欲しいと言ったら、それにも対応してくれた。これ、凄くいい!
…………ただ、一枚しか無かったんだよな。次にこんなパーティーなんてやるのが何時になるか解らないが、その時までにまた出て来て欲しい。
「さぁみんなグラスを持て! 挨拶はここまで! ここからはパーティーの時間だ! 乾杯!!」
「「かんぱーーい!!」」
俺は皆と共にグラスを掲げて、中に入っていたシャンパンを飲み干した。
パーティー会場となった広間では、クランメンバーの皆がさっそく料理に取り掛かっている。
ここにある料理は全て地球の物だ。和食・洋食・中華と、めぼしい所は揃っている。
そんな中で、一際ハシャイでいる少年が目に入った。簡素なローブに身を包んで、満面の笑顔で料理に突撃を繰り返している。
「ふほほほほっ! これは良い! これは良いの!! テレビや漫画で見た料理が実際に並んでおるわい! これは全部食べてみねばならんな! 酒もあるし忙しいのぅ!!」
「…………ドゥルク…………」
そう、あのハシャギ捲っている少年こそが、かの大魔導士ドゥルク=マインドである。ホムンクルスも完成して、ついにドゥルクもフレンドとなった訳だ。しかし…………。
いや、若い体も用意して貰うとは聞いていたけど、若過ぎだろ。子供じゃん。バスも映画も子供料金でいけちゃう程に若いんだけど。若作りにも程があるだろ。
「こりゃ旨い! こりゃ旨いのぅ!!」
ドゥルクのあまりのハシャギっぷりに、俺は少し引いたので放っておく事にした。
ちなみに余談だが、次にドゥルクを見た時には、ホムンクルスの胃袋の大きさがドゥルクのテンションについて行けなかったらしく、苦しそうに唸る姿を見掛けた。
そして、その次に見た時にはプライドと一緒にホムンクルスを脱ぎ捨てたドゥルクが、幽霊の状態で料理を喰い漁っていた。脱ぎ捨てられたホムンクルスの顔が、ちょっと恨めし気だったのは、気のせいだと思いたい。
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