31回目 ソエナ村
俺が新たに手に入れたスキルを紹介しよう。全部で十四個。まあ、ショボいスキルも有るのだが、そこは☆3装備のスキルって事で仕方がないのだ。ひのきの棒みたいなブッ壊れスキルなんか、そうそうあって堪るかって話である。
《新スキル一覧》
・剣術の心得(初級)
・槍術の心得(初級)
・反撃(極小)
・力+10%
・刺突耐性(極小)×2
・斬撃耐性(極小)×2
・疲労軽減(小)
・魅了耐性(中)
・命中率補正+10%
・気合い
・防御+5%
・値切りの話術(初級)
以上、十二種類十四個。刺突耐性(極小)と斬撃耐性(極小)が被っているのは、それぞれ○○の胸当て等が革と銅で同じスキルを有していたからだ。
もうひとつ付け加えるならば、それぞれのスキルはランクアップを経てパワーアップしている。例えば耐性系は(微)だったのが(極小)に変わっているし、+○%も、2%から10%へのパワーアップである。
剣術と槍術については最初から(初級)だったのだが、俺の動きをずっと見ていたバルタによると、熟練度を上げている途中と上げきった後では、その動きが僅かだが洗練されたそうだ。
つまり、表示が変わらなくても内部で変わっている場合がある、と? Aの評価に+や-があるような物だろうか? 同じAでもランクが違う、みたいな?
まあ、俺には違いがよく解らなかったが、ベテラン冒険者であるバルタが言うならば、そうなんだろう。
で、これらのスキルに『ひのきの棒』から手に入れたスキル『気絶』を含めた十五個の中から四つを、俺は装備とは別に自分に付ける事が出来る訳だが。
ティムやバルタとも相談した上で、剣術の心得(初級)・反撃(極小)・気合い・気絶を付ける事にした。
槍術は戦う地形によっては使えないし、力+10%は結局は微々たる物にしかならないから今回は見送り。防御+5%は悩んだのだが、それよりは『気合い』にしておこう、という事になった。
ちなみに『気合い』とは、発動する事で、自分の持つ全ての能力を一時的に5%上乗せするというスキルだった。
試してみたが、効果時間はそう長くは無い。発動時間は一定では無くバラバラで、ようは気合いが持っている間だけな訳だが、それでも全ての能力が5%上昇するという効果は、単体での5%や10%よりは使えるという判断になった。
「戦闘中にスピードが僅でも上がるってのは、けっこうバカになりませんぜ」
とは、バルタの言葉である。
と、同時に俺は自分の装備を少し変える事にした。変えるのはサブウェポンと足装備、そしてアクセサリーのひとつだ。
サブウエポン:山賊の槍(+4)→癒しの杖(+4)
足装備:スニーカー(+4)→ランニングシューズ(+2)
アクセサリー:寄せ集めの香木→解錠ツール(+4)
まあ上から順に理由を説明するなら、サブウェポンは回復魔法を使いたい。足装備は単純に強いから、アクセサリーは新たなスキルが欲しいから。と、そんなもんである。
そうして新たなスキルの確認とセット、装備の見直しを行い、翌早朝には宿場町を出発した。目指すはもちろん、宿場町の北にあるソエナ村だ。
ソエナ村までの道は一応あったのだが、ほとんど整備がされておらず、カラーズカ侯爵家の高級馬車でもガタガタという揺れが伝わってきた。
まあ耐えられる程度の揺れではあるのだが、バルタに言わせると、この馬車だからこの程度で済んでいるのであって、一般的な馬車だと荷台に乗っていられない程に揺れるのだと言う。その場合、大抵の人達は馬車の横や後ろを歩くらしい。
…………馬車は荷物置き程度の意味合いって事か。宿場町と村をつなぐ道だし、頻繁に馬車が行き交う道でもないから、そんなものな訳だ。
そんな道を進んで見えて来たのは、まさにド田舎といった感じの、牧歌的な風景だった。畑の中に小さな家が点在する村の風景の中には、風車まであった。こんなのテレビでしか見た事ないな。凄くいい感じである。
◇
「ウチの村に貴族の馬車が? そんなバカな、ここは街からも離れとるし、何かの間違いじゃろ」
「いや、本当なんだよ村長! これ見てくれよ!」
荒れた道しかなく、近くにある物と言えば森や小川くらいしかないド田舎にあるソエナ村。
そんな場所に、普段ならば絶対に訪れないであろう豪華な馬車が来たものだから、ソエナ村の村人は困惑した。
最初に、村の周囲で小動物を狩っていた若者がその豪華な馬車に遭遇し、御者台に座っていた男に銀貨一枚で依頼されて村長の元に走った。
村長は最初、「何をバカな事を」と取り合わなかったが、若者が見せた銀貨を見て眉をしかめた。
銀貨くらいなら、少量と言えどこの村にだって流通している。しかし若者が出したそれは、使い古されてキズの多い村の物とは違ってピカピカだった。
そして豪華な馬車に行き会った二人目は、南の宿場町で数年働いた経験のある者で、その馬車に貴族の紋章があるのを見て、その馬車は上位貴族が乗る馬車だと村長に報告した。
もちろん、こんな小さな村の村人や村長では、それが隣国のカラーズカ侯爵家の紋章だなどと知るべくも無いが、それでも上位貴族がこんなド田舎の村にやって来るなど嫌な予感しかしないので、手の空いている村人を急いで集めて、出迎えの用意をした。
上位貴族なんて雲の上の人物が、こんな村に来てどんな無理難題を押し付けるのか。不安で冷や汗が止まらない村長だったが、村全体を守るために差し出せる物は何でも差し出そうと、悲痛な覚悟を決めていた。
例え夜の慰みに嫁入り前の大事な孫娘を差し出せと言われても、村全体の為ならば涙をのんで差し出すしかない。そんな事を考えながら歯を食いしばる村長は、すでに心が押し潰されそうになっていた。
そして、ド田舎の村にそんな悲痛な覚悟をさせているなどとは、つゆほども思っていないガモン一行が乗る豪華な馬車が、大勢で出迎える村人達の前へと姿を現したのだ。
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