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324回目 重鎮達への説明

 王都の外門の前で待っていたギルドマスターのエルドルデに連行されて、俺達はまず王城へと行く事になった。


 いったいどうして俺達が王都に着くのが解ったのかと、誰かがチャットで報せでもしたのかと思っていたら、俺達がタミナルを出たのは当然ターミナルス辺境伯から伝えられ、後は到着するであろう今日に、空を飛びながら見張っていたらしい。


 エルドルデは鳥の獣人だからな。そうか、飛べるんだった。


 ちなみに俺達を見つけるのは簡単だったそうな。まあ、他がいたとしても馬車であり、その中を車が走って来るのだから、そりゃ解るだろって話である。


 そして王城に着いた途端に、俺達の中から裏切り者が出た。



「じゃあ、アタシ達は関係ないから、街に遊びに行ってるよ」


「うん。アタシ達は関係ないもんね。終わったらチャットで連絡して」



 そう宣ったのはトレマとイオスの双子である。コイツら、さっそく逃げる気だ。しかも…………。



「「ガモン、お小遣いちょうだい!!」」



 と、金まで無心してくる始末だ。ちょっと自由すぎやしませんか?


 いやまぁそうは言っても、コイツらは実際遊びについて来たんだろうし、確かに王様の所に行っても、初見のコイツらは別室で待たされるだろうから、遊びに行くのは別にいい。ただ、流石にコイツらだけで放り出すのは気が引ける。


 何せトレマとイオスには三十年のブランクがあるのだ。三十年もあれば変わるモノは多い。街や人はもちろん、常識だって変わりかねない。


 昔は問題なかったモノが今は大問題になる、なんてのはよく聞く話だ。俺がいた日本だと、俺が子供の頃はテレビで放送出来ていたモノが、大人になった頃は放送出来なくなっていたりとか。


 俺が子供の頃は学校で先生にゲンコツを落とされていたが(もちろん俺が悪い)、今だと体罰教師としてネットに晒されたり逮捕されたりと、けっこうエグイくらいには変わるのだ。


 と、言う訳で。双子の事はこの街に一番詳しいであろうカーネリアに押し付けようと思ったのだが。



「あ、私もちょっと実家に顔を出したいから、ここで別れるわ。終わったら連絡して」



 などと先手を打たれてしまった。


 そうなるとシエラかアレスになるかなと、俺が二人を見ると、シエラが双子の案内役を買って出てくれた。


 男のアレスを付けるよりは、自分が行こう。とでも思ったのかも知れない。



「アレス、ガモン様の事はお任せしますね」


「ああ。了解した」



 シエラとアレスのそんなやり取りで話は決まり、結局王城に入るのは俺とアレスの二人だけになってしまった。


 ちなみに双子には、ちゃんとお小遣いをあげました。何気にこの二人、王都までの道中でけっこう働いてくれたのだ。


 索敵はもちろんとして、途中に現れたモンスターとの戦闘にも積極的だった。と言うか、率先して外へ飛び出して、アッサリと始末していた。


 モンスターの素材も金になる物だけを素早く剥ぎ取っていたので、実に無駄のない動きで勉強になった。なのでこれは、お小遣いと言うよりは仕事に対しての報酬である。


 俺とアレスは去っていく仲間達を見送って、待っていたエルドルデと一緒に王城へと入った。



 ◇



「……………………と言う感じで、カラーズカ侯爵とティアナを救出した訳です」



 俺の話を聞くジョルダン王国の国王であるジョゼルフと宰相のロイエン、そしてギルドマスターであるエルドルデは、救出作戦の序盤でアレスが魔族騎士になった辺りから、既に頭を抱えていた。



「…………一応言っておきますけど、証拠は残さないようにしてきましたよ? 魔族騎士についても、流石にあの状況で全てをカラーズカ侯爵の策略にするのは無理があると思いますし」


「…………無理があるだろう」



 俺は証拠を残してないから大丈夫と説明してのだが、どうやら通らなかったらしい。



「状況的に考えて、カラーズカ侯爵との繋がりは確実と見られているでしょうな。我が国も、ターミナルス辺境伯の屋敷が丸ごと消えた訳ですし、関わりがあると捉えられるのは間違いありません」


「そうね。あまりに突拍子もない話だから、深くツッコム事は出来ないでしょうけど、向こうはガモンちゃんのスキルを知らない訳だし、『勇者』の力が魔族に関係する物だと誤解した可能性もあるわね」



 ジョゼルフに続いて、ロイエンとエルドルデがそう言って俺に厳しい視線を向け、俺はスッと目を逸らした。


 三人はそんな俺にそろって溜め息をつき、ジョゼルフは使用人に注いで貰った水を飲み干してから、表情を引き締めた。



「ともかくだ。余がターミナルス辺境伯から受けた報告にも間違いはないようだし、テルゲン王国から追及があっても『知らぬ』で押し通す。むしろターミナルス辺境伯の屋敷とその使用人達が消えた件を追及するとしよう。…………ガモンが考えた通りに動くのは少し釈然とせんがな。ロイエン、頼むぞ」


「かしこまりました。ではそのように対処いたします」


「それと、…………確認しておくが、現状のテルゲン王国は滅ぼすのだな?」


「滅ぼす…………ってのはアレですが、頭はすげ替えます。新王にはカラーズカ侯爵について貰うつもりです」


「ガモン、貴様には覚悟が足りぬ。やるならば徹底的にやれ、禍根は残すな。言わずともカラーズカ侯爵程の人物ならそうするであろうが、女子供だろうと赤子だろうと、ヌヌメルメ家の血を一滴たりとも残すでない。でなければ、新たな争いを引き起こす事になる。貴様に直接手を下せとは言わぬが、そうなると言う自覚は持て」


「……………………」


「貴様は平和な世界で生きて来たのであろうが、あえて言わせて貰うぞ。人の死に慣れろ。命は軽く扱う物ではないが、実際に軽いのだ」



 ジョゼルフのその言葉は、俺がこの先も一生涯忘れる事が出来ない程に、俺の中に深く突き刺さった。

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