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312回目 消える者達

 ☆4『プラスチック爆弾(小)』を起爆して壁に大穴を空けた瞬間、部屋の雰囲気が変わったのが解った。どうやら、この部屋に限っての事かも知れないが、『魔力を吸収する』と言う部屋が持つ特性が失われたらしい。



「さてと、この騒ぎで外にいる奴らが駆けつけてくる前に急いでここを出よう。バルタに頼りっぱなしで悪いけどな」


「へっ、よしてくだせぇ。お互い様ってヤツでさぁ」



 スキル倉庫から出した☆5『龍神の星籠』をバルタに渡し、俺はティム達を呼んで一ヶ所に集まった。


 そして、その俺達にバルタが星籠を向けて魔力を込めると、その部屋にいた俺達は、バルタを除いて星籠の内部へと、吸い込まれる様に移動した。



 ◇



「…………よし、大丈夫そうでやすね。なら…………!?」


 我聞とカラーズカ侯爵達に☆5『龍神の星籠』に入って貰い、一人となったバルタが☆4『プラスチック爆弾(小)』で壁に空いた穴から外に出ようとした瞬間。


 バルタは凄まじい気配と殺気を感じ取り、☆5『亜空間のマント』の亜空間へと沈み込んだ。



 その後すぐに響く破壊音。既に破壊されている壁を更に大きく破壊して中に入って来たのは、テルゲン王国の騎士団長であるベンハイムだ。



「…………誰もいない? 確かに何者かの気配を感じたのだが…………。それに、カラーズカ侯爵まで居ないのはどういう事だ? …………いや、そんなことよりもまずは陛下の安否だ!!」



 周囲を見渡すベンハイムだったが、すぐに自分が護るべき相手はここには居ないと思い出し、テルゲン王の安否を確認するべく走り去った。



「…………あ、危ねぇ。…………ベンハイム、相変わらず厄介な奴だ。危うく見つかる所でやした」



 テルゲン王国のカラーズカ侯爵家に仕えていたバルタは、当然騎士団長であるベンハイム=加山とも顔見知りだ。ベンハイムは、絶対に見つかってはいけない相手の一人だったのだ。


 今回の事が全て終われば、テルゲン王国は今回の一連の騒動がカラーズカ侯爵を逃がす為のものだったと気づくだろう。


 状況的にそうなのだがら、それはどうしようもない。


 だからこそ、相手に決定的な証拠を掴ませる訳にはいかない。状況的にはそうだとしても、一連の騒動のどさくさに紛れて、カラーズカ侯爵が自力で脱出したという可能性も残さなくてはいけない。


 可能性が多ければ多い程、人は、特に国と言う組織は身動きが取りづらくなる。つまり時間が稼げるのだ。


 ただでさえ時間が限られている今、稼げる時間は稼いでおきたい。その為にも全容は出来るだけ謎に包み、相手の歩みを遅らせるのも、今回の作戦の内なのだ。


 バルタは亜空間から出ると、マントのフードを深く被って外へと飛び出した。『龍神の星籠』と『亜空間のマント』を併用しては魔力の消費が大き過ぎるので、亜空間に潜るのは壁を抜ける時などの最小限に抑えながら走る。


 そして混乱と喧騒の中にある王都の中を、比喩ではなく()()()()()抜けて、ターミナルス辺境伯の屋敷までやって来た。


 そして飛び込むように屋敷に入り、すぐに『龍神の星籠』を解放。我聞とティムにカラーズカ侯爵達を解放した。


 屋敷の中には、カーネリアによって救出されたカラーズカ侯爵家の使用人達の姿もあり、カラーズカ侯爵とティムの無事な姿に歓声が上がった。



 ◇



「よし! 皆はここに残っていてくれ! 決して屋敷から出ないように!! 俺とバルタは外だ!!」


「へい! 最後の仕上げでやすね!!」



 俺はバルタを連れて外に出ると、すぐにまだ陽動に動いているアレスにチャットを飛ばした。


 それを空に見える漆黒の魔族騎士アレスは、それを受け取ったのだろう、空中に静止して、☆5『ヒュプノスの大鎌』の《眠る世界》を最大出力で放った。


 アレスの持つ魔力のほとんどを注ぎ込んだ『眠りの波動』が王都に拡がり、喧騒に包まれていた王都が静かになっていく。おそらくは波動を受けたほとんどの人間が眠ってしまったのだろう。


 次いでアレスは、広範囲に漆黒の靄を広げた。そしてその靄を大きく広げながら俺達のいるターミナルス辺境伯の屋敷へと飛び込む。


 一気に闇に包まれるターミナルス辺境伯の屋敷を確認して、俺は最後の仕上げに掛かる。


 屋敷中を包み込む漆黒の靄を残して、俺とバルタ以外が全員入っているターミナルス辺境伯の屋敷を()()()☆5『龍神の星籠』に収納したのだ。


 中に人が入ったデカイ屋敷を丸ごと収納とか意味が解らないが、これはかつて龍神が、眷属の住む星ごと収納したと言われる☆5『龍神の星籠』である。星丸々一個に比べれば、貴族の屋敷などチリみたいなものだ。



「回収は任せるぞ、バルタ!」


「へい! 手筈通りに!!」



 そして、それを持った俺は、この場で『拠点』として登録した『◇キャンピングカー』に飛び込むと、拠点ポータルを起動して『邪眼族の螺旋迷宮』まで飛んだ。


 つまりテルゲン王国の王都では、突如として闇に呑まれた漆黒の魔族騎士が貴族の屋敷に墜落し、屋敷ごと消え去った。という説明しようの無い、訳の分からない状況となっているのだ。


 え? でも『◇キャンピングカー』が残っているだろうって? それなら…………。



「おおっ!? 本当に瞬間移動でやすね。…………旦那、『◇キャンピングカー』回収して来やしたぜ」



 最後に残った俺の『トゥルー・フレンド』であるバルタが、しっかりと『スキル倉庫』に回収して『絆の証』で飛んで来てるから、大丈夫だ。


 俺達があの騒ぎを起こした証拠など、何も残っていない。

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モチベーションが上がれば、続ける力になります! よろしくお願いします。

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