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292回目 冬の足音

 やたらと寒い朝。冬が近いとは言え、あまりにも寒いので、暖炉のある部屋で温かい紅茶でも飲みながら朝食を待とうと思い立ち、俺は部屋を出た。


 当然、ガチャからは『温風ヒーター』も出るし、実際に俺も持ってはいるが、それはちょっと味気ない。…………『暖炉』あれは良い物である。


 日本に住んでいたら、暖炉なんてまずお目に掛からない物だ。そもそも煙突が無いしな。それに使うためには大量の薪も必要になる代物だ。異世界に来て暖炉という存在に触れてなお、俺は自分で用意する訳でもないのに、使おうなんて全く考えなかった。


 だが、だんだんと寒くなってきた最近になって、この屋敷でも暖炉が使われ始めた。


 そして、『まあ、あるなら使うか』と、その程度の気持ちで暖炉で火にあたってみた俺は、すっかりとその魅力にやられてしまった。


 暖炉は、暖かいのはもちろんなのだが、その存在が癒しだった。


 暖炉の前、少し離れた位置にソファーを設置し、そこで寝転びながらパチパチと燃える火を見る。控えめに言って最高である。



「…………ん?」



 そんな訳で、暖炉のある部屋へと向かっていたのだが、その途中て廊下の窓に張り付いている四つの影に気がついた。


 アレスの家族であるアリアとアラムの姉弟と、白狐族の姉弟であるニッカとダッカの、子供達である。



「おはようみんな。何してるんだ?」


「あ、ガモンさん。おはようございます!」


「「おはようございます!!」」



 子供達は朝から元気いっぱいだ。こんな寒さなんか関係ないらしい。全員パジャマ姿だしな、見てるとかなり寒そうなんだけどな。



「元気だな皆。それで、何をしているんだ?」


「ゆき!」


「…………雪?」



 子供達の横に並んで外を見てみると、そんなに積もっている訳ではないが、屋敷の庭が僅かに白くなっている。



「マジか、道理で寒い訳だ」


「ついさっきまで降ってたんですけど、やんじゃったんですよね」


「もっと積もればいいのに」



 俺的には雪積もって良い事はないが、子供達としては雪で遊びたかったらしく、サラッとしか積もってない雪に、本当に残念そうな顔をしていた。



「…………それは残念だったな。みんな、風邪ひく前にちゃんと着替えろよ。もうじき朝食だろうからな」


「「はーーい」」



 雪を見て、ますます寒くなった気がした俺は、元気な子供達と別れて暖炉のある部屋へと急いだ。



 ◇



 少しだけ積もった雪が溶けた頃。俺はターミナルス辺境伯であるノルドに、『方舟』と、それによる世界の危機についての説明をしに行った。


 一応昼間でも『方舟』を見る事はできるので、一緒に連れて行ったキャンパーの指示で『高性能天体望遠鏡』を設置してノルドとその家族にも見せたのだが、やはり絶句していた。


 望遠鏡を使わないとハッキリ見えないとは言え、なぜこの様な禍々しい存在に気がつかなかったのかとノルドは言っていたが、それは無茶だろう。


 例えば誰かが空を見ていて、同じ様な軌道で飛ぶ方舟を発見したとして、まずそれは流れ星のような扱いになる。


 そしてそれを毎日観測するような物好きがいたとしても、そいつ自身に立場がなければ大々的に調べる事は出来ないし、また広まらない。


 さらにそれを国の垣根を越えて広めるとなると、もっと難しい。


 あの『方舟』を警戒できる者など、最初から存在を知っている女神ヴァティーと、その話を聞く事ができたアルジャーノンくらいのものである。



「これは陛下にも話さなくてはいけないが、あまり広めると混乱を招きかねんな。あと三年しかないとはいえ、慎重に動かざるをえない」


「俺が説明に出向きましょうか? さっき話した通り、ドゥルクの『ホムンクルス』が完成すれば、ドゥルクが行く事もできますが?」


「いや、流石にそれまで待てん。私が行く。ガモンは来なくても良い。お前には他にやるべき事もあるだろうからな。キャンパーよ、少しここに残って私の部下に方舟の情報と観測の仕方を教えてくれ。それと、この『高性能天体望遠鏡』とやらは置いて行って貰うぞ? 王に献上する事も了承してくれ」


『わかりました。ドローンの身ではありますが、少し残りましょう』


「望遠鏡についても了解です。ただ、同じ物を作りたくても、分解は出来ないと念を押しておいて下さいね。ゴミと判別できる状態になれば、ガチャアイテムは消えますから」


「解った。念は押しておこう」



 色々と決めたが、取り敢えず俺が王都まで出向かなくていいのは助かるな。今すぐ何かある訳ではないが、俺が動けない状況はできるだけ避けたいからな。



「それと、ひとつお願いをしても良いですか?」


「なんだ?」


「アルジャーノンが作った『拠点ポータル』を預けますんで、王都にある俺の拠点に設置をお願いします。それがあれば移動が一瞬で出来るので」


「それは私としても願ったりだ。任せておけ」



 ノルドが引き受けてくれたので、俺はスキル倉庫から出した『拠点ポータル』を渡して、設置方法を説明した。



「ねぇガモン! これ作れるならここにも設置して! あとティアナの所にもあれば、いつでもティアナに会えるのでしょう?」


「いや無茶いうなよ。これは俺の拠点にしか設置出来ないからな? それにティムとリメイアだけで使うなんて事も出来ないんだ。諦めろ」


「えーー!」



 最後にリメイアが貴族らしい無茶を言い出したが、俺はそれを一蹴した。いずれティムのいる街にも拠点を作って『拠点ポータル』は設置するから、それで我慢して貰おう。

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[一言] 雪が降った時の反応 小学生時代「雪だーっ! 外いってきまーす!」 高校生時代「雪だ……うわぁ寒い……え?電車止まった? かーっ! 学校行きたかったんだけどなー、しかたないなー(棒)」 社会人…
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