295回目 メリアの仲間達
「よく来たねガモン! 待ってたよ!!」
森の中に隠れるように存在する要塞。ラグラフ王国そのものであるこの場所にたどり着くと、城門の上から声が聞こえ、なんと女性が降って来た。
降って来たのは言わずもがなメリアなのだが、彼女は満面の笑みで俺を見つけると、思いきり抱きついて来た。
今日は鎧を身に付けていないので、その柔らかくも巨大な二つの山に、俺の頭が挟まった。
「ふおっ!?」
「まったく遅いじゃないか! アタシ達がどれだけ首を長くして待ってたと思うんだい! アンタはアタシに女の喜びを教えた初めての男だよ? あまり女を焦らすもんじゃないよ!」
ピシィッ! と、空気が冷えて割れる幻聴が聞こえた。
いや、なに言ってんの!? 何を身に覚えの無いことを言ってんの!? そう混乱したが、すぐに初めての会った夜に行われた、ガチャ装備を使ったファッションショーの事だと行き着いた。
だとして言い方!! 言い方ってもんがあるだろ!? 何でそんな誤解しか招かない言い方すんの!?
「いやちょっ…………むぐぅ!?」
「アタシの仲間もガモンが来るのを楽しみに待っていたからね。あの二人にも女としての喜びを教えてあげておくれ!」
あああっ!? わかる、見えないけど俺の仲間達が冷ややかな視線で見ているのが!?
俺はメリアの胸に顔を埋められたまま、メリアの腕をタップした。この世界にプロレスはまだ無い筈だが意味は伝わったらしく、俺はやっとメリアから解放された。
「…………ガモン様、どういう事なのか説明をお願いします」
「いや違うからね!? そういうんじゃないから!」
俺は仲間達にメリアの事を紹介し、メリアの悩みと、メリアが言う『女の喜び』が単にファッションショーの事である事を必死に伝えた。
「「「……………………ファッションショー…………」」」
「あれは熱い夜だったね。アタシはあんなに楽しい夜は初めてだったよ」
俺が説明する事をメリアも肯定したので、仲間達の誤解は何とか解けて、俺達はラグラフ王国の要塞へと足を踏み入れた。
◇
「ガハハハハッ! そりゃ災難だったな! だが許してやってくれ、義妹にとっちゃ、それだけ嬉しい出来事だったんだ」
「笑い事でもないぞ、まったく…………」
俺が、この国の玄関先でメリアから受けた熱烈な歓迎の話を聞かせると、ラグラフは大笑いしていた。まあ別に俺だって怒っている訳ではないが。…………凄かったし。何がとは言わないが、…………凄かったし。
ラグラフがひとしきり笑った所で、俺は今回ここまで来た目的のひとつである、『方舟』の話をした。
ラグラフは興味深そうに聞いてはいたが、やはり半信半疑のようだ。
「うぅむ。…………いや、ガモンが嘘をついてるたぁ思わねぇが、やはり信じきれんな。お前さんの勘違いって事はねぇか?」
「まぁ気持ちは解るよ。証拠も後で見せる。それで、ひとつ頼みがあるんだけど、ここに俺のクランの拠点を作らせてくれないか?」
「拠点? そんなもん無くても、この城を好きに使ってくれて構わねぇが。なんなら王位もくれてやるぞ?」
「そういう話はしてねぇよ。いや、『拠点ポータル』ってアイテムを設置したいんだ。それがあれば、『拠点ポータル』間を一瞬で移動できるようになるんだ」
ラグラフに『拠点ポータル』の説明をしつつ、もう一度フレンドにも誘ってみたのだが、やはりそれはキッパリと断られた。
「しっかし『拠点ポータル』ねぇ、相変わらずお前のガチャアイテムってのはヤベェな。…………いや、そいつは作ったって言ってたか? ソイツもヤベェな」
俺から『拠点ポータル』の説明を受けたラグラフは、拠点を作る事を了承してくれた。ただ、この要塞の中には俺に丸ごと譲れる建物が無いらしいので、ラグラフの城の庭に新しく建てるそうだ。
「ガモン、義兄さん、話は終わったかい?」
と、そこまで話をまとめた所で、メリアが部屋に乱入して来た。メリアの後ろには、とても背の高い女性と、まだ小さい女の子が一緒にいた。
「なんだメリア、もうちょっと待てなかったのか?」
「いいじゃないか。どうせこの後、ガモンと酒を飲むつもりなんだろ? 話はそこでも出来るんだから」
「…………ったく、しょうがねぇな。ガモン、話が終わったら俺の私室に来な。宴会の用意をしとくからよ。あ、お前のガチャの酒を期待しとくぜ?」
「お、おう」
取り敢えず話は終わったって事でラグラフは部屋を出て、代わりにメリア達が俺達の前にやって来た。メリアと一緒にいるのがメリアの言っていた『メガリス』のパーティーメンバーか。
「えっと、取り敢えず自己紹介だな。俺はこのパーティー、『G・マイスター』でリーダーをやっているガモン。で、こっちは左からアレス、シエラ、カーネリアだ」
俺の簡単な紹介に続いて、アレス達が自己紹介をし、次いでメリア達の番となった。
「アタシはこの国の王の義妹でメリアだよ。王と言ってもただの役職で権威なんか無いから、気軽に接してくれると助かるよ。で、この二人がアタシのパーティー『メガリス』のメンバーでユミルとネリスだよ」
「あ、あの。…………ユミルです。メガリスでは魔法による攻撃と回復を担当しています」
背の高い女性が、ちょっと弱々しく自己紹介をした。声も小さいし、俺達と眼を合わせようとしないので、人見知りがある子のようだ。…………しかし大きいなこの子。身長が2メートル近くありそうだ。
「アタイはネリス。メガリスの斥候とタンクを兼任しているよ! 言っとくけど一番年上はアタイだからね! こんなナリでも、子供扱いは許さないよ!!」
もう一人の小さい少女がそう言って俺達を睨みながら見上げて来た。なんでも彼女は『ハーフフット』と言う小人族らしく、これでもすでに百年は生きているらしい。…………大先輩じゃないですか。
しかしあれだな。メリアがパーティーメンバーも装備で悩んでいると言っていたが、二人を見て納得した。
なるほど、これは装備が全部オーダーメイドになるのも当然だな。
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