296回目 『メガリス』
メリアがリーダーを務めるパーティー『メガリス』のメンバーであるユミルとネリス。
ユミルはとある貴族家に生まれた普通の人間だが、昔から背が高く、そのくせ力が無いので剣や槍は振る事が出来ず、筋トレを継続的にやっても弓を引く力すら持てなかった虚弱体質だ。
だが、魔力は潜在的に高かった為に、メガリスではヒーラーもこなせる魔法使いとして活躍している。覚えている魔法がそれほど多くないので、『賢者』を名乗れはしないが、潜在魔力的には十二分に賢者の素質を持っているらしい。
次いでネリス。
自己紹介にもあった通り『ハーフフット』と言う小人族で、器用で腕力も体力もある。
俺はそもそも『ハーフフット』と言う種族を知らなかったのだが、シエラによると本来のハーフフットなら、手先は器用で俊敏だが、防御力と腕力には難がある種族なのだそうだ。
だが、ネリスはハーフフットの突然変異らしく、本来のハーフフットの能力に加えて腕力も体力もある。その代わりなのか、成長性が他のハーフフットに比べて低く、体も小さいらしい。
その為、通常のハーフフットの為に作られた装備では大きくて装備出来ないようだ。
「つまり『メガリス』は、三人共が装備に悩みを抱えていて、全員分の装備が特注品になる訳か。…………大変だな」
「そう言う事だね。アタシ達も、少しでも安くするために材料は持ち込んだりしているけど、それでも高いから頻繁に装備の更新なんて出来ないんだ。並んでいる装備から選んで買うとか、自分には無理だと解っていてもやっぱり憧れるんだよね」
「なるほどなぁ。そりゃ、ああもなるか」
俺達は今、ラグラフの城の中に用意された部屋の一つに集まっている。
部屋の中にはカーテンで仕切られた更衣室も二つ用意され、着替えを手伝う為のメイドさんも配置された状態で、新たに俺のフレンドとなったユミルとネリスが床やテーブルに並べられたガチャ装備を選んでは試着している。
ガチャ装備は、装備する者に合わせてサイズが変わる。背が高くても低くても、種族的な問題があっても関係ない。白狐族のニッカとダッカも装備を着てみた事があるが、耳や尻尾にも対応していたからな。本当に何でもアリだ。
「ネリス! これ! これがいいよ、凄くカワイイもん!」
「だからアタイはそういうんじゃなくてカッコイイのがいいんだよ! そういうカワイイのはアンタが装備しな! 憧れだったんだろ、カワイイ装備が」
「で、でもこれ鎧だよ? 私、魔法使いだし」
「これだけ軽ければ関係ないだろ。魔法使いが鎧を装備できるんなら、その方がいいさ。ローブは地味だっていつも言ってただろ、アンタは」
「そうよユミル! 折角だから着てみればいいのよ! ガモンのガチャから出てくる『ドレスアーマー』は、結構種類があるから、一つずつ行きましょう!」
「カーネリアさん。…………そ、それなら、一度着てみようかな…………。じ、じゃあ次はこの『アイシクル・ドレスアーマー』で!」
「ネリスはどうします? タンクとしての鎧は大きいですが、ガチャ装備なら装備者は重さをあまり感じませんし、動きも阻害されませんよ?」
「うーん、シエラがそう言うなら。…………アタイはこの『ギガントアーマー』ってやつと、『ギガントシールド』を試してみようかね!!」
カーネリアやシエラの助言も受けて次に試着する装備を選んだ二人が、カーテンの向こうに消えるのを見て、俺はアレスと共に、密かに溜め息をついた。
実はあの二人が着替えに行くのを見るのは、既に六度目だ。
最初は二人が身に付けた装備に対して、俺やアレスもコメントをしたりしていたのだが、やはりそこは男女の差が出るのか、俺とアレスは早々に引っ込み、今やこの部屋は女子会の会場と化している。
ずっと二人に付いているシエラやカーネリアは楽しそうだし、自分も似たような事をやったメリアも楽しそうに付き合っているが、俺やアレスはもうグロッキー気味である。
とは言え、あまり気を抜いていると、男目線だとどう見えるとか、コメントを求められた時に困るので、あまり気を抜く事もできない。これが結構ツライのだ。
「あ、そうだ。ガモン、これ渡しておくよ」
「ん? おお! 『禍津勾玉』か!」
メリアから渡されたのは、ラグラフ王国付近のダンジョンで見つけたと言う『郷愁の禍津像』を破壊して出てきた『禍津勾玉』だ。しかも二つある。
「この付近に封印されている魔王の物だったんだよな? 何のヤツだった?」
「『クリオネ』と『ホーンシープ』だね」
「…………『ホーンシープ』?」
あれ? クリオネは解るけど、ホーンシープってなんだ? そんなの地球にはいなかったよな? いや別に、地球から連れて来てる訳でもないから、知らなくても当然なのかも知れないけど。
メリアにホーンシープの事を聞いてみると、ホーンシープとは、その名の通り巨大な角を持った羊で、頭部の八割もを角が占めて、その角に守られた頭部を武器として突進してくる、けっこう危険な動物らしい。
マジか、ここに来て知らない動物が出て来たな。まぁ、『方舟』にドラゴンのシルエットを見た時から、そんな予感はしていたけどな。
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