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319回目 ハゲたチョビ髭

王国軍を手玉に取る所を端折っていたのですが、そこを端折るのは違うだろ、と指摘を受けましたので書き直す事にしました。


ので、最後の部分を次に繋がるように変えてあります。ご了承ください。

 俺は、虚言をばら蒔いた街から少し離れた所で一泊した。なぜ街の中で泊まらなかったのかと言うと、もういいかと思って☆5『虚言の面具』を取り外して歩いている時に、俺が虚言を刷り込んだ兵士が俺を見て訝しげな顔をしたからだ。


 そして、少し話し掛けられて「不躾な確認なんですが、貴方はカラーズカ侯爵の部下なのですよね?」と質問された。


 まぁ俺は完全に地球の現代ファッションで歩いていた訳だから無理もない。ファンタジー世界でバイカーファッションの奴が歩いていたら怪しすぎるものな。貴族に仕える騎士には絶対見えないもの。


 でもこれは切り抜けるのが簡単だった。この世界に来たばかりの頃に、カラーズカ侯爵から貰った紋章付きの短剣を見せるだけで済んだのだ。


 貴族の紋章付きの短剣なんて、普通には手に入らないからな。無事信じて貰えた。


 ともあれ、虚言をかけた俺が怪しまれたのは事実だ。この街には長くいない方がいいなと、俺は街の外で王国軍が来るのを待つ事にしたのだ。


 そして一夜明けて、王国軍が街へとやって来た。その数はざっと三百人。一個大隊ってやつだろうか? あまり詳しくはないが、国王からの命令書を運ぶだけなら多すぎる気がする。


 …………ドゥルクが、カラーズカ侯爵の返事がどうあれ、この軍は近くの砦にそのまま入って近隣の貴族に協力要請に走ると言っていたが、有り得るかも知れない。俺の『フレンド・クエスト』の内容を見るなら、七日目に決着がつくと。ならば受け入れられない勅命からの包囲戦だと、そう言っていた。


 確かに国の敵となった上で、完全ではなくとも包囲されたのなら、カラーズカ侯爵の領地は詰むからな。


 さて、三百人からなる王国軍は、街には入らずに外で簡易的な陣を敷いて休憩をとり始めた。休憩のために天幕まで張るのは、辺りにうっすらと積もる雪のせいだろう。雪の上じゃ休めないもんな。


 そしてそんな王国軍の中から、一部が街へとむかった。



「キャンパー、街に行って様子を見て来てくれるか? 俺の仕掛けが上手くいくかどうかを知りたい」


『かしこまりました。見て来ます』



 キャンパーの入った偵察用ドローンが街へと飛んで行き、俺はソワソワしながらしばらく待った。


 そして待つこと三時間。果報は寝て待てではないが、待ち疲れて昼寝していた俺の元にキャンパーが戻って来た。



『マスター、ただいま戻りました』


「…………ん、どうだった?」


『問題ありません。王国軍は、この街にカラーズカ侯爵が密かに立ち寄ったと信じたようです。目撃情報と、それを見た人間の少なさから、カラーズカ侯爵は少人数でここを訪れている、と認識したようですね。『どうやら、あの魔族とは無関係だな』と言っているのも聞こえました』


「…………よし! 上手くいったな、完璧だ。じゃあ後は、彼らにお帰りいただくだけだな」



 俺の作戦は、次の段階へと移行した。



「…………なるほど、コイツがあの王国軍の司令官か」


『はい。街の有力者からはズルルケム侯爵と呼ばれておりましたね』


「ズルルケム…………!」



 その名前に、ついつい吹き出しそうになってしまい、俺はキャンパーが出したウインドウから顔を背けた。


 キャンパーの映し出すそれには、まだ若そうなのに前頭部から頭頂部にかけてがかなり残念な事になっている男の顔が映し出されていた。威厳を出すためか髭も生やしているのだが、髭の方も薄いのか、チョビ髭になってしまっている。もういっその事おもしろい。


 なんかこの世界に召喚された時にいた、偉そうなハゲチョビを思い出すな。ひょっとしたらアイツをリスペクトしているのかも知れない。



「…………おっと、のんびりはしてられないな。アイツらが行軍する前に何とかしないとな」



 俺はさっそく☆5『虚言の面具』を身に付けて、ふと自分の姿を思い出した。


 …………マズイよな? この姿は。どうもこの『虚言の面具』は違和感に弱いみたいだからな。後々この違和感に気づかれたら、その場は騙せても後々に気づかれる。


 俺は出来るだけ見つからないように王国軍が休憩している陣地に近づくと、周囲を警戒していた一人に声を掛けて誘い出した。


 そして催眠術でもかけるようにソイツから鎧を脱がせて眠らせると、その王国軍の鎧へと着替えた。


 …………着替えたのだが。



「…………最悪。…………重いし汗臭いし、良い所がひとつもない…………。コイツら普段、こんなの着てんの?」



 俺と似ている体型の奴を引っ掛けたから、サイズ的には問題ないが、ただただ最悪である。もう脱ぎたいもの。脱いで風呂に入りたいもの。…………消臭剤でもかけようか? いやダメだな。匂いで気づかれる可能性も有り得る。違和感は極力減らさないとな。



「…………うぅーー。ガチャ産じゃない装備がこれ程ヤバイとは思わなかったな。まぁでも、最悪の気分だけど…………、やるかぁ」



 取り敢えずは情報収集だ。まだこの王国軍の司令官の名前が『ズルルケム』という面白い名前だって事しか知らないからな。まずは古参っぽい兵士でも探すとしよう。

面白い。応援したい。など思われましたら、下の☆☆☆☆☆から評価をお願い致します。


モチベーションが上がれば、続ける力になります! よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] いや、どうやって言いくるめて燃やさせたかが見所で省略するとこじゃないんじゃないか・・・
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