314回目 領都バウル
ジョルダン王国に弁明に行く前に、ティム…………じゃなくてティアナとカラーズカ侯爵、さらにはその使用人達を領都まで送らなくてはいけない。
そして、そこにも拠点を作って『拠点ポータル』を設置。次にテルゲン王国の王都にあったターミナルス辺境伯の屋敷を管理していた使用人達をタミナルの街に送って…………と。弁明に行くのはそれからだな。
と、言う訳で。俺達は何組かに別れて車に乗り、カラーズカ侯爵の領都を目指す事になった。
わざわざ何組かに分けたのは、全ての使用人をフレンドには出来なかったからだ。フレンドの人数上限はおそらく増えるのだが、その上限が分からないからな。
俺のフレンドは、『方舟』と戦う為の戦力でもある。不用意にその枠を埋めるのは、やはり控えるべきだろう。
もちろん、俺の一存でフレンド登録を消す事もできる。が、フレンド機能はハッキリ言って便利すぎる。一度与えて、使い慣れた所で取り上げるなんて残酷だろう? それなら、最初から無い方が諦めもつく。
なので、カラーズカ侯爵をフレンドにした以外はフレンドを増やしていないのだ。そうなると必然的に『◇キャンピングカー』には乗れない。
裏技的な方法として『龍神の星籠』に入っていて貰えれば乗せられるのだが、誰だってそんな荷物扱いは嫌だろう? だから他に車を出す事にしたのだ。
「女神ヴァティー様。大変お世話になりました。このお礼は後日必ず致します」
『気にせんで良い。礼ならばガモンから頂いておるでな。それで気が済まぬのなら、酒でも持って来るが良い。妾も眷属共も、酒には目がないでな』
一夜明けて。カラーズカ侯爵の領都に出発する俺達は、このダンジョンの主にして女神のヴァティーに挨拶をしていた。
全員を代表してカラーズカ侯爵が頭を下げ、ヴァティーは軽口で答えた。主であるカラーズカ侯爵に対して失礼だと感じたのか、ホムンクルスに憑依している状態で、少女のような姿のヴァティーが言った事にムッとした使用人も少数いたが、ヴァティーは気にしていなかった。
…………って言うか、ヴァティーはずっとあの姿でおり、後ろに鎮座している巨大な体が本体である事も隠していた。俺も仲間達やカラーズカ侯爵とティアナには話したが、他の使用人達には話さなかった。この様子を見るに、カラーズカ侯爵も言わない方が良いと判断したらしい。
ちなみにこの場で一番苦労しているのは俺である。視線をホムンクルスのヴァティーに固定していないと、ヴァティーがフレンドから外されてしまうかも知れないからな。本体があのデカさだから、けっこう大変なのだ。
『では達者でな。また遊びに来るとよい』
ヴァティーが話を締めくくり、俺達は地上へと送られた。
出た先は『邪眼族の螺旋迷宮』がある湿原地帯の外側だった。ヴァティーが気を使って、湿原地帯の外側に送り出してくれたのだ。
「……………………雪だ」
外に出て見ると、チラチラと白い雪が降っていた。まだほんの少し降っている程度だが、これは急いだ方がいいと、俺は『◇キャンピングカー』と二台の☆4『マイクロバス』を取り出した。
使用人達が乗るのは、もちろん『マイクロバス』である。そしてバスの運転手は、アレスとバルタにお任せした。
そうして 、車に乗り込んで出発した俺達は数時間かけてカラーズカ侯爵領の領都へとたどり着いたのだった。
「ようこそガモン! カラーズカ侯爵領、領都『バウル』へ!!」
「おお、ここがカラーズカ侯爵の領都か」
カラーズカ侯爵領に着いた俺達は、当然ながら外門をすんなりと通され、領都へと入った。
数日前に領都へと走らせたイージドがちゃんと仕事をこなしてくれたらしく、外門から中に入った先には、いつカラーズカ侯爵が戻ってもいいようにと、馬車が用意されていた。
ちなみにそれを見た瞬間に、俺はイージドに今から向かう旨のチャットを送って無かった事に気がついた。
◇ガモン
《今、領都に着きました。カラーズカ侯爵とティアナも一緒です》
◇イージド
《着いたってどういう事ですか!? 先に言っといてくれないと出迎えが出来ないじゃないですか!!》
「どうしたの? ガモン」
「…………なんでもない。それよりティアナ、あの大きくて立派な建物はなんだい?」
「え? あぁ、あれは大聖堂だよ。この街でも一番キレイな建物でとても広いから、中で演劇が行われる事もあるんだよ」
「それは楽しそうだな」
カラーズカ侯爵家が用意していた馬車の中に、大人数が乗れる屋根の無いオープンカーの様な馬車があり、俺はそれに乗り込んで現実逃避がてら街の景色を楽しんだ。カラーズカ侯爵は豪華な装飾のある箱馬車に乗り、ティアナもそれに乗る筈だったのだが、俺がこっちに乗りたいと主張した為か仲間達と共にこっちに乗り込んで来た。
ティアナとしては、俺達に自分の生まれ育った街を紹介したかったのかも知れない。現に今は、シエラとカーネリアに何かを質問されて、それに答えている。
それにしても、この街は雰囲気が明るいな。これもカラーズカ侯爵が善政を敷いている証拠という事だろう。
そうしてしばらく街の風景を楽しみながら着いたカラーズカ侯爵の城の前では、出迎えの使用人達が並んで待っており、その中には、俺に鋭い視線を向けるイージドの姿もあったりした。
……………………ゴメンて。
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