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303回目 足りない手札

 ◇ガモン

 《…………と言う訳で、テルゲン王国の頭をすげ替える事になりました。皆様には多大なご苦労やご迷惑を強いる事になると存じますが、ご協力のほど、何卒よろしくお願い致します。    敬具》



「…………これで良し、と」



 タミナルの屋敷へと『拠点ポータル』を使って戻って来た俺は、残っていたバルタとドローン姿のキャンパーへの説明がてら、『フレンド・チャット』に現状を説明する長文を書き上げた。


 書き上げた長文は一斉送信する。相手は、ジョルダン王国の国王であるジョゼルフ、同じくジョルダン王国の宰相であるロイエン、ジョルダン王国の王都でギルドマスターを務めるエルドルデ、ターミナルス辺境伯であるノルド、タミナルの街でギルドマスターをしているモンテナ、という以上五名である。


 そして、スキルを閉じて数秒後には、俺の視界の左下辺りにチャットの着信を示す表示が現れ、点滅を繰り返していた。


 点滅しているのは、チャットの返信が大量に来ている証拠だろう。


 いやだってしょうがないじゃん。俺だって何なら王都『ジュネイブ』に出向いて直接説明したかったよ。でも、王都へと到着していたノルドから、王都での俺の拠点に『拠点ポータル』が設置出来なかったと連絡が来たのだ。


 あれ? 何でだ? と調べてみれば、王都の拠点はまだ俺のスキルに登録されていなかったのだ。


 …………そう言えば、王都の拠点は新築で建てて貰う事になっていて、しばらく前に、『屋敷が完成した』とチャットで連絡を貰っていた気がする。


 つまり、まだ『ガチャ・マイスター』に拠点として登録していないのだ。そりゃ設置出来ないわ。


 だがまぁ、それはともかく。



「…………すげぇ返信が来るな」


「まぁ来るでしょうよ。あっしでもチャットで知らされたら「どういう事だ!?」ってなりやすぜ」


「ちゃんと説明をする為に、めっちゃ長文書いたんだけどな。しかも怒られないように丁寧な文章にもしたつもりなんだけど…………」


「怒られそうだって自覚はあったんでやすね。まぁでも、怒るってよりは、ちゃんと会って説明しろって事だと思いやすぜ? 現状で持っている『郷愁の禍津像』を、全て破壊するってのも書いたんでやしょ?」


「そりゃ、もちろん書いたさ。だって戦力アップにしても手札を増やすにしても、これ以上の物は無いもんな。いま俺は『禍津勾玉』を二個持ってるけど、『郷愁の禍津像』を全て破壊すれば全部で十個になるからな。そりゃ破壊するさ。ティムを助け出す期限は三日しかないんだからな。使わない選択肢は無い」



 ティムが囚われている部屋の正確な場所は、バルタが把握していた。だが、『拠点ポータル』で移動できる中で、テルゲン王国の王城に一番近い場所は『邪眼族の螺旋迷宮』。そこから車を飛ばしたとしても王城まで約二日。


 途中で邪魔が一切入らなかったとしても、これだけ掛かる。つまり何か邪魔が入ればもう間に合わない。


 ・移動手段

 ・潜入方法

 ・救助方法

 ・脱出手段

 ・逃走手段


 と、問題は山積みなのだ。これらを三日以内に見つけて実行しなければならない。ならば頼るべきは☆5のガチャアイテムしかないだろう。


 ちなみにバルタ以外の残っていたメンバーは、新たな『郷愁の禍津像』を求めてダンジョンアタックをしている。


 ザッパ達『ノーバスナイト』はそのパーティーでダンジョンに向かい、バルタの妹達は王都へと向かったターミナルス辺境伯について行かなかったアルグレゴ小隊の留守番組と臨時パーティーを組んで、ダンジョンへ行っているのだ。


 そしてアルジャーノンはと言うと、ドゥルクの肉体となるホムンクルスの製作が佳境に入っており、ドゥルクと共に☆5『技巧神の大工房』に籠っている。


 まさかバルタと子供達以外に残っていないとは思ってなかった。フレンド・チャットで現状を伝える事は出来るが、やはりダンジョンアタック中にそれは危険なので、現状の説明も含めて、その辺りの事はキャンパーに任せる事にした。



「…………それにしても、カラーズカ侯爵と若様の救出の期限が三日ですかい…………」


「それな、何で三日なんだろうな? カラーズカ侯爵の領地防衛の期限が七日なのに、それより短いって変じゃないか?」


「そりゃ簡単な話でさぁ、バレる…………って事ですぜ、若様がお嬢だと」


「…………そういう事か」



 言わずもがな、ティムはティアナだ。カラーズカ侯爵が、義務として王城で働かなくてはならない娘を、横暴な王族から護る為についた大嘘。王城で働いていた頃よりも、軟禁されている今の方がバレ易いのは必然だ。



「ティム様がティアナ様だとわかれば、王家はカラーズカ侯爵の心を折る為に、その嫌らしい欲望を剥き出しにしやすぜ。間違いなく、お嬢は陵辱の限りを尽くされやす。この期限は、おそらくはそれまでに残された時間。お嬢もこのフレンドクエストを見た時に、それに気づいた筈ですぜ」


「…………三日も待ってられないな」



 現状の手札だけでは、ティムを…………ティアナを助ける事は難しい。


 ならやはり、やるべき事は一つだ。


 俺は、いま持っている全ての『郷愁の禍津像』を全て破壊して、計十個もの『禍津勾玉』を手に入れた。

面白い。応援したい。など思われましたら、下の☆☆☆☆☆から評価をお願い致します。


モチベーションが上がれば、続ける力になります! よろしくお願いします。

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