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29回目 『寄せ集めの香木』

「うわぁ、けっこう無茶をしたみたいだね」


「ちょっ!? やめろよティム! アザを押すなって! 痛いから!」



 夜、夕食を外で済ませて宿屋に戻ってから、俺はティムに回復魔法をかけて貰った。本当なら町に常駐している回復魔法の使い手に頼んだり、ポーションを使ったりすれば簡単に治ったのだが、バルタがそれを禁じたのだ。


 痛みってのはしばらく噛み締めないと戒めにならない。痛みの戒めがあれば、次の動きも改善される。ってのがその理由であり、俺も納得はしたのだが、痛い物は痛いのだ。



「こんなにアザだらけになって、いったいどんなモンスターを相手に訓練したのさ?」


「え? ああ、…………バルタって言う糞鬼畜なモンスターだよ」



 ゆえに、このくらいの仕返しは許されて然るべきだと思う。



「ひでぇ言われようですぜ。これも全て旦那の命を守る為の愛の鞭ってやつでさぁ」


「でも訓練中とは言っても相手はモンスターだから、やりすぎは命に関わるよ」


「へぇ、気をつけまさぁ」



 回復魔法による治療が終わると、ティムは俺にたった今使っていた☆3装備の『癒しの杖』を渡して来た。


 これは名前からして使えそうな上に、12本も手に入ったので、最大値までランクアップさせた物を二本作り、それをティムに持っていて貰ったのだ。


 結果として熟練度は30を越えており、癒しの杖には『癒しの光』と言うスキルが解放された。効果としては打ち身や軽い擦り傷程度を回復するくらいしか出来ないが、それも熟練度がMAXまでいけば変わってくるだろう。まだ完全ではないが、効果の程はたったいま身を持って知ったしな。



「ふぅ、…………で、ティムの方はどうだったんだ?」


「ああ。検証結果は、けっこう面白い結果が出たよ。ギルドの演習場でやったから、注目は集めたしギルマスには売ってくれとも言われたけど、僕達以外には武器として扱えないのを確認させたらすぐに諦めてたな」


「へぇ。面白い結果が出たって事は、氷の矢が発生する弓なのに普通に矢も使えたのか」


「そうだね。基本的には矢の効果に加えて氷属性が付く感じだったよ。ただ火属性の弾丸だけは使い所が難しいかな。氷属性と相殺したのか、的に当たる手前くらいで蒸気が発生して何も見えなくなった。的の周囲がもう真っ白だったよ。一応、矢は当たってたけど」


「…………へぇーー。煙幕と考えれば使いようはあるのか? もっと検証がいるな、それは」


「うん。だから僕は、明日もギルドの演習場に行ってくるよ」


「わかった。気をつけてな」


「そっちこそな。バルタも頼んだよ」


「へい。任せてくだせぇ、若様」



 てな訳で翌日。俺はバルタと共に昨日と同じ平原に来ていた。だが、昨日と全く同じかと言えば少し違う。今日は『孤独の呼子』ではなく、『寄せ集めの香木』を使うとバルタが言い出したからだ。


 ☆3装備の『寄せ集めの香木』は、まるで腕時計のような形のアクセサリーである。持ってるスキルは『モンスター呼び』であり、確率で壊れる仕様の装備アイテムだ。


 まあ壊れると言うか、文字盤にあたる所で小山を作っている香木の欠片が、完全に燃え尽きるまでは使えるよって事なんだと思う。二・三回くらい使えるのだろうか? これも要検証だな。



「しかし香木かぁ。お香なんて使った事ないけど、匂いでモンスターを集めるってのはどうなんだろ。そんなに遠くまで匂いが届くとは思えないけど、あまり大量に出て来られたら困るなぁ…………」


「まあ大丈夫だと思いやすぜ。この辺りはモンスターも少ないし、あの森には結構いやすが、そうそう奥までは匂いも届きやせんぜ。出て来ても精々十数匹ってとこですぜ」



 本当か? と、疑いの眼を向けてみれば、モンスターを呼び寄せるアイテムに似たような物があって、その効果を知っているから確かだと言っていた。


 まあ、似た効果のアイテムがあるならそうかもな。これ、効果がイマイチ解らないからランクアップもしてないし、経験豊富なバルタが言うなら、そうなのだろう。


 と言う訳で、使ってみる事にした。


 俺は腕時計のように身に付けた『寄せ集めの香木』の、文字盤にあたる部分の横にあるレバーを一度引く。そうする事で香木の小山の内部に火がつき、わずかに上る煙が周囲の空気に溶けて拡散していった。


 特に煙くなる事もないし、内部で燃えているみたいだけど熱くもない。戦闘の邪魔になる事はなさそうで一安心。それどころか、この香木の香りを嗅いでいると、気分が高揚する気がしてきた。今なら大きなゴブリンの群れを相手にしても戦っていけそうな気がする。


 この高揚感も、寄せ集めの香木の効果だろうか。などと考えていると。



「…………あっ、ヤベッ…………!」



 ふと、そんな声が聞こえて来た。


 声を出したバルタは、少し青ざめた表情でキョロキョロと周囲を見ていた。なので俺も周囲の様子を見てみると。


 宿場町がある東を除いた三方向。北と南には土煙が見え、西の森には木や草が大きく揺れている様子が見てとれた。



「……………………おい、バルタ。あれって…………」


「だ、大丈夫でさぁ! しょせんはゴブリンやコボルトなんていうザコの群れなんで、オークやフォレストウルフの群れの練習台になりやすぜ!」


「…………ってお前!? 三方向から群れが来てんだろーが!!」


「ハッハッハッ! 最大までランクアップさせたガチャ装備に身を包んでいれば死にゃあしませんぜ! 粗方はあっしが仕留めますんで、近づいて来たザコは任せまさぁ!!」


「ふざけんなーーーーっ!!」



 ☆4装備『擬態のマント』で周囲に溶け込んで姿を消したバルタに文句を叫び、俺は銅の剣と反撃の盾を構えた。


 そしてこの日の夜。宿場町の西の平原では大量のモンスターの死骸が平原を埋め尽くした。


 それらは、呼ばれて来たティムや派遣された冒険者ギルドの職員の魔法によって燃やされ、宿場町の冒険者ギルドでは、それからしばらくの間、低級モンスターを狩る依頼が貼り出されなくなる事態になったのだった。


 …………いや、本当にすいませんでした。

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