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277回目 禍々しき方舟

 《独白・勇者ガモンの日記より抜粋》


 世界を救う。それはとても素晴らしい事だと思います。


 日本でもよく、ライトノベルや漫画と言う名の英雄譚を読んでいたし、ゲームの中では幾度となく『勇者』も『英雄』もやって来ましたし、確かな憧れがあります。


 この世界の仲間達を救うため。と言うのも、建前ではなく本心です。仲間達はただの友人ではなく戦友です。色々と助けられて来ましたし、これからも共に歩いてくれる、かけがえのない者達です。見捨てられる訳がありません。


 でも、これはあんまりじゃないでしょうか? この世界、あまりにも手遅れですよ? いや頑張りますけどね? これ、本当に何とかなるんですよね?


 おい聞いてるか? 『神』コノヤロー。



 ◇



『…………ガモン、おいガモン! どうしたのじゃ? 大丈夫か?』


「うん、まぁ…………大丈夫では無いよね…………?」



 ヴァティーとアルジャーノンから、この世界の現状と、この世界を救うにはどうしたら良いかを聞いたので、軽くまとめてみようと思います。


 まず、俺の敵となるラスボスから発表したいと思います。


 想像がついている方もいるでしょうが、この世界が滅びかけている諸悪の根元である、『方舟』です。


 まあ実際、方舟は悪くないんですよ。方舟を送った神々も、乗って来た動物達も、誰も悪くないんです。


 ただ、運が悪かった。それだけなんです。まあ、世の中の不慮の事故なんて、そんなもんだろうけど。


 …………方舟には、様々な機能がある。それは滅びかけている世界を丸ごと救おうと造られた物なのだから、当然だ。


 その中において最も厄介になっている機能は、世界に馴染まずに死んだ神獣を蘇らせる『復活』機能だろう。


 方舟にはそれに乗って来た全ての動物達のデータが保存されている。混乱を避けるために、世界に馴染んで同化した動物達についてはそのデータが消去されるらしいが、『魔王』となった者達のデータは当然残っている。


 厄介なのは、地上にいる『魔王』の『郷愁の禍津像』を破壊して消滅させると、()()()()()復活すると言う点だ。


 そう、『郷愁の禍津像』を破壊すれば確かに魔王は消滅する。が、地上で跡形もなく消滅したからこそ、方舟で蘇るらしい。しかもそれでも狂った精神は戻らないんだってさ、常にデータを採取してアップデートしてるから、壊れたデータはそのままなんだって。


 なんじゃそりゃ、である。バグった状態でセーブしたゲームみたいな話だ。いや、リセットしようぜ?


 つまり、地上で魔王を消滅させたとしても、方舟で復活してしまえば、いつかまた落ちてくる。方舟を破壊してしまわないと、無限ループに陥るのだ。


 …………で、その肝心の方舟はどこにあるのかと言えば、当然ながら宇宙である。この星の上を、衛星よろしく移動している。アルジャーノンは魔法を使って、たまにそれを観測しているそうだ。



「魔法で視力を限界まで強化して、やっとですけどね」



 とはアルジャーノンの言葉である。


 この時、ダンジョンの外は既に夜だった。ヴァティーに聞くと、この場と外を繋げる事も容易く出来ると言うので、ヴァティーにお願いして俺はアルジャーノンを連れて外に出た。



「あの、僕は種族的に視力がとても高い上に、魔法を使って限界まで上げてやっと見えるように出来ているんですよ?」


「大丈夫だ。俺にはコレがあるから」



 そう言って俺が取り出したのは☆4『高性能天体望遠鏡』だ。魔法? いやいや、科学の叡智をナメてはいけない。



 と、言う訳で。アルジャーノンが時間的にそろそろ通る筈だと言うので、いつもアルジャーノンが見ている位置に合わせて貰う。


 そして、俺は見た。俺の最大の敵となる方舟を。



「…………………なぁ、アルジャーノン。何か方舟で蠢いているのがあるんだけど?」


「…………これ凄いですね。ひとつ僕にください」



 一応、同じ物があったのでアルジャーノンにも使わせているのだが、アルジャーノンは『高性能天体望遠鏡』のあまりの高性能っぷりに、すっかり心を奪われたようだ。


 いや、あげるから今は方舟の事を教えてくれよ。



『ほほう、これは凄いのぅ! 妾にもよく見えるぞ!!』



 アルジャーノンの首に巻き付いている、小さな白い蛇がヴァティーの声を出した。あれはヴァティーがよく遣う眷族で、ヴァティーがダンジョンの中を移動する時に良く使う眷族らしい。安全地帯で俺を覗いていたのも、コイツだ。


 その眷族の眼を通して、方舟の様子を見るヴァティーが、俺に説明をしてくれた。



『…………なるほど。どうやら取り残された者達もいた様じゃな。おそらくは膨大なエネルギーを得て『幻獣』の類いに変化したようだのぅ。…………あれはデカイ。デカすぎて地上に引っ張られなかった様だのぅ。あれらが暴れるだけで、世界が滅びそうじゃな』



 いや軽く言うけど、戦うの俺達でしょ? マジかよ。タコかイカみたいな触手とか、デカイ犬の頭とか、ドラゴンっぽいのまで見えてんだけど…………?


 しかもあれ、観測していたアルジャーノンによると、だんだん落ちて来てるらしい。計算上は地上に落ちるまで、あと三年ちょっとらしい。


 …………つまりはそれが、世界を救うタイムリミットだ。

面白い。応援したい。など思われましたら、下の☆☆☆☆☆から評価をお願い致します。


モチベーションが上がれば、続ける力になります! よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] いくつか解はありそうだけどなあ 爺さんに頼んで方舟の別次元追放とか
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