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299回目 囚われの情報

「おい、ガモン。たった今、テルゲン王国を探らせていた部下から届いた情報なんだが。…………カラーズカ侯爵が王城に軟禁されているらしいぞ」



 遅い朝食を仲間やメリア達と終えたタイミングで俺の所に来たラグラフが、そんな事を言い出した。



「は? 軟禁? …………シエラ、本当か?」



 俺はその答えをシエラに求めた。何故ならシエラはティムと仲が良く、毎日のように『フレンド・チャット』でやり取りをしている筈だからた。



「申し訳ありませんガモン様。わかりません。私も、ここ数日は教会に赴いたりと忙しかったもので、ティムとのチャットも少し途切れていました」



 それを聞いて、俺はすぐにティム宛にチャットを送ってみた。すると既読は付くものの、返事は来なかった。


 シエラとアレスにも試して貰ったが結果は同じだ。既読は付いても返事が無い。


 フレンド・チャットは、届いたメッセージを読むだけなら視線だけでも出来る。だが、メッセージを送るとなると手動での操作がいるのだ。いや、もしかしたら視線だけでも行けるかも知れないが、少なくとも俺は出来ない。



「…………嫌な感じだな。既読は付くけど返事が無い」


「これはつまり、読む事は出来るが返事を出せない状況にある、という事ですね。…………ガモン殿、ラグラフ殿の言う軟禁の話は…………」


「ああ、本当かも知れない。ラグラフ、いったい何が起きているのか、分かる範囲でいいから教えてくれないか?」


「そりゃもちろん良いが、俺の所に来てる情報も、完璧って訳じゃねぇからな。過度な期待はすんじゃねぇぞ?」


「わかってる」



 事の発端は、魔王の討伐。俺達が成し遂げた『魔王・キツネ』の討伐だ。


 この一報は、ジョルダン王国の貴族間では急速に広まり、他国にまで広がるにも、大して時間はかからなかった。


 もちろん、魔王が実は封印されているだけだとは知らない国民が知る事はない。知るのは上位に位置する貴族だけだ。だが、その衝撃は大きかった。


 するとどうなるか。まず大前提として、魔王が封印されている場所というのは、各国にとって頭の痛い問題である。


 魔王などという爆弾を抱えているのはリスクが高いし、国民に知られる訳にもいかない。実はこの世には数多くの魔王がいて、それらは全て封印されているに過ぎない。など、パニックしか起こさないからだ。


 封印を保つにも金と人員が掛かる。秘密を守るにはストレスが掛かる。そんなもの、無い方がいいに決まっている。


 そして調べていくと、それを成した者の情報も、段々と見えて来る。


 いわく、ジョルダン王国の冒険者である。


 いわく、ジョルダン王国に現れた『勇者』である。


 いわく、彼の者が持つスキルは、様々なアイテムを生み出すものである。


 いわく、その『勇者』の特殊なスキルは、あの大魔導師『ドゥルク=マインド』の幽霊すら従えた。


 いわく、その者には王侯貴族すら協力しているらしい。


 などなど、意識して探せばその情報はボロボロと出て来る。そうなれば気づく者もいる。『この勇者は、元はテルゲン王国で召喚された者ではないか?』と。


 それに気づかれたのなら、召喚され、役立たずとして処分された筈の勇者を、いったい誰が他国へ逃がしたかなど、少し頭の回る者なら当然に気づく。


 逃がしたのはカラーズカ侯爵で、息子の婚約の伝手を使ってジョルダン王国に勇者を預けたのだと。



「…………って言う感じらしいんだが、合ってるのか?」


「……………………ああ、合ってる。そうか、そりゃバレるよな。こんだけ大々的に動いてりゃ…………」



 正直に言えば、色々とあり過ぎて自分が逃がして貰った立場だと忘れていた。テルゲン王国とは関わりたくない程度に警戒するだけで、そしてカラーズカ侯爵なら自分で何とでも出来るのではないかと言う楽観的に過ぎる思い込みで、完全に油断していた。



「…………カラーズカ侯爵は、軟禁されているだけなんだな?」


「少なくとも今はそうらしいな。まぁ、カラーズカ侯爵なんてのは俺でも名前を良く知っている程に影響力のある大物だ。テルゲン王国の中にもカラーズカ侯爵を擁護する貴族は大いだろうし、もし迂闊に処刑しようものなら、大きな反乱が起きる。テルゲンは今、内乱の火種が燻っている状態らしいからな、カラーズカ侯爵領とそれに協力する貴族が反乱なんて起こしたら、それに乗じて別の勢力も動いてテルゲン王国自体が潰れかねない。…………慎重に動くよりねぇだろうよ」



 …………カラーズカ侯爵とティムが軟禁されているのは王城だとしても、やはり『フレンド・チャット』にティムからの返信が無いのが気になる。


 ただ軟禁されているだけなら返信できるだろうし、見張られているのか? だとしても隙を見て返信出来そうなものだけど。



「何にしてもテルゲン王国の情報がもっと要りますね。ガモン殿、アレは持っていないのですか? 確か☆5にありましたよね? 離れた国の情報も知れるアイテムが」


「『ワールドニュース・クラシック』!! そうだよ! ナイスだアレス!!」



 アレスに言われるまでその存在をすっかりと忘れていた俺は、スキル倉庫から☆5『ワールドニュース・クラシック』を取り出した。


 これならば王城内の情報すら手に入る。カラーズカ侯爵やティムの情報もある筈だ。

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