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321回目 侯爵閣下はコーラがお好き

「ただいまーー」



 一度『フレンド・チャット』を使ってバルタに連絡を取った俺は、『絆の証』の瞬間移動を使ってバルタの所まで移動して来た。


 移動先はバルタに与えられた部屋だ。バルタはテーブルの上に幾つものナイフを並べて手入れをしている所だった。



「お帰りなさいやせ。上手く行きやしたか?」


「ああ。何せ☆5『虚言の面具』なんて反則級のアイテムを使ったからな。失敗する方が難しいくらいだったよ。俺が何を言っても納得するんだもの」



 まあ、俺が離れた今は『虚言』も薄れ始めているだろう。そしてしばらくすれば、自分がしでかした事の重大さに真っ白になって震えるに違いない。


 そうなると、チョロマキーノの心は大分弱くなる。なので俺は、もう一つ仕掛けを打っておいた。兵士の中でも発言力がありそうな数人に、チョロマキーノが真っ白になったら、王都へ戻るよう進言するように言い含めておいたのだ。


 心が弱った所に部下からの進言があれば、それに抗うのは難しいだろう。それ以前にチョロマキーノ自身、安心できる家に帰りたい気持ちが湧くだろうしな。


 取り敢えずこれで、カラーズカ侯爵の領地が国に取られる事態を先伸ばしに出来た。まずは一安心って所だ。



「おっと、そういやカラーズカ侯爵に頼まれてやしたね。旦那が戻ったら部屋に来るようにって言ってやしたぜ」


「ん? まあ報告はするつもりだったから良いけど。じゃあちょっと行って来るか。何処にいるんだ?」


「執務室ですね。この部屋の外にいるメイドに言えば、連れてってくれますぜ」


「了解」



 バルタに言われて部屋を出た俺は、部屋の外に控えていたメイドに頼んで、カラーズカ侯爵が仕事をする執務室へと向かった。



「旦那様、ガモン様をお連れしました」


「入れ」



 執務室の扉を開けてくれたメイドに軽く会釈をして中に入ると、カラーズカ侯爵は書類の山に埋もれて仕事をしていた。



「すまないが、そこのソファーに座って少し待っていてくれ。お茶が欲しければ壁の所にあるから、自分で淹れてくれ。私は仕事中に使用人を部屋に入れない事にしているんだ」


「わかりました」



 俺の方を見ずにそう言って働くカラーズカ侯爵の言葉に従って、俺はソファーで待つ事にした。まぁ、お茶はスキル倉庫からペットボトルのやつを出したけどな。


 俺はカラーズカ侯爵が俺を気にしないようにと、マンガを幾つか取り出して読みはじめ、それに気づいたからか、カラーズカ侯爵は結構長いこと仕事をしてから、俺の所へとやって来た。



「待たせたな。まずは改めて礼を言っておく。私やティアナを救ってくれた事と、おそらくはこの領地も救ってくれた事に対してだ。本当にありがとう」


「いえ、カラーズカ侯爵を助け出す事は、これから先の事を考えれば俺にとっても必要な事でした。権力を持った協力者の存在が、この先必要になりますので」


「…………少しだけだが、バルタから聞いている。『方舟』だったか。そんな危険極まりない物が存在している事すら知らなかったとはな。かつての勇者達の記録を調べてみても、そんな物は出て来なかった。世界が滅亡する危機が常に頭の上にあると思えば、ゾッとする話だ」


「詳しい話は、後でドゥルクやキャンパーに聞いて貰えますか? 俺が一人で説明すると、穴がありそうなので…………」


「フッ、そうか分かった。そうしよう。…………しかし、あと三年だったか。その短い期間で『方舟』を何とかすると言うのは無茶な話だな。そして何より、その為に召喚されたガモンを私が助け、後には逆に助けられ、そして『方舟』の件では協力者となる訳だ。因果とは、どこで繋がっているか解らんな」


「そうですね。確かにカラーズカ侯爵の言う通りだと思います」


「ところでだが、それは異世界の飲み物だな? ティアナも幾つか持っていたな」



 ああ、そう言えばこの世界に来たばかりの頃はガチャもろくに回せなかったから、カラーズカ侯爵はガチャ産の物をよく知らない訳だ。



「…………一つ頼んでもいいか?」


「なんでしょう?」


「ウム。実はな、ティアナが持っていた物でコーラと言う物があったのだが、それが少しばかり懐かしくてな。出来れば少し譲って貰えないか?」



 おっと、カラーズカ侯爵はコーラがお気に召していたのか。…………であれば。



「もちろん良いですが、どうせならコーラに合う食べ物も出しましょうか」


「おっ、それは良いな。少し小腹が減っていた所だ。ぜひ頼む!」



 俺はテーブルの上にロング缶のコーラと、ハンバーガーにポテト、ナゲットなどを並べた。そしてそれらを食べながら、差し向けられた王国軍の事の顛末を報告した。


 カラーズカ侯爵は☆5『虚言の面具』の力に顔を引きつらせながら、それならしばらくは時間が稼げるなと安堵していた。国王直筆の命令書を焼失したとなれば、良くてチョロマキーノの死罪。悪ければ一族全体にも罪が及ぶそうだ。


 …………マジか、アイツ死んじゃうのか。これは完全に俺のせいだな。



「気に病むな。これは王位の簒奪も含んだ戦争だ。戦争である以上、大勢の人が死ぬ。そしてその責は、旗印である私にあるのだ」


「……………………」


「それに、ズルルケム家はそう簡単に殺されたりはせぬ。恐らくはその前に国を割るであろう。一国宰相が国を割るのだ。それは我々にとって追い風になる。ガモンよ、お前は最高の仕事を成したのだ。胸を張れ」


「…………はい」


「…………呑み込むには時間が掛かるか。ならばそれもよい。お前達はしばらくの間ゆっくりしていろ。サザンモルト辺境伯の調略は、私が自ら行う」



 カラーズカ侯爵はそう言うとコーラを飲み干し、頼もしさを感じる笑顔を浮かべた。

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― 新着の感想 ―
[一言] まぁ勅命の書かれた文書焼き捨てたとか普通に反逆罪適用されてもおかしくない所業だからな……w
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