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3回目 カラーズカ侯爵家

 ひとまず俺の身柄は、『カラーズカ侯爵家』が引き取る事になったらしい。あのハゲチョビ、人の事を『勇者』とか言っていた割に、最後はまるで押し付けるように見えたのは気のせいだろうか?


 まあ何にせよ、俺は王城から馬車に乗せられ、王都内にあるカラーズカ侯爵の屋敷に移送された。馬車は豪華だったし、馬車の中にあるソファーも中々に快適だった。


 …………のだが、こんなに豪華な馬車なのに、窓に鉄格子が嵌められているのが気になる。逃げるとでも思われているのだろうか? どこにも逃げられる訳ないだろ。異世界人だぞ、俺は。


 ちなみにだが、俺の引き取り手となったカラーズカ侯爵は前を走る別の馬車に乗っている。鉄格子の無いやつだ。


 俺は鉄格子つきの馬車に三十分ほど揺られ、漫画でしか見た事がないような、やたら立派なお屋敷に連れていかれた。


 王城は精神的に余裕が無かった事もあって、まともに見ていなかったが、この国は相当でかい国なのかも知れない。


 いや、侯爵家だからか? たしか伯爵より偉かったはずだ。


 広大な庭を馬車で進み、でかい屋敷の玄関まで行くと、おそらく侯爵家で働いているのであろう使用人達が総出で出迎えに出ていた。



「「お帰りなさいませ、旦那様」」


「ウム。客人を連れて帰ったので、部屋を用意してやれ。それと、身綺麗にして着替えさせたら、私の執務室へ連れて来るように」


「かしこまりました」



 カラーズカ侯爵は俺には目もくれずに執事に指示を出すと、早々に何処かへと去っていった。俺の引き取り手になったのに、俺はまだカラーズカ侯爵と挨拶すらしていない。


 そして俺は執事に案内されて立派な部屋へと通された。その部屋には、更に寝室や、衣装部屋へと繋がる扉もあり、トイレもあった。


 だが、このトイレ。形は陶器の便座なのだが、ボットン方式である。そして紙は無く、布の切れ端が数枚置いてあった。


 俺を案内してくれた執事に聞いてみると、この布切れで尻を拭き、穴の中に落とすらしい。すると排便と一緒に、下にいるスライムが綺麗にしてくれると言う。



「スライムって、モンスターの?」


「はい。便器の上まで来る事はありませんので、ご安心下さい。そのように造られておりますので」


「つくられて…………?」


「はい。スライムは野生の物ではなく、人造モンスターの物を使っておりますので」



 …………オウ。造れるんだ、スライム。って言うか野生のスライムもいるんだ。なるほど。


 その後、執事がお茶の用意をしてくれたので、お茶を頂いた。…………たぶん美味しいのだと思う。普段、ちゃんとした紅茶なんて飲まないので、正直よく解らない。俺は缶コーヒー派なのだ。微糖一択。


 そうしてお茶を飲んでいると、今度は部屋の中に大きな浴槽が運び込まれた。何事かと思って見ていると、執事が浴槽を運び込んだ男達と部屋を出ていき、その代わりに三人の女性の使用人が入って来た。



「お風呂の用意ができましたので、こちらへどうぞ」


「……………………はい?」



 どうやら、これから俺のお風呂タイムとなるようです。しかもその方法が特殊で、俺が全裸になって浴槽の中に立ち、水魔法が使えるこの女性達が温い水を出しながら俺の体を拭いてくれるそうです。


 もちろん、そんな物は全力で拒否ですよ。当たり前です。よっぽどの肉食系でない限り、これを受ける日本人なんかいないだろう。


 俺は役目を果たさなければ叱られると言う使用人の三人と話し合い、浴槽に水を出して貰い、前側は自分で体を拭き、背中は彼女達に任せる。そして着替えは少し手伝って貰う。という所で合意した。


 それと、王城で『ランニングシューズ』に履き替えた革靴もだが、俺が日本から着てきた物、持ち込んだ物は全て侯爵家で買い取ると言われた。


 ネクタイ・ネクタイピン・ワイシャツ・ズボン・パンツ・靴下・社員証・財布とその中身・カードケースとその中身などだ。


 ろくな物は持って無いし、金も日本円は当然使えないので、この世界の金が手に入るなら、まぁいいかと了承した。


 ちなみに『ランニングシューズ』は買い取りに入っていないし、今は俺のスキル『ガチャ・マイスター』に収納されている。


 そう、俺のスキルは収納機能付きなのだ。…………ただし、『ガチャ』で出てきた物限定で。使えるんだか使えないんだか微妙である。ああ、王城で出てきた物も、残らず持っているよ? 兵士に食われたうめえ棒以外はね。


 てな訳で持ち物の全てを失った俺は、カラーズカ侯爵家が用意してくれた服を代わりに着た。着心地はいまいちである。しかも、地味なパンツにジーンズっぽいズボンにベルトと布の服。いかにも一般市民ですといった出で立ちだ。


 てっきり貴族っぽい服でも出てくるのかと思っていた俺は首を傾げたが。そんな事を気にする間もなく、執事に呼ばれてカラーズカ侯爵の元へと出向く事になった。


 まあ、別に文句言う程でもないんだけど、カラーズカ侯爵ってのは、何を考えているのか解らない。部屋は豪華なのに服はコレって。歓迎しているのかそうでないのか、いまいち意図が読めないのだ。


 …………直接、聞いてみれば解るか。

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