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288回目 飛ばせない

 バルタの妹達と買い物に行った日から二日が経過した。


 この二日間、俺はアルグレゴ小隊に混じって訓練を受けている。ガチャ装備やガチャ書籍のおかげでステータスだけは上がったが、俺の場合その上がり方が特殊な事もあって一部に突出しすぎているらしい。


 それを、どうやら特殊な鑑定スキルを持っているらしいアルジャーノンに指摘されたのだ。



「ガモンくんはバランスが悪いですよね。体の動きは定期的に調整した方がいいですよ。本能で向かって来るモンスターなら戦えるでしょうが、知能を持つモンスターが相手だとアッサリ隙を突かれて殺されちゃいますからね」



 と、そんな事を言われ。バルタに相談したら何故か双子と模擬戦をする事になり、それはもうボコボコにされたのだ。


 年下の少女、それも斥候職で戦闘がメインじゃない少女達に一対一でボコボコにされた。これは俺のなけなしのプライドを酷く傷付けた。


 そんな訳で、俺は今アルグレゴ小隊の面々に叩き直して貰っている。幸い俺のステータスは高いし、スキルのおかげで軽い治癒魔法も使えるので、いくらでも特訓は出来る。


 …………まぁ、本当にいくらでもやるって程に俺の精神は強くないので、実際はそれなりに頑張っている程度だが、治癒魔法のおかげで筋肉痛はすぐに無くなるし、バフのおかげで体力もあるので、頑張っている。


 そして、ここで訓練を受けてから、俺の問題点がひとつ浮き彫りにもなった。


 …………俺、魔法が撃てない。


 治癒魔法とか身体強化とかは問題ないんだ。だが、ファイヤーボールとかアイスランスとかを使ってみると、飛んでいかない。目の前に火球や氷の槍が浮かんでいて、やがて消えるか落ちるのだ。


 つまり俺には、『魔法を飛ばす』という技術が無かった。



「……………………知らなかった」


「いやいや、ドゥルク翁に見てもらったりしてなかったんですか? 魔法を使う訓練くらいしたでしょう?」



 魔法での的当て訓練をやっていて一人だけ魔法を的まで飛ばせなかった俺は、アルグレゴ小隊の副官であるイージドに相談していた。



「いや確かにドゥルクから少し授業をして貰った事はあるんだけど、その時はまだスキルが手に入ったばかりで、魔力の溜め方とか魔力を体内で動かす訓練とかがメインだったんだよ。それに墓地での戦いで、ガチャから出てきた『魔術書』を使って魔法を撃った時には、ちゃんと飛んだんだぞ?」


「ああ…………。魔術書ってのは基本的に誰でも扱えるように作られてますからね。魔法の発動・索敵・照準・発射などと、全ての動作が予め用意されているんですよ。個人で魔法を撃つ場合には、索敵や照準に発射は自分でやらないといけませんからね。その違いでしょうね」



 …………ようするにプログラムが組まれているのか。で、魔術書を使わない状態で魔法を撃つってのは、プログラムを使わずに作業するような物か。そりゃ時間が掛かる訳だな。


 でもそれなら、プログラムを組んでさえしまえば問題はない訳か? …………いや違うか。要は慣れか。自転車に乗るのと一緒だ。一度出来るようになってしまえば大丈夫ってやつだ。



「で、どうやって飛ばすんだ?」


「うーーん、そうですね。人によって様々なんですが、一番良くあるのは石を投げる方法ですかね。石を投げて、物が飛んでいくイメージを作り易くするのです。ただ、人によって妙なクセが付きやすいのが問題点ですね」



 こういう方法は子供の頃にやらせる訓練なので、余計にクセが付きやすいと言う。例えば石を投げる方法だと、山なりに飛んだり本人の投げ方のクセで左右に曲がったり。水切りを訓練にすると相手に当たる直前で曲がったり沈んだりと、一度クセがつくと矯正するのが本当に大変らしい。



「…………となると訓練にスリングショットを使うか? いや、あれも慣れてないし、的に当てる自信が無いな…………。もっと真っ直ぐに飛んで的に当てる物か。…………銃を使うか? でも飛ばすって感じじゃないしな。…………うーーん。…………ん? どうしたんだイージド」



 俺が独り言をブツブツと呟きながら考えていると、イージドが不思議そうな顔で俺を見ていた。



「いえ、ガモン殿にはガチャから出てきた『魔術書』が大量にあるのですよね? こんな事をしなくても、魔術書を持ち換えれば済む話なのではないかと、疑問に思いまして」


「まぁ、そういう手もあるんだけどさ。使える手札は多い方がいいからな」



 魔術書は☆4装備だ。しかもこれから、強化して+4まで育てられる可能性は高い。なら俺が持ってるよりも、他のフレンドの為に使えるようにしておきたい。


 せっかくある魔術書が、俺だけ独占なんて意味がない。何せ強化して熟練度を上げきれば、俺はその魔法をスキルとして覚えられるのだから。


 俺が訓練すればいいだけの話で、魔術書を無駄には出来ないのだ。



「うーーん、真っ直ぐ飛んで、的に当たってかぁ。そんなの…………あっ…………!! ダーツだ! ダーツをする場所を作るぞ!!」



 魔法を飛ばす訓練を思いついた俺は、さっそくイージドに言って場所を作ってもらい、ダーツでの訓練をする事にした。


 その甲斐があってか、次の日には俺の魔法も、ちゃんと飛ぶようになっていた。まだまた遅いけどな。


 そして、魔法が撃てるようになって上機嫌の俺が屋敷に帰ると、そこにはアレス達やノーバスナイトが帰って来ていたのだった。

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